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一難去ってまた一難

~前回のあらすじ~


ラウル古代遺跡を確かめるため、禁断の森に足を踏み入れたカイトたち。 

禁断の森の奥で、アルガスタに存在しないはずの魔物に追いかけられる。

カイトがこけそうになった隙に、カイトとネロは魔物たちに囲まれてしまう……


~一難去ってまた一難~


 腹を空かしているのか、魔物たちがジリジリとオレたちとの距離を縮める。

 魔物は低く唸り、吠えたり、涎を垂らし、歯を噛んで鳴らし、仲間の首に噛みついたりじゃれている。


オレは魔物を睨み据え、斜め掛けの鞘に収めている剣の柄に手をかける。

「こうなりゃ、戦うしかねぇだろ。ネロ、策はあるか?」

 オレは背中合わせのままネロに振り向く。


 ネロは瞼を閉じて肩を竦め、呆れて首を横に振る。

「この数を相手にするつもりか? 相手にするとキリがない。こいつでまとめて片付ける」

 ネロはジャケットのポケットから、銀色の小さな丸い球形を二個取り出した。

「受け取れ」

 ネロは後ろに手を回して、銀色の小さな球形をオレに手渡す。


 オレは首を傾げ、手を後ろに回してネロから得体の知れない銀色の小さな球形を受け取る。

「なんだよ、これ」

 オレは眉根を寄せ訝しげにネロから受け取った銀色の小さな丸い球形を両手の掌で転がす。

 オレは銀色の小さな球形が転がる動きを細い目でつまらなそうに追う。


 ネロが肘でオレの脇腹を小突かれて、オレはネロに振り向く。

「手前に水溜りがあるだろ? こいつで奴らを感電させる。ある程度倒せるだろ、後のことは考えてない」

 ネロは手前の水溜りを睨み据え、左手をジャケットのポケットに突っ込んで銀色の小さな球形を放り投げて遊んでいる。


 オレは耳をほじくって鼻で笑い顔を戻す。

 ネロの作戦が耳に入ってなかったオレは数秒遅れて、両手の掌で銀色の小さな球形を転がす動きが止まった。

 今更ながらネロの作戦に驚き、オレは銀色の小さな球形を握り締め、そのまま拳を振り上げた。

「はあ!? こんなもんで何ができるんだよ!?」

 周りを見渡せば、確かにオレたちの周りに大小の水溜りがある。

 こんなもんで、あいつらを感電させられるのかよ。

 オレは握り締めた指を広げて、掌に載っている銀色の小さな球形を見つめる。


 ネロがオレに振り向く。

「ボクを信じろ。それとも、カイトはボクを信じられないのか?」

 ネロが念を込めてオレの脇腹を小突き、ネロはカイトに意思表示する。


「……」

 オレは何も言わなかった。

 黙って銀色の小さな球体を握り締めて、俯いて瞼を閉じて首を横に振る。


「それにしても、景色がきれぇ~」

 その時、ネロのインカムからノイズ交じりで緊張感のないミサの暢気な声が聞こえる。


 オレはミサの声を聞いて呆れてため息を零す。

 顔を上げて、オレはネロに振り向く。

「そうだな。お前を信じるしかねぇ」


 ネロは任せろという感じで頷く。

「奴らが水溜りの上を歩いたら、そいつを投げるんだ、いいな?」

 ネロはミサを無視して、黒いハットに手を載せ、銀色の小さな球形を握り締めた。


 オレはネロに答える様に脇腹を肘で小突いた。

「ああ。派手にやろうぜ」

 オレは奴らが水溜りの上を歩くまで、じっと待った。

 オレは緊張で唾を飲み込み、ごくりと喉を鳴らす。何故か喉が渇き、冷や汗が頬を伝う。


 オレはネロが気になり、ネロに振り向いた。

 ネロは左手をジャケットのポケットに手を突っ込み、右手で銀色の小さな球形を握り締めて手を構えている。

 後ろの敵と前の敵を気にしながら、ネロはタイミングを窺っている。

 どうやら、ギリギリまで奴らを引き付けるつもりらしい。


「今だ!」

 ネロが力強く叫んだ。


 緊張でオレの心臓が口から飛び出しそうになる。

「ほらよっ! 大人しくしやがれ!」

 オレは水溜りの上を歩く奴らに向かって、銀色の小さな球形を放り投げる。

 銀色の小さな球形は放物線を描いて水溜りに落ちた瞬間、強烈な青白い電撃が魔物たちを巻き込んで襲い始める。

 あまりの眩い光に、オレは思わず「うっ」と声を漏らす。顔の前で眩い光を手で遮り、片目を瞑る。


