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川に流されて

☆前回のあらすじ☆


ホバーボードの燃料切れでミサはバランスを崩し、ミサは咄嗟に背中のマントを広げ、なんとか難を逃れる。

しかし、ミサは魔力を消費してしまい、今度はミサが魔力の消費による疲労で気を失う。


☆川に流されて☆


「ミサっ!?」

 オレは歯を食いしばって力を入れた。

 ぜってぇ離さねぇ。無理しやがって。

 ミサのパワーグローブのおかげで、ミサの体重をそんなに感じない。

 風の抵抗を受けながら、大地が近づいてくる。

 幸いにも、下に大きな川が流れているのが小さく見える。

 うまくいけば助かるかもな。川に落ちたとしても、川の深さがわからねぇ。

 川に飛び込んだ衝撃で、怪我どころじゃねぇな。

 下手すりゃ溺れて、オレとミサはお陀仏だ。

 どうする。考えろ。


 オレは瞼を閉じて首を横に振る。

 やっぱ、頼みはこいつだな。

 オレは脇に挟んだホバーボードに目を落とし、ミサを掴む手に力を入れる。

 ウォーターボールの魔力がまだ効いているのか、オレの身体は浮いていた。

 ミサのパワーグローブから、ミサの魔力が伝わってくるのかもな。

 もしかして、オレがミサの魔力を吸い取ってるのか?

 オレは瞼を閉じて首を横に振った。めんどくせぇ。

 くそっ。オレはホバーボードの重さに耐えられず、顔をしかめ、脇と手と額にも嫌な汗を掻いている。

 そろそろ限界かもな。ミサも重くなってきやがった。

 ミサを掴む手が震え始め、脇を動かした隙に脇からホバーボードがするりと滑り落ちた。


 重力の勢いで、風を切り裂きながら落ちてゆくホバーボード。

「くそっ!」

 回転しながら落ちてゆくホバーボードに、オレはミサの手から片手を離して、ホバーボードに手を伸ばす。

 オレは悔しくて歯を食いしばる。ミサ、すまねぇ。お前のホバーボードを手放しちまった。

 オレはやるせなくなり、ホバーボードに伸ばし手を垂れて俯く。

 諦めるのか? そんな簡単に。ミサの大事なホバーボードなのに。

 ミサが好きなネロって名前のホバーボードだろ? ミサのお気に入りなんだろ?

 垂れた手を握り締め。瞼を閉じて首を横に振る。いや、まだ終わってねぇ。

 ホバーボードに燃料が少し残ってるはずだ。その可能性に賭ける。

 どうにかして遠隔操作すれば、ホバーボードを動かせるかもしれねぇ。

 小さくなってゆくホバーボードに、オレは手を伸ばす。頼む、動いてくれ。

 その間にも眼下に大きな川が近づいてくる。川の流れる轟音が聞こえる。

 ぐずぐずしてられねぇ。このポンコツが! さっさと動きやがれ!

 今にも川に落ちそうなホバーボードを、オレは黙って睨み据える。


 その時、オレの首飾りのクリスタルが眩く青白い光を放つ。

 オレは思わず青白い光が眩しくて、顔の前を手で遮る。何が起こった?

 眼下のホバーボードが川の水面に近づいた瞬間、ホバーボードが川の水面に浮く。

 轟音とともに凄まじい水飛沫がホバーボードの周りに飛び散る。

 主の声に応えるようにクリスタルが青白い光を放ちながら、オレとミサの身体がゆっくりとホバーボードに吸い寄せられてゆく。

 オレはミサを抱きかかえながら、青白く光るクリスタルを掌に載せて、クリスタルをまじまじと見た。なんだ? 助かったのか?

 そして、オレがミサをホバーボードの上に乗せようと思った直前。

 急にミサのパワーグローブから火花が散って、ミサの身体が鉛りの様に重くなり、オレはミサを手放してしまう。


 ミサが川に落ちて水飛沫がオレの頬に張り付く。

 オレは川に流されまいと、慌ててホバーボードの上に両腕を載せてホバーボードにしがみつく。

「ミサッ!?」

 オレの下半身がずぶ濡れになり、流されまいと足に力を入れる。

 空中爆発で飛んで来た破片で太腿を切った傷口が沁みて、オレは顔をしかめる。

 痛みを我慢して、オレは水面上に浮いたホバーボードからミサに手を伸ばす。

 くそっ。動け、このポンコツが!

