「殺戮機械」
王国中部都市トイエス
突如として都市全域に降り注いだ爆撃・火炎・氷結・雷・風などの数多の魔法。それらは老若男女問わず都市内の全ての罪無き人間に無慈悲に降り注いだのだった。
「うぅぅ…痛い…痛いよ…」
「足がぁ!!俺の足がぁぁぁあ」
都市内の様々な場所からから聞こえてくる悲痛な叫び。
市民たちは自分たちの身に何が起きているのか全く理解できていない。
突如として身体の一部を失ったり目の前が赤く染まる現実を前に、狂乱とも言える錯乱状態に陥ってしまっている。
「攻撃だ…攻撃を受けている…早く本隊に連絡を…」
目の前に広がる惨状を目にしながらも、トイエスの守備隊長は自らの役目を全うすべく動く。
しかし…
「な…んだ…あれは?…」
守備隊長の目に映ったのは、正に地獄からの使者であり死者であった。
人智を超えた巨体には六本の長い腕。それぞれの手には異なる種類の武器を持っている。そしてなんと言っても特徴的なのが、その身体。肉が付いておらず骨のみのその身体からは禍々しい黒い魔力が溢れている。
そんな誰が見ても殺戮の為に作られた悪魔のような者が10体。
ゆっくりと都市へ向かって歩いてくる。
「おい!…だ、誰かあれを…あの化け物を止めてくれ」
守備隊長の言葉を受け、まだ動ける数名の守備兵が突撃して行くが
「ビュンッ!」
風邪を切るような音が聞こえた後に、兵士達の身体は真っ二つに切り裂かれていた。
「馬鹿な…あっ!おい!!止まれ!!!」
守備隊長が叫んだ先に居たのは…
「ママぁ!どこ?!どこなのー?!ママー!」
悪魔達の前を泣きながら通り過ぎる子供。
しかしスケルトンウォーリアーの動きに変化は無い。これまで通り一定のリズムで都市内に入ってくる。
そして先頭のスケルトンウォーリアーが泣きながらふらふらと歩いて居た子供の目の前に到着すると、その六本腕を一斉に振りかざす。
「おい…まて!!やめろぉ!!!!!!!」
「…ママ?」
近くに来た人影を母親と勘違いした幼き子は、1秒と経たずにただの肉塊へと姿を変えた。
「なんと…なんと無慈悲な…。…悪魔め!この悪魔供がぁ!!!!」
守備隊長の怒りの声も、都市内の各地へと散っていったスケルトンウォーリアー達による殺戮の、断末魔の叫びによって虚しく掻き消えていったのだった。
「ミノタウルス様。都市の掌握が完了した模様です」
配下のトレントの言葉にミノタウルスは鷹揚に頷き
「ヒガイハドノテイドダッタ??」
トレントは満面の笑みを見せて答える。
「スケルトンウォーリアー達の活躍によって
人的被害はなんとゼロにございます!!」
「ソウカ!!ソレデニンゲンノホリョハ?」
「捕虜でございますか?それが…」
ミノタウルス君が都市内に入って行った際に、王国都市トイエスから生命の音は消えていた。




