帝都ミューアス
船が着いた場所はミューアス帝国の中心で最大の貿易港であるミューアス。
ここに皇帝もいるらしい。と言っても俺達は皇帝に会うつもりなんて毛頭ない。必要もないからね。
俺はラウルを連れて船を降りる。船に乗っていた人は俺達を見て道を開ける。この船を救った英雄というより化物を連れて歩く奇人と言う感じの目線を感じる。悲しいね・・・。
「さて、お母様は用事があると思いますので俺達とは別行動でいいですか??」
頷くお母様。あと、無茶苦茶なことはしないでくださいね。
ラウルはお母様が凄い怖いようで近くを通ると俺の後ろに隠れる。ガタガタ震えている。なんか可愛いな。水色のストレートのロングヘア釣り目の冷たそうな目なのに性格がガラリと代わって照れ屋でビクビクしている。ギャップがいい!!整った口に高い鼻。小麦色の肌は健康そう。背は小さく150センチほど俺の脇の下に入るくらい小さい。あんなでっかかったのに・・・。でも、胸が大きい。胸が大きいはやっぱり嬉しいな!!でもそろそろちっぱいもいいかも・・・。まぁ贅沢な願望だね。
レイはお母様の姿がなくなるまで手を振っていた。俺にくっつくラウルにあまり感心がない。
やっちゃんは引き剥がそうとするが小さいし涙目になるのでいじめているみたいになってすぐ諦める。
キャラが出来上がっているなこれは!!
賑やかな街を歩く俺達は宿屋に行く。
『民宿 万福』
なんでもいいや、温泉がそこいらにあるとは思っていないし混浴の可能性は低いからもうその辺はどうでもいい。というよりあのイベント飽きた。
宿屋に入ると綺麗な女中が迎えてくれる。
「ようこそ!!万福へ!」
部屋に案内されるまでの間色々聞かれた。男一人に女3人。どう見てもおかしい。それを探るためにいろいろ聞かれたが面倒なのでハーレムですと答えてやった。
パクパクする口がちょっと面白かったしやっちゃんもレイも口を押さえて涙目になってまで笑いをこらえていた。
ラウルはキョロキョロしているだけで現状が把握できていないみたいだ。この子かわいいなホント・・・。頭を撫でると猫みたいに目を細めて喜ぶ。
俺達が案内された部屋は結構な大部屋で宿代も高そうな感じ。ちょっと拠点にするから複数の日数泊まることを告げると1ヶ月の宿代をいってきた。10Gだってさ、高いと思うけどあまり気にしなくなっちゃった。
この世界に来てから金銭感覚がおかしい。全てレイとやっちゃんのせいだ。1000Gとか普通に使うからね・・・。
「私どもの宿の名物は名前の通りおいしい食事です。ぜひ召し上がってからいろいろな観光をなさってください。」
にこやかに笑う女中。俺達もにっこり笑っておいた。
さて、観光しますが何かありますか?
どこにいけばいいか全くわからないという3人。はい、俺もです。
呼ばれてきたけど全く気分ではない。ここの帝国の観光地を調べてきたわけでもないし・・・。
来ただけで何も考えていなかった。
「ねぇ、ラウル」
レイの問いかけにビクッとなるラウル。ラウルが言うにはお母様に似ているので怖いんだとか・・・。そればかりはどうしようもない。だって、親子なんだもん。
「あなた、お母様を怒らせるからあんな目にあったのよ。私が殺ったわけじゃないんだからそんなビビらなくてもいいじゃない!!」
ちょっと涙目のレイ。レイって怖がられたりするの凄い嫌がるよね。過去に何かあったのかな?
レイをよしよしして俺は話を続ける。
「お母様も偵察に言ってるし俺達も行く?」
そんな話をしているとノックする音がする。
女中が俺たちに客が来たと言っている。お母様か?
どんな人か聞くと男だと言っている。
おとこ??そんな奴知らん。追い返してというと後ろからどかどか押し寄せてきた。
「やぁ、きてくれたんですね。お待ちしていましたよ。」
サミュエルだ。ちょっと失礼なやつだな。俺は会うとは言っていないぞ。
その雰囲気を察してかラウルが蛸足のような触手を使ってサミュエルを掴んで持ち上げる。
「ぐぁっ」
周りの護衛たちが慌てて触手を引き離そうとするが全く動かない。この子、察しがいいけど無茶苦茶だな。
あ、うちの女性陣は皆無茶苦茶だわ。まともなのがいない・・・。
女中が腰を抜かして座り込み水たまり作成している。『ばばばばばけ・・・』
化物と言いたいんだろうけど気を失っちゃった。そのほうが幸せだよ。
「お前たち何??恵様に害をなすつもりか?ならここで死ね。」
力を入れようとした瞬間にレイが止めに入る。
「ラウル、この人はね。むかつくけど殺すほどのこともないのよ。まだね。」
にこやかに笑う。それにコクコクと頷くラウル。
護衛は武器を構えるがサミュエルが手をあげてやめるように言う。
というよりもう護衛の首に剣があたっている。やっちゃん、レイ早すぎ。
カランカランと剣を落とす護衛達。そして両手を上げる。
「この2人は殺してもいいはずよ。だって、旅人じゃないもん。」
護衛が震え始める。
「まって、待ってください!!彼らは我が国の精鋭なんです簡単に殺そうとしないでください。」
サミュエルが懇願するがそんなこと俺達には関係ない。剣を抜けば死ぬ。それがこの世界だ。
「剣を抜いたのは我々だが先に攻撃してきたのはそこの娘だ。」
「勝手に部屋に乱入した時点でそっちの攻撃だ。ぐだぐだ抜かすんだったら死ね」
ラウルが怒っている。たしかに勝手に家に入ってきたらA国は射殺しても良かったはず。
それを言うとやっと謝罪してきやがった。遅いんだよ。傲慢でムカつくんだよね。A国は。上の人間がこんなだから傲慢になるのか?
「別に殺すのは簡単なんだけどね。むこうの世界では物別れになっているし。俺の中ではあんたたちは仲間ではないからね。要らないと思えばすぐに殺す。それくらいの存在でしかない。」
俺の冷たい意見に冷や汗を流しながら俯くサミュエル。
「すみませんでした・・・。」
話がやっとできる状態だね。本当にプライド高いおっさんは面倒だな。