 オレは吐き捨てるように、ホバーボードの上を拳で思いっきり叩いた。 

 次の瞬間、ホバーボードは空気が抜けた様な間抜けな音を出し、ホバーボードが川に落ちて派手に水飛沫を上げた。


 ホバーボードが川に落ちた瞬間、オレは川の水を飲んだ。

 空中爆発で飛んで来た破片で切った腕や頬の傷口が沁みて、オレはまた顔をしかめる。

 手当しないとな。そんな思いを裏切るように、オレはホバーボードにしがみついたまま流されてゆく。

 ホバーボードを板代わりに、オレはホバーボードにしがみつきながら飲んだ水を吐いて咳き込む。

 前髪を掻き上げてミサを見ると、川の流れが早く、ミサがどんどん流されてゆく。


 うつ伏せに浮いて流されるミサ。

 このままじゃ、ミサが溺れ死ぬ。なんとかして助けねぇと。

 オレはホバーボードの上で、川の水の冷たさに震えていた。

 不味いな、体温が奪われてる。

 オレがホバーボードから離れたら、オレまで溺れてしまう。


 オレはミサから目を離さない。

 ミサの数メートル先に、大きな尖がった岩が川から突き出している。

 待てよ。ミサがあの岩に引っかかってくれれば、なんとかなりそうだ。

 オレは震える手で川の水を手で必死に漕ぎながら、ミサの後ろに位置を調整する。

 やがて、ミサは大きな岩に引っかかり、ミサの身体はうつ伏せのまま浮いている。


 少ししてオレはミサに追いついた。

 岩の周りは幸いにも浅瀬せで、川の流れも遅く、オレの腰くらいまで水の高さがある。

「ミサ、しっかりしろ!」

 オレはミサを支えて肩に担ぎ、川底に足を取られよろけながら、オレはミサをホバーボードの上に載せる。

 ミサの生死が気になって、オレは横になったミサの胸に耳を当てる。

 鼓動どころか何の音も聞こえない。聞こえるのは自分の鼓動と川の流れる音だけ。


 オレはミサの胸から耳を離し、もう一度ミサの胸に耳を当てる。

 やっぱり、何も聞こえない。オレはミサの胸から耳を離し、絶望に駆られ俯く。

「おい、ミサ。嘘だろ……」

 オレは顔を上げて、ミサの身体を必死に両手で揺らす。

 ミサは人形の様にぐったりして横になったまま動かない。

 ホバーボードからミサの腕が垂れて、ミサの手が川の水に落ちている。


 涙が滲んで、オレは手の甲で涙を拭う。

「くそっ! なんでこんなことになっちまったんだよ!」

 オレはやるせなくなり俯く、ミサの足元のホバーボード上を拳で思いっきり叩く。

 ミサを死なせねぇ。オレは諦めない。

 そうだ。人工呼吸だ。総合学校の授業で習ったな。

 オレは顔を上げ、うろ覚えでミサの身体を仰向けにし、ミサの唇に自分の唇を重ねようとする。

 ミサの白い顔を見て、オレは顔が火照る。なんでオレがミサとキスしなきゃならねぇんだ。

 オレはミサの紫色の唇を見て躊躇い、生唾を飲み込み喉を鳴らす。

 オレは瞼を閉じて首を横に振る。ミサ、目が覚めたらオレをぶん殴ってくれ。

 オレは意を決し、瞼を閉じたまま、ミサとキスして人工呼吸する。

 三秒くらいミサと濃厚なキスして、オレは恥ずかしくなり慌ててミサの唇から自分の唇を離して咳き込む。

 これでいいのか? オレは口許を手の甲で拭う。次は心臓マッサージだな。

 オレはミサを心臓マッサージしようとするが、ホバーボードが不安定で揺れる。

 ミサを心臓マッサージしようとすると、今度はホバーボードが沈んでうまくいかない

 ここじゃダメだ。早く陸に上がらないと。なんとかならねぇのか。

 オレはミサから顔を上げて、川岸を睨む。


 なんとなく、オレはミサの濡れた服に目がいってしまう。

 ミサのフレアスカートから覗く生足を見て、オレは思わず生唾を飲み込み喉を鳴らす。

