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織姫と彦星

作者: ちょこ

 「今年もついに七月七日がやってくるわ!」


 そう言って織姫は顔の前で手を組み、とても嬉しそうに笑顔を浮かべました。


 「今年もついに、七月七日がきてしまう」


 そう言って彦星は眉間に人差し指を当て、とても深いため息を吐きました。




 ーーこれは年に一度しか会えない、二人の物語。




***********




 昔々のお話です。

 あるところに、天の神様がいました。その神様には織姫と言う名の一人娘がいて、神様は娘にデレデレです。

 神様は娘に甘く、織姫は少々我儘に育っていきました。

 勉強や仕事からは逃げ、上手に悪戯をし、怒られそうになるとしおらしく涙を流す演技でやり過ごす。織姫はそんな能力ばかりが強化されていく日々を過ごしました。


 時は流れて、織姫は誰もが賞賛する程の美しい娘へと成長しました。天の神様は、年頃になった娘の相手を探始めました。

 そんな時、働き者で周りからの信頼も厚く、優しい好青年がいるという話を耳にして早速連れてきました。

 二人を引き合わせると、お互いが一目惚れをしたようで、すぐに結婚する事が決まりました。


 めでたしめでたし。




 ーーとはならず。

 織姫はその我儘で彦星を困らせました。


 「ねぇ彦星。遊びに行きましょうよ」


 「いや、織姫。僕仕事中だからね?」


 「えー、もういいじゃない。私と遊ぶのも仕事でしょ?」


 「織姫も仕事してくれる? 最近周りからチクチク文句言われるんだけど」


 「私は生きてるだけで仕事してるのよ。目の保養になるでしょ?」


 「バカなの? ねぇ織姫はバカなの?」


 二人は毎日、こんな言い合いを繰り返していました。


 「バカなのは彦星でしょ。こんな美しい妻が目の前で誘ってるのに、仕事してるなんて」


 「うん、僕の妻はバカだったわ」


 「もう彦星なんて知らない!」


 そう言って、織姫は家を飛び出しました。

 ここまではいつもと同じ。いつもお腹を空かせた織姫が、夕方頃に帰ってくるのでした。


 「……遅い」


 ですが、その日はいつになっても帰って来ませんでした。次の日も、また次の日も。


 心配になった彦星は、天の神様に相談へ行きました。


 「織姫が帰ってない? いつもの家出じゃろう」


 「いえ、いつもはその日の内に帰ってくるんです。もう三日も帰ってなくて」


 「そうか、それは心配だ。皆に探させよう」


 それでも織姫は見つかりませんでした。


 彦星は心配で眠れない日々を何日も何日も過ごしました。

 織姫が居なくなってから一週間経ったある日。


 「ただいま」


 なんの前触れもなく、織姫が帰ってきました。


 「織姫! 良かった、心配したんだぞ」


 彦星はそう言って、織姫を抱きしめました。


 「ごめんなさい、彦星。私、悪い人たちに捕まってしまって」


 腕の中の織姫がそう呟いたので、彦星は更に強く強く、織姫を抱きしめました。


 「怖かったろう! もう大丈夫だ。僕が君を守るからね」


 涙を流しながらそういう彦星に、織姫は頷きました。


 「とても怖かったわ。でもね、遅くなったのは捕まったからではないの」


 「え?」


 彦星が織姫の顔を覗き込むと、何やらとても幸せそうな顔をしています。


 「悪い人たちを少し、ね。指導してあげたのよ。そしたら向こうもとても喜んで」


 「そ、そうなのか?」


 「えぇ。男の人ってあぁいう事が好きなのね。私ったら、全然知らなかったわ」


 恥じらう様に手で顔を隠す織姫に、不穏な気配を感じた彦星は、少し後ずさりました。


 「ど、どういう事?」


 「ふふふ、さぁ彦星。もう我慢しなくていいのよ!」


 そう言うと、織姫は彦星を押し倒して縄で縛り始めました。


 「な、何をするんだ織姫!」


 「大丈夫、痛いのは最初だけよ。少しずつ気持ちよくなっていくからね」