「ぐぉぉぉぉん!」

 魔物らが水溜りの上で咆哮を上げながら、魔物の身体は黒こげになり黒煙を上げ、絶命したのかばたばたと横に倒れてゆく。

 電撃を食らわなかった魔物らは、一瞬何が起こったか理解できず、首を傾げてお互い顔を見合わせる。

 数秒が経ち、魔物らは仲間の死体を見つめて悲しい眼をして後退り、ぞろぞろと踵を返して樹の影に消えてゆく。

 まだ諦めてないのか、樹の影で魔物の紅い目が光っているのが不気味だった。


 オレは脱力感とともにため息を零す。

 オレはネロに振り返って、ネロの肩に手を置く。

「なんとかなったな。正直、お前の親父の発明品、馬鹿にしてたぜ」

 オレは親指を突き出す。

 ネロの親父は、ゾット帝国騎士団の科学者だ。

 よく変な物を発明しては、騎士団と親衛隊に役立っている。

 自慢げにネロは、オレとミサに親父の発明品を見せびらかす。

 秘密基地で親父の発明品を弄っては、武器を改良するのがネロの趣味とかなんとか。

 そんなんじゃ、女が呆れるぞ。いつもオレは思う。

 お前が親父の発明品を弄る時、ミサがいつもつまらなそうにしているのがわからないのかよ。


 ネロが鬱陶しそうにオレの手を払いのける。

「よせよ。お前は何も考えずに突っ走るところがある。無駄な戦いは避けたい」

 ネロは瞼を閉じて肩を竦める。


 オレは頭の後ろで手を組んだ。

「悪かったな、何も考えてなくて。今回は、お前に助けられたな」

 ネロの背中越しに、魔物らが黒こげになっているのを見て、オレは口笛を吹く。


「ねぇ。こんなとこにラウル古代遺跡があるわけ? 見たとこ森が広がってるし、でっかい湖はあるし。何もないじゃない」

 ネロのインカムに、ノイズ交じりでミサから無線が入る。


 お前は暢気でいいよな、ミサ。オレとネロは散々な目に遭ったってのに。オレは愚痴を零す。

 オレは空を仰いで額に両手をくっつけ、お気楽なミサを探す。

 オレはミサを探すのを諦めて頭の後ろで手を組み、樹の影に消えてゆく魔物らを見送る。

「あいつらも諦めてくれたし、さっさとこんなとこ離れようぜ」

 オレは肩を竦めて歩く。


 ネロの横を通り過ぎようとした時、ネロは手でオレを制す。

「待て、奴らの様子が変だ。油断するな、カイト」

 ネロは何匹か残った魔物を見回した後、自分が倒した魔物の前にいる、生き残った魔物たちを睨み据える。


「今度はなんだよ」

 オレは舌打ちして、斜め掛けの鞘に収めた剣の柄に手をかけ、残った魔物たちを見回す。

 こいつら、何しようってんだ?


 オレたちの前から立ち去らずに残った魔物は、なんと黒こげになった魔物の死体を喰い始めた。

 魔物は喧嘩しながら、魔物の死体を貪る。生々しい咀嚼音が聞こえる。


 信じられない光景を目の当たりにして、オレは思わず後退る。

「!? ど、どうなってんだよ」

 オレは手に変な汗を掻いていた。


 ネロがオレを制した手をゆっくりと下す。

「さあな。嫌な予感がする」

 ネロは緊張した声音で、腰に巻いたホルスターのオートマチック銃の柄に手をかける。

 ネロは余った手でジャケットのポケットに手を突っ込んだ。さっきの武器を使うのだろうか。


 共食いしている一匹の魔物が貪るのを止めて顔を上げ、低く唸りながらオレたちに吠えて威嚇して見ている。

 その魔物は、低く唸りながら足を踏み鳴らし、なんと姿を変え始めた。

 その魔物は皮膚が解けてメタリックの骨格が露わになる。足の爪がさらに鋭くなり、背中にキャノン砲が現れた。

 それぞれメタリックの骨格姿に変えた魔物の背中に様々な武器が現れる。

 ミサイルランチャー、ガトリング砲、ビームキャノン砲。

 姿を変えた魔物が勝ち誇った様に口許を綻ばせ、紅い目が鋭く光り、次々に背中に装備した武器を発射したり撃ってくる。


 オレの瞳に、奴らの攻撃が迫るのが映る。

 くそっ。ミサの奴、何してんだよ。

 こんな時に。オレは焦り苛立った。

今回から読者様からの意見により、あらすじを書きました。混乱を避けるために、前のお話の続きから書き始めています。少し読みやすくなったと思います。

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