ミューアス滅亡の危機
「お母様は何をしにここに来たんですか?」
レイの質問がごもっともだ。知り合いにこんな辺鄙なところで偶然出会うなんてことはなかなか無い。どう考えても俺達を監視していたか、会いに来たとしか思えない。
「あぁ、ここにいる理由は、簡単ょ〜。ミューアスを滅ぼしに来たの!」
すごい綺麗な笑顔で怖いことを言い切るお母様。
その一言に浅田や観月一行は顔色が変わっている。
「まぁお母様なら数分あれば滅ぼせそうですもんね・・・。」
やっちゃんがなるほどという頷きでそう言うけどあなたは疑問を持ったりしないんですか??
なぜ??とか
なにしに??とか
なにかあったの??とか
それが普通と思うよ!!何でそんなに何も思わずにフムフム言ってられるの??
俺のドン引きの姿を見て
「な〜〜〜んてね!ホントからかい甲斐があるわね〜。恵さんの顔が一番良かったわ〜。ウソウソ、タダの観光よ。そうしたら知った顔があったから見に来たの〜!」
も〜〜やだ!!みたいなリアクションで俺に手を振って否定している・・・。どこがホントでどれが嘘か全くわかりません。俺の後ろから抱きついてきてもドン引きの気持ちに変わりはありません。
「まぁたしかに最近変な動きをしているから気になっているんだけどね。私の国に仕掛けてこないか偵察も兼ねているのよ。私の別荘から直接いけばいいかもしれないんだけど、そうすると角度とかで居場所がわかるでしょ??だからこの国を通ってきたの〜。もしかしたらレイたちに逢えるかもしれないしね〜。」
俺に抱きついたままブンブン体を揺すってぶりっ子な動きをしているお母様、頭に気持ちいいものが乗っているから抵抗しません。許せてきました。
レイの顔が膨れている。なぜお母様にまでヤキモチを焼く?くっつくわけないんだよ。
「はい、お母様、メグミから離れて・・・。で、どうだったらアウトなんですか?」
それは気になる。何をしていたら滅ぼすのか・・・。地雷を教えておいて欲しい。
「別に何がアウトとかはないわ。私の勘でアウトの場合はアウト。セーフの場合はセーフ。よくわからないわ〜。」
勘だけで滅ぼされてはたまったもんじゃない・・・。お母様の勘は当たるのか?
「それってあたるんですか??」
俺の率直な疑問にほほほほほと笑うだけだった。
俺もははははは・・・と笑うだけしか出来ない。ゴメン、ミューアスの人々・・・俺は力になれません。
「あ、あの、私、浅田と申します。レイさんや恵さん、弥生さんには凄いお世話になっています。レイさんのお母様、ミューアスはどのような行動をしているんですか?軍事行動とは具体的に何を??」
百戦錬磨、手練手管の我が国の総理がビクビクしながら聞いている。
きっと雰囲気とは裏腹なオーラに当てられているんだろう・・・。
弱い時には気づかなかったが強くなってくるとわかる。この人の持っている力の凄さが・・・。弱い時にはレイそっくりの美しい女性程度にしか認識出来なかったが今は違う。引力のような力を常に感じる。魅力的なのもあるがそれだけでこれほどの惹きつける力は生まれない。近くにいると見てしまうのだ。
「う〜〜〜ん、その辺は国家の秘密なのよね。どうやって情報を集めているかとか、どうやって動向を監視しているかとか。」
唇に指を当てて考える姿はレイそのものだ。俺はお母様の顔を見惚れているとレイの形相が・・・。
レイがこっちに来て俺を引きつけて腕にしがみついてきた。可愛いなレイは。
「お母様ってレイにそっくりだね。仕草もそっくり」
俺の小声に「それで見てたの??」と小声で返して赤くなる。
『うぉぉぉぉぉぉ!!』
おれは心の中で叫んでおいた。
お母様は一緒にいって確認しましょう!!と言って船にウキウキしたスキップで乗り込んでいった。
凄い背の高い女性のスキップはどうしても目を引く・・・。偵察だよね??
俺達も船に乗り込む。この世界でもあっちの世界でも船での旅は初めてだな・・・。魔族領に行く時に乗ると思ってワクワクしたけど結局乗らなかったし・・・。
俺もワクワクしてきた!!スキップしていいですか!!
俺とレイは腕を組んでスキップで乗り込んでみる。タダの阿呆だな。やっちゃんが恥ずかしそうに『やめてよ〜〜』と小声で言う。浅田や観月は他人のふりをし始めた。
「浅田さ〜〜〜ん!!観月さ〜〜〜ん!はやく〜〜!!」
ちょっとムカついたので仲間ですとアピールしてやった。ヒソヒソ言われてる。ざま〜〜〜〜!!
そう思うダークサイド俺。
船・・・早く出ないかな??