「激突」
「ええ?!まじで?!?!」
利央が放った闇属性魔法は、齢10歳程の幼い少女に掻き消されたのだった。
…
と言うよりは、"喰われた"のだった。
「………美味しくない」
「この子に魔法は効きませーんよぉ」
利央の魔法…闇属性魔法はこの世に2つと無い唯一無二の魔法であり、その威力は絶大だ。
よってたまに訪れる戦闘の際は、適当に闇属性魔法を撃っておけば何とかなっていたのだ。
それが効かないとなると…
不味いよね…
「ジーバ君!!やべぇって!どうしよう?!?!」
「とりあえず落ち着くのですリオ様!…っと!!先ずは相手の力を分析しますぞ」
自らを拘束していた影を振り払いながら、ジーバ君は冷静にそう言った。
「そうね!!とりあえず相手の力を知らないと…ゴブ一郎さん!!」
「了解ですシャーリー殿!」
シャーリーが死霊術によってゴブ一郎に霊を憑依させる。
「死霊術師でーすかなぁ?」
「…食べれない………」
闇属性魔法によって通常よりも遥かに強化されているゴブ一郎の身体には、常人であれば到底耐えきれない量の霊が次々と憑依していく。
「まだっ…まだいけますシャーリー殿」
「分かったわ!!…ありったけ入れるわよ!!」
ゴブ一郎の魔力、肉体、特殊技術が見る見るうちに膨れがっていく。
「あららー。これは不味いかもですねぇーえ」
「………」
やがて、霊を取り込み終えたゴブ一郎は普段よりも3倍近くでかくなり、筋骨隆々な体へと変貌を遂げていた。
「やべぇ!くそかっけぇぞゴブ一郎!!」
「ありがとうございますリオ様」
「よし!ゴブ一郎はあの白髪の子を頼む!!ジーバ君はひょろ長い奴だ!!俺は隙を見て色々やるから!」
「了解です」
「わかりましたぞ」
ゴブ一郎は利央の言葉に頷くと、目で追えないような速さでナナへと迫った。
そして鋭く伸びた爪に闇属性魔法の特性の1つでもある、闇の魔力を纏わせて殴りつけるが
ガキィイン!!!
ナナは腕でそれを受け止めたのだった。
「何?!」
「どういうこと?!何あの子?!?!」
利央達が驚いている間に、ナナはゴブ一郎へとカウンター気味迫る
「………邪魔!」
小さな体で飛び上がると、そのまま回し蹴りのような形で小さな足でゴブ一郎を蹴り飛ばすのだった。
「ぐはぁっ!!!!」
ゴブ一郎は吹き飛ばされ、背後の木に激突したのだった。
「どうなってんだこれ…」
「あの小さな身体の一体どこにあんな力があるの」
利央とシャーリーが驚いていると
「リオ様!!あの子の腕を見てくだされ!!」
ジーバ君がひょろ長男と壮絶な魔力弾の応酬をしながらも、そう叫ぶ。
「腕?…」
「………リオ!!ちょっとあれ!!!」
「!!!!」
ゴブ一郎の一撃を防いだ際に切り裂かれた彼女の衣服の隙間からは、とても人間のものとは思えないような白くて立派な"鱗"が顔を見せていたのだった。




