「戦線」
南部戦線
「流石に帝国の息がかかってるだけあって、都市の防御は万全だなぁ…」
「大層に自分の名を都市の名にするとは…。聞いたところによると、モルガンとやらは武に秀でている訳でもなければ、魔法を操る訳でも無いらしいな。…やはり人間とは理解に苦しむ」
王国南部の大都市モルガンを前に、鳥人間ことホークマンと竜人間こと竜人が2人。魔王軍新幹部のホー君とドラ男君である。
2人の視線の先には、巨大な壁に囲われた王国随一の大都市モルガン。
王家派との戦争中の為か防備は極めて厳重であり、都市の上空には空飛ぶ魔獣であるグリフォンに騎乗した兵士が巡回し、高くそびえる防壁の上には帝国の最新兵器であるはずの"魔導砲"も配備されているようだ。
「さて…どこから攻めたものか」
冷静な武人然とした雰囲気のドラ男は、標的を見ながらぼそりと呟く。
魔法による爆撃が1番有効なのだろうが、斥候の報告によると都市全域に高度な防御魔法が展開されているらしく、最悪の場合大した成果を上げられず敵に襲撃を察知されるという展開も予測される…その為有効な攻撃手段を見出せないでいるのだが、、、
「俺の空挺部隊で空から叩くのはどうだ??」
ホー君は自慢げな顔で提案するも
「…都市の上空が目に入らないのか?直ぐに接近がバレてあの魔導砲とやらの良い的だぞ?」
「なっ…俺はあんなのに撃ち落とされることはないぞ!!」
「貴様が大丈夫でも部下はどうだ??魔王様から何と言われたのか忘れたのか?…少しは頭を使え!鳥が」
「!!!テメェ!鳥って言いやがったな!!このトカゲが!!」
「貴様ぁ!」
2人は相変わらずの相性であり…
「なぁ、なんで魔王様はホー君様とドラ男様に組ませたんだろうか?見る度に喧嘩しているように思えるのだが」
「さあな、喧嘩するほど仲が良いって言うし…。それとも魔王様にしか分からない何かがあるのかもな」
2人の口論を冷めた目で見つめる部下達の会話から、2人の相性の悪さが伺える。
やがて、レベルの低い罵り合いも終わり
「はぁ…はぁ…。もう勝手にしろ!私は責任を負わないからな」
「ああ!そうさせてもらう!!空も飛べない奴の援護など鼻から期待していないしな!!」
ホー君はそう言い放つと
「おい!お前たち!空を飛べる者は魔導師を担いで奇襲だ!!俺たちが城門を破壊する!その後歩兵は都市内に雪崩込め!!」
自分の部隊に命令を下す。
「良いんですか?ドラ男様。あれでは犠牲が増えるような…同じ魔王軍の仲間ですし…」
ドラ男隊の参謀を預かる白虎と呼ばれる賢明であり屈強な亜人の言葉に、ドラ男は…
「知らん!好きにさせておけ…無能な指揮官の下に付いたのが運の尽きだ。彼らには悪いが、私には彼らに対する命令権が無いのだ。助けたくても助けられん」
「は、はぁ…それで我々は?」
「我々は魔王様に献上する"結果"を重視する。奴とは違ってな、戦は頭を使わないといかんのだ…あの部隊に命令を出せ。そしてケル吉様の力もお借りするのだ」
「分かりました」
2人の指揮官の別々の戦いが始まったのだった。




