「均衡」
「なんだあれ??」
切り裂かれたナナの衣服の隙間から見えたのは、とても人間のものとは思えない鱗のついた腕だった。
「あれって…なんだか、りゅ…」
「シャーリー!!来るぞ!!」
ナナは間髪入れずに、ゴブ一郎を蹴り飛ばしたその足で利央達に迫る。
「…遅い」
「!!」
人ならざる速度でシャーリーに迫ったナナは、魔法の力に頼ることなく、純粋な肉体能力による蹴りを見舞う。
「シャーリー!!!」
あれだけ強化されたゴブ一郎が相当なダメージを負ったので、生身の人間であるシャーリーがあれを食らえば…
骨が砕けたような音が周囲に轟く。
「嘘…だろ…」
蹴りを食らったシャーリーは粉々になって周囲に散っていく。
「嘘だ!!シャーリー!!!!!」
利央は感情の制御が効かなくなりそうになってしまうが
「ふう。あれはやばかったわね」
「いや、やばいとかじゃなくて実際にシャーリーは………ん?」
見るとシャーリーが土まみれになって地面から這い出て来る最中であった。
利央が驚いてシャーリーの遺体?の方を見ると、そこには
「骨?」
バラバラに砕かれたスケルトンの亡骸があったのだった。
「…面倒」
ナナはスケルトンの亡骸とシャーリーを交互に見ながら、不機嫌そうな表情を浮かべている。
「良かったシャーリー!!死んだかと思ったわ…」
「バカね、あれくらいじゃ死なないわよ。…まあ、喰らったら確実に死んでたけどね」
元気そうなシャーリーの顔を見て、利央の感情は収まるのだった。
もしシャーリーが殺されるような事があれば…また俺は暴走してしまいそうだな。
自らの感情の起伏が激しいことに利央は気づいていた。
そしてそれが、自らが暴走してしまう引き金となる事も…。
「…じゃあ先に貴方!」
ナナは利央をターゲットにしたのか、再び神速の動きで利央へと迫る。
「へっ!来るならこいやっ!!」
利央は自らに魔法をかける。…というよりは自らの魔法を発動させたと言ってもいいだろう。
闇属性魔法の特徴の1つである他者の強化。ではその力を自らに使ったらどうなるのか…。
利央は暇を見つけては訓練をして試していたのだった。
「…無駄………っ!!」
常人には捉えられない速度のナナであったが、利央は正面からそれを受け止めた。
全身に闇のオーラを纏う利央の肉体能力もまた、ナナに迫る勢いで強化されたのだった。
「残念お嬢さん。俺も強いんだよね〜」
「…お…じょうさん…」
「さっきも…どうした?"お嬢さん"って何か引っかかるのか?」
利央とナナは互いに力が均衡している中で、そんな会話を交わす。
そんな中で、ナナの目は虚空を見つめているかのように虚ろになっていたのだった。




