「集結」
オベロン王国では現在、国を二分する内乱が起きている。
国王を中心とした王家の勢力と、反王家を謳う有力貴族の勢力だ。
国土の大部分をデスデモーナ大森林と接している王国であるが、大森林と接している地域の大半が反王家派の貴族の領地である。
それらの領地の大半が、以前は大森林から出現する魔獣や亜人に対して備える騎士団などの防衛戦力を置いていたが、魔王が大森林を掌握して以来めっきり魔獣や亜人の類が姿を見せなくなったため、現在は大森林に対してほぼ無防備と言って差し支えのない戦力しか配備されていなかった。
本来防衛の為の騎士団が王家との戦争に駆り出されているからである。
そしてそれらの領地をギラついた目で見据える異形の軍団が大森林と領地の境界線にズラリと並んでいた。
数百キロに渡って居並ぶ軍隊は、まさに終わりの見えない隊列を成していた。
その隊列を指揮する亜人…神話や童話の中によく登場する生きた化石とも言える屈強な亜人は、決して優れているとは言えない頭を必死に回転させ今回の作戦を立案したのだった。
「マオウサマニイワレタコトヲマットウシナケレバ…」
ミノタウルス君は彼の象徴とも言える巨大な斧を素振りしながら、主人の言葉を思い出していた。
「今回の遠征は俺たち旧幹部は一緒には行きませーん!」
今回の作戦会議として集められた場で魔王はその様に言ってのけた。
「君たち新幹部だけで王国領を分捕っちゃってね!これは練習でもあるから!!」
「マオウサマ…レンシュウトハイッタイ?」
利央はジーバ君の方をチラチラ見て、言葉に詰まりかけながらも答える。
「ほら!これまでの訓練の成果を見せろー的なね?…ね?」
「「おお」」
集められた新幹部達は揃って声を上げる。
「いよいよ俺のデビュー戦か…このオーム様も遂に幹部として魔王様のお力になれるとは…オーク生も何があるか分からんもんだな〜」
「私の魔獣混成部隊で人間達を蹴散らしてご覧に入れましょう」
「おい!おれの飛行部隊も忘れるなよ!」
「おいお前たち!魔王様の御前だぞ!!」
いつも通りの新幹部の様子を見て、利央はニヤニヤしながら
「ま!そういうことだから!お前たち、しっかりと魔王軍の実力を見せつけてくるんだぞ!!…俺はスイーツの開発で忙しいんだから」
「マオウサマ、"スイーツ"トハイッタイ?!シンヘイキカナニカデスカ?!」
「いっ、いや!何でもないぞ!!兎に角兵力はいくら使っても良いが、王国軍如きに損害はあまり出すなよ!」
「「「はっ!」」」
そして再びミノタウルス君は現実に目を向ける。
(トニカク、マオウサマノゲンヲジッコウシナケレバ…ヒガイヲサイショウゲンニオサエ、トシヲショウアクセネバナ)
ミノタウルス君は全軍の準備が整っている事を確認すると…
「ソロソロカ…マホウエイショウカイシ!!!」
ミノタウルス君の声に合わせ、魔王軍魔導師部隊が一斉に魔法の詠唱を始める。
「…ヨシ!!ハナテッ!!!!!」
そして各部隊から多種多様な魔法が、一斉に無防備な都市に向かって放たれたのであった。




