海は広いんだな
船に乗り、風を受けて進む。
海はいいな。潮風が・・・海の匂い!思ったほど揺れない!!これは気持ちがいい!!
レイが髪を手で押さえ手すりに持たれ景色を眺めている・・・。写真に残したいくらい美しい。
「レイは何をしても様になるわね。」
やっちゃんがそう言いながらレイの横に立つ。2人とも凄く様になってるよ。スマホがないのが悔しい。
お母様がニコニコしながらベンチに座っている。その横に浅田が座りなにか話をしてる。
結構楽しそうな2人。ミューアスの話ではないんだろうね。あの話をそれだけニコニコして話していたらこわいもん。
「私も付いて来てしまいましたがよろしかったんでしょうか?」
ジルが申し訳無さそうに俺に聞いてくる。
「別にいいんじゃない??レイややっちゃんからするともうジルは仲間みたいなもんだし。」
照れながら頭を掻いていた。小さい声で俺はレイ様の仲間をつぶやいていたからちょっと怖い。
どれくらい経ったんだろう?船で進むと辺りがいきなり薄暗くなってきた。
「あぁ、出そうね。やっぱり出るんだ・・・。」
やっちゃんがなにか知っているのか俺の横で出る出る言ってくる。
「おトイレなら一緒に行くよ〜」
レイのお馬鹿な思考にはそろそろ慣れてきた。この状態で小だの大だの言っていたらそれは小学生レベルだ。それは放置して何が出るのか聞いてみる。聞くと大きなイカとクジラと人をくっついたような魔物が出てくるんだとか。イメージできないのは俺が想像力が豊かではないからか??
船が大きく揺れる・・・。大きな波が船に辺り右に左に大きく揺れ人々が船から落ちそうになる。パニックになった人々が船内に逃げ込もうとして通路がいっぱいになる。
「人は愚かね。パニックになったらそれだけ生存率が下がるのに・・・。冷静なものが生き残る。そう言う世の中だとなぜわからない?」
冷たい声が聞こえる。その声の方向を見るとあぁ、そういうことね・・・と言う格好の魔物が出てきた。
くじらの潮を吹く所辺りから大きな人の上半身が生え大きな剣を両手に持っている。そしてくじらのヒレというヒレからたくさんのイカやタコのような脚が生えている。くじらの目から真っ赤な涙が流れている・・・。正直な感想は気持ち悪い。上半身の女性の見ためが綺麗なだけに気持ちわるい。
「魔物風情が正論を吐くわね。ただ、生き残るのは冷静なものではなく強いものなんだけどね。冷静でもそれに打ち勝つ力がなければ一緒なのよ。」
レイのお母様がベンチでくつろぎながら言う。相当余裕だよね。さすがです。レイもコーヒー飲みながらやっちゃんと談笑しているから凄い。ここ、陸と違って足場悪いよ。それなのにその余裕?
「おぉおぉ!!冷静なふりをして強がる餌がこんなにいる。私を楽しませるほど強いものがそんなにいるわけがないであろう。お前たちの中で私を楽しませるものがいれば半分は見逃してやるぞ。ふははははははは〜」
なんか高笑いしている。以前の俺なら恐怖していただろうけど今の俺は冷静だな。というよりお母様がいるのに君は凄い運が悪いと思うよ。どちらかというとご愁傷さま。
「ねぇ、メグミ、こいつ従魔にしてみない??そうすれば海での移動もスイスイいけるわよ。」
レイの言葉に俺が怪訝な顔で返す。だって、これ、気持ち悪いよ。これに乗るの??ただただ悪趣味なんだけど。
「そんな顔してあげちゃダメだよ〜。こう見えても女の子っぽいよ。それなのにウゲ〜ッて顔・・・ちょっとかわいそうだよ!!」
俺のことを非難し始めた。
「じゃぁ、従魔にするから誰か解除で!」
その一言にレイがカミーラさようならと言っている。いない人を巻き込むな!!
「ちょっと!何で私なのよ!!私、恵様のお気に入りよ!!凄い優しくしてくれるわよ!!」
どこからか声が聞こえる。ってか会話に入ってこれるんだ。
姿のないカミーラとレイが喧嘩している。それを見て大きな魔物はワナワナ震えている。
「貴様ら!!私を無視するな!1何が従魔だ!!ゴミの分際で調子に乗るな!」
でっかい脚で船を打ち付ける。レイが片手でそれを受け止める。それを見て魔物は驚く。
「ば、馬鹿な!!」
「バカはお前だ!!」
そう言いながら近くに転がっていた錨を投げつける。それが女性の上半身のヘソの部分に当たる。
口から胃液と思われる液体を吐きながら海に沈む大きな魔物。
「ぐぼぁ〜〜!!ふざけるな〜〜!」
大きく浮上してきて船の帆を掴んで起き上がってくるがそれを待っていたかのようにやっちゃんが腕を切り捨てた。大きな悲鳴とともに海に逃げる魔物。辺り一面血の海域が出来上がっている。それに引き寄せられて巨大なサメが寄ってくる。でかすぎるだろ??30mはある。
「ふざけるな!!ふざけるな〜〜〜!!」
そう言いながら自身に襲い掛かってくるサメを投げつけてくる魔物。
それを見たお母様がまぁまぁといいながらサメを殴り飛ばす。サメが水風船のように潰れて破片がその辺に飛び散った。
「服が・・・」
あぁ、コレ、地雷なんだ・・・。