 興奮して鼻血が出そうになり、慌てて鼻を押さえてミサから視線を逸らし、気まずくなって人差指で頬を掻く。

 人差指で頬を掻きながら、横目で瞬きして、視線を戻しつつミサを見てしまう。

 その時、ミサの腰のホルスターに銀色のリボルバー型フックショットが挿してあるのが目に止まった。

 銃口の下に掌サイズの球形があり、球形の中にワイヤーが収まっている。

 引き金を引くと、三角に尖ったワイヤーの先端が銃口から飛び出す仕組みだ。

 フックショットか。こいつで川岸に生えてる樹に刺せば、なんとかなりそうだな。

 オレは閃いたとばかりに、掌の上で拳を叩いた。


 オレはミサの変なところに目がいかないように瞼を閉じ、瞼を開けないように瞼に力を入れ、ミサの身体を手探りで触ってゆく。

 その時、なにか柔らかい物に触れて、オレは思わず瞼を開けた。

 なんだ? そう思いながら、オレの左手がミサの胸を掴んでいた。


 や、やべ。ミサの胸を掴んじまった。しかも小さい。

「ひっ」

 オレは情けない悲鳴を上げて、ミサの胸から慌てて手を離す。

 ばっちいとばかりに、オレは左手首を必死に振っている。

 左手首を押さえて変に唸った。


 よ、よし、気を取り直していくぞ。オレは胸を撫で下ろして深呼吸する。

 今度は顔を片手で覆い、指の間から片目を開け、ミサの腰のホルスターに挿しているリボルバー型フックショットに手を伸ばす。

 ミサが起きやしないかと変に気になりながらも、オレはなんとかリボルバー型フックショットを抜き取った。

 調子に乗ったオレはリボルバー型フックショットの引き金に人差指を通してリボルバー型フックショットを回し、鼻頭を人差指で得意げに擦る。

 なにやってんだろ、オレは。こうしている間にも、ミサがあぶねぇってのに。

 急に虚しくなってどっと疲れが出て、オレはがっくりと肩を落とす。

 オレは顔を上げて額を手の甲で拭い、深く息を吐いて落ち着かせた。こりゃ寿命が縮んだな。

 何故か嫌な汗を掻いているような気がしたが、川の水と変な汗が混じっているのかわからなかった。

 オレは腰に手を当てて、銀色のフックショットをまじまじと見つめた。

 頼むぜ。オレは片目を瞑り、銀色のフックショットを片手で構え、川岸に生えている樹の太い幹に狙いを定める。

 引き金を引くと、勢いよく銃口からワイヤーが飛び出し、狙い通り樹の太い幹に刺さった。

 ワイヤーを思いっきり引っ張ってみる。大丈夫そうだ。一発でうまく幹に刺さってくれた。

 オレはミサの脇腹に腕を通して、ホバーボードを掴む。

 幹を睨んで、またフックショットの引き金を引き、ワイヤーをゆっくりと巻き取ってゆく。

 ゆっくりとワイヤーが銃身に巻き取られてゆく中、川の流れが早くなり、オレは川に流されてゆく。

 ワイヤーが伸びきってぎりぎりと嫌な音がする。不味いぞ、上手くワイヤーが刺さってなかったのか?

 その時、ワイヤーは川の流れに耐えられなくなり、呆気なくワイヤーの先端が幹から抜ける。


 引っ張られるようにオレは川に流される。

「うわっ!」

 オレの叫びも虚しく、オレは川の流れに身を任せるしかなかった。

 くそっ。フックショットはダメだったか。オレは引き金を引いて、ワイヤーを巻き取る。

 ぜってぇ、お前を助けるからな。オレはミサに振り向いて、ミサの脇腹を通してホバーボードを掴む手に力を入れる。


 


今回、カイトとミサの危ないシーン?があります。そして、不思議な力が発動しました。今後、この不思議な力を活かしたいと思います。

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