「火種の火種」
「それで…こいつか?騒いでる奴というのは」
オームとリザロが到着した小さな村の教会では、修道服を着た神官が大声で騒いでいた。
「こら放せ人外め!!私を誰だと思っている?セオス教国円卓会議に参加権を持つ大神官であるぞ!!!」
大神官を名乗る男は両脇を魔王軍兵士に抱えられ、それを振りほどこうと暴れていた。
二人はその男に近づく。
「放せっ!!…なんだ貴様らは??」
二人の姿が目に入ったのか、大神官は訝しげな表情で問いかけてくる。
「俺らがなんだって?…聞いて驚けよ!!!俺は魔王軍新幹部のオーム様だぁ!」
「俺はリザロだ。それでお前は…大神官?なのか?」
「そうである!創造神セオス様に支えるセオス教の大神官。私をこの様な目に合わせて、本国がただじゃおかないぞ?早く私を解放…ええい!いい加減に放せっ!」
左右の兵士の腕を振り払いながら、大神官は得意げに言い放った。
「そんな事は知らんっ!!魔王様から仰せつかった命令の中には捕虜の確保も含まれていたからな!例外はこのオームが認めんぞ!!」
「なっ!…この化け物風情が。必ず後悔させてやるからなっ!!!」
オームは脅しをかけられるが
「ふんっ!おい!そいつを捕らえておけ!!」
「くそっ!放せっ!!放せぇー!!!」
大神官は引きづられながら連れて行かれた。
「おい、良いのかオーム?あやつは人間の世界の権力者ではないのか?」
「ん?良いだろリザロよ。あんな小うるさい老齢の人間が権力者なはずが無いだろう」
「しかし…魔王様の判断を仰いだ方がよくないか?」
「リザロ!そんな事でいちいち魔王様のお手を煩わせるな!!今回の戦争は俺たち新幹部が任されたのだ!あんな小者の事でいちいち報告してたら笑われるぞ!!」
「うーむ…そうか」
リザロは納得がいっていない様子であったが、オームに強引に押し切られる形でその場を後にする。
「さて…早いとここの辺りの村々を制圧せねばなるまい。次はもう少し北側を…」
先程の村から出立し、次の標的を確認していた二人に対し、突然思いもよらぬ報告がなされる。
「緊急の伝令です!オーム様!リザロ様!!」
「どうしたのだ?その様に慌てて」
「兎に角申し上げます!南部戦線において我が軍が壊滅状態!!ホー君様が行方不明。ドラ男様が重傷を負わされた模様です!!!」
伝令の言葉に二人の顔は凍りついた。
やがて、言葉の意味を理解したリザロは…
「なんという事だ…オーム!俺が南部に向かう!お前は北部での任務を継続してくれ!分かったな!!」
「い、いやリザロ!今こそこのオーム様が…」
「ふざけてる場合じゃ無いんだオーム!南部へは俺が行く!!お前はここを頼む!!」
普段は物静かなリザロの強い言葉に、オームはたじろぐことしかできなかった。
リザロは緊急移動用の空飛ぶ魔獣ペカザスに騎乗し、颯爽と飛び立つ。
「いいか!くれぐれも問題を起こすなよオーム!!」
そしてリザロは水平線の向こうへと飛んでいった。




