「幕切れ」
「………もういいわ。私の負け」
「は?!?!?!いやいや、今日一で意味わかんないわ」
なんなんだこの子は。
いきなり泣き出したかと思えば、訳わかんない質問を繰り返し…挙げ句の果てに降参しただと?
情緒不安定過ぎない?
まあ…、正直俺よりも強そうだったから助かるけどね。
「と言ったが…まあ、降参するなら助けてやる」
「………はい」
若干嬉しそうに見えるのは気のせいだろう。
「そこで座ってなさい!」
「…わかった。待ってる」
えーと…待ってるとは?
なんで待たれてるの俺。
少女はニコニコした表情で、こちらを見ている。
なんでー、何があったのー??
ついさっきまでゴブ一郎蹴り飛ばしてたじゃんこの子。
怖い…なんか怖いよ。
とりあえずこの子は放っておいて…
みんなの戦況は?
ジーバ君とひょろ長男は相変わらず見たこともない魔法の応酬を繰り返しているようだ。
魔法だけだったら絶対俺に勝ち目ないだろうな、あの2人に…
そして軍団長たちだが
「ぐはっ!!」
「ラモン!!!」
数の暴力は流石だ。
こっちにも被害は出ているが、ゴブ一郎も加わった魔王軍の精鋭が負けるはずはないだろう。
既に敵はエロい格好の女とインテリ魔術師しか残っていない。
ファイター系2人は地面に倒れている。
「きゃぁぁぁぁあ!」
「よっしゃぁぁぁぁあ!この"切込隊長"オーム、敵討ち取ったりぃぃぃい!!」
「おお!オーム!流石だ!!」
「リザロッ!やったぞ!!!」
熱い友情の最中であるが、どうやらエロい女も…じゃなくてエロい格好の女も倒れたようだ。
残るはインテリ魔術師だけだが…
「くそっ!!役立たずどもがっ!私はこんなところで死ぬ訳には…」
時を同じくしてジーバ君と戦っていたひょろ長男が
「うーん…ナナちゃんも内側からやられちゃったみたいでーすしぃ、ここらが潮時でーすかなぁ?」
「逃がしませんぞっ」
ジーバ君が火球を放つも、シャロウは影に潜って行ってしまったのだった。
利央たちは残されたインテリ魔術師…サルマンを囲う。
「さて…降参するか?インテリ野郎」
「インテリ?…そんな事はどうでもいい!兎に角私はこんなところで…」
ミノタウルスに羽交い締めにされ、暴れているサルマンの目に、笑顔で遊んでいるナナの姿が飛び込んできた。
「!!おいっ!ナナ!!!何を笑ってる??この化け物が!!!人間以下のお前にこれまで元帥様は多大なご慈悲を…」
ナナは悲しそうな顔を浮かべかけるが
「ミノタウルス君!やっちゃって」
ゴキッッ!!!!!!
骨が砕ける音が周囲に響き、サルマンは動かなくなった。
「…なんで?」
ナナは悲しそうでもあり、嬉しそうでもある複雑な顔を見せる。
「別に!お前の為とかじゃねぇから!!」
「素直じゃないわね」
「流石はリオ様、すぐに心を掴むのですね」
「とりあえず、この戦。我らの勝ちですかな?」
「"元帥"か…いけ好かねぇ野郎だな」
利央の顔に怒りの色が見えるが
「勝ったんだし、帰りましょうよ…流石にちょっと疲れたわ」
「そうだな!!家に帰ろうぜ!!!」
「…帰る」
「お前も?!?!」
利央にぴったりと張り付いているナナの顔には、満面の笑みが浮かんでいた。