 彦星は焦りました。これから何をされるのか、と。


 「さぁ、始めましょう」


 織姫は怯える彦星を見て、にっこりと笑ったのでした。






 「天の神様! 僕はもう、耐えられません!」


 「困ったのぅ……」


 数日後。ぼろぼろになった彦星が天の神様の元へと逃げ込んできました。


 「織姫が僕を痛めつけるんです! 男の人はこうされるのが良いんでしょう?と笑いながら!」




 織姫は悪い人たちに捕まった時に、恐怖で何もできませんでしたが、服を剥ぎ取られ、あと布一枚となった所で抵抗をしました。

 もし汚されてしまったら、彦星に合わせる顔がない、と。

 ここで幼少期の能力が開花しました。


 演技で男たちの気を逸らし、男たちを罠に掛けて吊り上げ、同じように服を剥いで罵声を浴びせたのです。

 するとどうでしょう。先程まで恐ろしかった男たちが、喜び出したのです。

 困惑する織姫でしたが、男たちはもう暴力的な振る舞いをしません。そして、織姫にもっとしてくれと要求してきたのです。

 そこで織姫は間違った知識を得てしまったのです。

 男はそうする事で喜ぶのだ、と。


 数日間で男たちをいたぶる技術を習得した織姫は、彦星の元へと戻っていきました。

 きっと彦星も、言えなかっただけで織姫に攻めを求めていたんだという謎の確信を持って。


 戻ってからというもの、織姫は彦星を執拗に攻めるようになりました。

 最初は困惑していた彦星も、次第に織姫から本気で逃げるようになりました。

 織姫は、そんな彦星がいじらしく見え、更にヒートアップしていきます。


 そしてついに、彦星は天の神様に泣きついたのでした。




 「昨日なんて、縛り上げられた上に、笹で叩かれまくったんです。もう僕は耐えられません!」


 「そ、そうか、それは流石に……。よし、それでは織姫をこちらで預かろう。彦星は天の川の向こうで暮らすようにすれば良いじゃろう」


 「ありがとうございます!」




 織姫は天の神様の元へと連れて来られましたが、彦星への愛は変わりませんでした。


 「お父様、私はなぜ彦星と離れ離れにされないといけないのでしょうか」


 「えっと、そう、あれじゃ。織姫が仕事をせずに、彦星の仕事までも邪魔をするからじゃ」


 「分かりました。それでは真面目に仕事をします。ですから、彦星に会わせてください」


 「良かろう。本当に織姫が仕事に励むのならば、年に一度会うことを許そう。これから一年後の、七月七日じゃ」


 「ありがとうございます、頑張ります!」


 それからというもの、織姫は熱心に仕事をしました。

 彦星にそれを伝えると、織姫の仕事ぶりに関心し、会ってほしいという申し出に頷いたのでした。


 月日は流れ、二人が離されてちょうど一年が経ちました。




 「あぁ! 会いたかったわ彦星!」


 「織姫……。元気そうで良かった」


 久々に会った織姫は、一目惚れをした時と同じく、とても美しく見えました。

 彦星は思わず抱きしめます。


 「彦星……。私、ずっとずっと、彦星の事を考えていたのよ」


 「そうか、僕もだよ織姫」


 そう言って、彦星は口付けをするために少し離れようとしたところ、動けない事に気付きました。


 「どうしたら彦星に喜んでもらえるか、ずっとずっと考えていたの」


 そう言って花のように笑う織姫に、彦星は嫌な予感しかしません。


 「織姫、それはどういう」


 「見て! 彦星に喜んでもらうために竹を細く切って良くしなるように改良したの! 色々試行錯誤したのよ」


 「あぁ……織姫は変わっていなかったのか」






 そして冒頭に至ります。


 織姫は、どう彦星を捕まえて喜ばせるか。

 彦星は、どう織姫から逃げ続けるか。


 一年中お互いの事を考えながら、今年もまた、七月七日を迎えるのでした。





 おしまい

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