「逆侵攻作戦」
「やられたらやり返す!倍…」
「それで、質問のある者はいるか?」
「倍返…」
「どうやらいないようですな、フォッフォッ」
「…」
「どうしたのかしら?」
「…なんでもない」
何処か不機嫌な様子の利央をみて、一同は首を傾げる。
会議室に集まったのは、最近編成されたクーズー軍の指揮官に当たる亜人とシャーリー達幹部の面々である。
そしてたった今クーズー軍による帝国進行作戦の内容が決まったところだ。
あの2人…マッチョとエロい格好をした女がクーズー帝国で暴れた際には、亜人の女や子供も犠牲になった。
だから帝国が同じ目にあっても文句は言わせない。
今回の作戦で沢山の人間が犠牲になると思うが…
もはや俺に後ろめたさは無い。
この前、怒りのあまり我を忘れた時に分かったのだ。
自分が何者か、何のために戦うのかということが。
俺は魔王だ。
俺を慕う部下のために、仲間のために戦うのだと。
俺はこれまで誰一人として自ら進んで人間を傷つけた事は無い。
…だけど、大人しく森にこもっていても、この前のように"侵略者"に襲撃されるのだ。
ならばやる事は一つ…。
こちらから"ヤル"だけだ。
「…というわけでリオ様。出陣の準備が完了しました」
目の前には覚悟を決めた顔を見せるゴブ一郎と、いつの間にかクーズー城前に整列している10万のクーズー軍。
それとこの前奴隷にした人間達。
今回の作戦で重要になる奴らだ…
せいぜい頑張ってもらおう。
「それではリオ様、皆に一言お願いしますぞ」
「しっかりしめるのよ」
ここに来てから人前で話すことが増えたな。
前みたいに緊張することも無くなった。
「良し…皆!!聞いてくれ」
目下に広がる十数万人の注目を一挙に集めてもなお、利央は全く動揺することなく堂々と宣言する。
「…俺たちの前に立ち塞がるものは全て倒せ!俺は魔王リオ!!俺たちは"魔王軍"だ!奪われるより奪え!襲われるよりも襲え!!愚かな人間に、誰に喧嘩を売ったのか解らせてやれ!!!!」
「「「うぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!」」」
デスデモーナ大森林に獅子の如き雄叫びがこだまする。
「フォッフォッフォッ」
「なかなか頼もしくなったわね」
「流石リオ様」
「じゃあ…行きますか!」
クーズー軍改め、"魔王軍"は進軍を開始したのだった。




