「憤怒」
「…何だお前?」
ラモンが振り上げた棍棒を黒い光を宿した腕が押し止めている。
「コイツらを救助しろ」
「はっ!」
ラモンは棍棒を受け止めているのに余裕な様子で部下に命令を下す黒いゴブリンに対して苛立ちを覚える。
「こいつ…」
命令を受けたゴブリン達は瀕死のオークとリザードマンを連れて早々に離脱する。
しかしその様子を目の前にしてもラモンとヒリエに動きはない。
「ラモン!!」
「わかってる!力を入れたが全然動かねえ…こいつ今までの雑魚とは違うぞ」
「フォフォフォ、散々我々の同胞を手にかけたようですな」
「誰だ?!………!!」
「アンデット!!」
いつの間にかヒリエの背後には虚空の瞳に光を宿したアンデットが立っていた。
「そうそう、お前らは絶対許さないから」
「また新手?!」
「人間…か?」
2人が声の方を向くと、そこには全身を黒いオーラで包んだ1人の人間の男が立っていた。
その男の表情は明らかに怒りそのものであった。
「ラモン!…コイツら私たち並みの魔力反応よ」
「何?!…フンッ!」
ラモンはゴブ一郎との組み合いを辞め、ヒリエの元まで下がる。
「私は帝国軍第3軍軍団長ヒリエよ」
「同じく第2軍軍団長ラモンだ」
「貴方達ね、愚かにも第4軍を壊滅させたのは。そのツケを払ってもらうわ」
「ああそうだ、帝国軍に敗北の2文字は無いからな。お前らも…それに生き残りの第4軍にも消えてもらわないといけないんでな」
利央は2人の言葉を無視して、辺りに転がる部下の亡骸を見つめる。
その中には利央自身が勧誘に行った際に交渉したバグベアのリーダーも含まれていた。
「そいつらは全く手応えの無い"雑魚"だったぞ?」
「そうね、帝国の恐ろしさを少しは教えられたんじゃないかしら?」
2人は自慢気にそう言い放つ。
「そうか…帝国か…」
生まれて初めて出来た、自分を慕ってくれる奴ら。
俺の人生で初めて出来た"本当の"仲間たち。
この前まで嬉しそうに「マオウサマ!!コレウマイナ!」と嬉々としていたバグベアのリーダーや連絡係をしていたゴブリンやオークを、奴らの…仲間の死を馬鹿にしたな?コイツは。
沸沸と湧き上がる"復讐"の波動。
利央は生まれて初めて理解した…
これが"殺意"なのかと。
直後、利央は何かに支配される。
「そうそう、貴方も帝国の恐ろしさをちゃんと覚えて…」
「…ミナゴロシダ」
「…!!」
利央の目は焦点が合わなくてなり、彼を包む黒いオーラは一段とその闇のような黒さを増していた。
そして片言のように再び呟く。
「…オマエラモ、オマエラノクニノヤツラモナ」
「リオ様?!」
「どうされたのですかリオ様?」
2人は主人の異変に気付くものの、利央の耳にはゴブ一郎とジーバ君の声が届いていないようだ。
利央は魔法を発動させて、頭上に巨大な闇属性魔法による球体を生み出す。
「あれは何だ?!」
「…!!!!!不味いはラモン!!!あの魔法は極大の魔力の塊よ!!あの大きさだとこの辺り一帯が吹き飛ぶわ!!!」
「リオ様!!お気を確かに!!!」
「リオ様!!しっかりするんですぞ!!!」
しかし2人の声は利央には届かない。
「ゼンブコワシテヤル…ゼンインコロシテヤル…」
利央は魔法を放つ為に大きく腕を振り上げる。
「不味いわね!」
「おいおい、やばいなこれは」
「リオ様!!!」
「リオ様!気をしっかり持って下さい!!リオ様!!!!」
絶体絶命の場面…そこにある人物が駆けつけ、大きな声で叫んだ。
「しっかりしなさいよ!!リオ!!!!!」
シャーリー・ミーシャは力の限り叫んだのだ。




