「ナナ」
「あら可愛い"お嬢さん"だねぇ〜。どこの子かしら?」
ナナの1番古い記憶はそこから始まっていた。
目の前にいたのは老婆だった。微笑みを浮かべ、優しく自分に話しかけていたのを覚えている。
老婆と会ったのは帝国の辺境にあった小さな村だった。
どうして自分がそこに居たのか…どうやってそこまで行ったのかは何も覚えていなかった。
気づいたら目の前に老婆がいた…そんな状況だったと思う。
「お父さんやお母さんはいないのかい?」
「…分からない」
不思議と言葉は理解できた。
それに自分に声をかけて来たのが、その老婆1人だけという事も。
「ちょっと!-さん!その子変だよ!」
「騎士の人呼んで来た方がいいんじゃないかい?」
遠目から他の人が老婆に何かを言っていたが、老婆は
「大丈夫。何も心配いらないよ。とにかくうちに来なさいお嬢さん」
老婆は自分の硬くて気持ちの悪い腕をしっかりと掴んで、家まで連れてってくれた。
それが私に残っている最初の記憶…。
「おい!どうしたんだよ?」
「………!」
目の前の少女はしばらくの間ぼーっと虚空を見つめていた。
「一応戦いの最中なんだけど…」
「…そうだった。排除しないと…」
少女はそう言うものの
「えーと…大丈夫??」
利央は魔法が飛び交う戦場には、かなり場違いな言葉を発し、少女を心配する。
「…何が?」
「いや、だって君…泣いてるじゃん」
ナナの目からは涙が流れていた。本人も気づかないほど自然に。
「…きみ………」
「ん?どうした??」
ナナには目の前の存在が何なのか、どうしてそのような…あの老婆のような言葉を私に掛けるのかが分からなかった。
「…貴方は………何?」
「え?!?!いきなりどうした?!…何って言われれば…まあ、人間?いや、魔王??」
2人は戦闘の手を止める。
そしてナナは利央に向かって自分の腕を見せる。鱗が生え、硬くて歪な腕を。
「…ん!」
「は?」
「………ん!!」
「いや…なんなのさっきから」
ナナには分からない。何故目の前の人間は自分の腕を不気味がらないのか。何故自分を"化け物"と言わないのか。
「…この腕…どう思う?」
「腕?…腕か…うーん。いやー、ちょっとね〜」
ああ、やっぱりこの人間も同じか。ナナは普段と同じ気持ちになり、普段通りに仕事を再開しようとするが
「うちのリザードマンよりも龍っぽくてかっけぇぞそれ!」
「……………!!!!!」
ナナの顔は驚きに満ちているようだった。




