「神の影」
「"セオス"…ですかな?これまた懐かしい名前を」
ジーバ君の表情は相変わらずただの骸骨である事には変わりないが、その雰囲気はどこか昔を懐かしんでいるように思えた。
「どういう事だライナス!!セオス様ってのはなんなんだ!?」
「ちっ!…神の声を聞くこともできない愚かな連中が」
「ライナス?!一体どうしてそんな…」
ライナスの豹変ぶりを依然としてタバタは受け入れることが出来ないでいるが…
「ここは諦めるか…どうやら迎えも来たようだしな」
「何を言ってるんだライナス?!?!」
ライナスはそう言うと、何もないはずの倉庫の天井を見上げる。
すると…
天井は派手な音を立てて崩れ、そこから現れたのは…
大きな白い翼の生えた人間が現れた。
「ほう?ホークマンですかな?いや…あの色にあの形は…」
ジーバ君が冷静に乱入者を分析していると、乱入してきた翼の生えた人間は一直線にライナスの元まで降り立った。
「遅かったな」
「貴方が…"器"でございますね」
翼の生えた人間はとても丁寧な口調でライナスにそう言ったのだった。
「お、おい…ライナス?」
「それでは…行くとするか。神の元へと」
「ええ、お連れ致します」
「おい!待てよライナス!!行かせないぞっ!!お前は帝国の為に…」
タバタはライナスの前に立ち塞がるが
「邪魔だ…やれ!」
「了解しました」
白い翼の生えた人間が頷いた瞬間、光が閃光となって倉庫内に広がると同時に
「ぎゃぁぁぁあああ」
断末魔の叫びが響き渡った。
光が晴れた後に現れたのは…
「なんと…酷いことをしますな」
真っ二つに切り裂かれたタバタの姿であった。
「良し行くか」
「はい」
目の前で切り裂かれた親友を見ても、何事も無かったかのようにライナスは去ろうとするが
「行かせませんぞ。その翼は"天使"ですな??セオス教…いや、セオス教国の」
天使はジーバ君を一瞥し、不敵に笑う。
「偽りの生命にすがりし者よ。貴様とはまた直ぐに会えるだろう」
天使はそう言い残し、飛び立つ。
「させませんぞ!!溶岩球!!!」
溶岩の塊がジーバ君から天使に向かって打ち出される。
「ふっ」
天使はそれを避けようともせずに、翼を大きく動かすと…
「バカな…」
風は不規則な動きを見せ、魔法を包むようにして消し去ったのだった。
「ではまた会いましょう」
天使はそう言うと、ライナスを連れてそのまま飛び去って行った。
「これはまた…厄介な奴らが現れましたな」
ジーバ君は周囲に集まってきたブラックゴブリン軍団を尻目に、わざとらしいため息をつくのだった。




