「無念」
「なんなんだここは?!何故オークとリザードマンが共闘してやがる??」
「仲の悪い種族の代名詞のような奴らなのにね…それに、さっきから時間を稼いでいるのかしら?一撃離脱ばかりね」
帝国軍第2軍、3軍軍団長"破鎚のラモン"と"氷結のヒリエ"は見たことのない光景に驚きが隠せない様子だ。
「おいおい、"亜人連合"でも組まないような奴らが共闘って事は、、、そうとう力のある指揮官でもいんのかぁ?」
「あら、貴方にしては良い予想じゃないのラモン」
「…どういう意味だヒリエ?」
呑気に2人が会話をしている間もオームとリザロは一度たりとも2人から目を離したりはしない。
自分達にできる事は時間稼ぎしかない事を理解しているため、2人が無駄に会話をして時間を消費してくれのはオーム達にとっては歓迎すべき事だ。
戦闘力では俺が到底及ばないバグベアやオーガを殲滅して来たところをみると、2人が本気になれば自分達など足止めにすらならない事は理解している。
その為オームは迂闊に動く事が出来ない。
不意の一撃が功を奏してのか、2人は必要以上に俺たちを警戒してくれているらしい。
この調子…この調子で少しでも時間を。
魔王様や幹部の方々が到着するまでの時間を…。
「バグベアにオーガ、オークにリザードマンか…面白い。そいつらを支配できる圧倒的な力の持ち主がいるんだろ?コーカスが捕まるのも納得だな」
「まあコーカスは軍団長の中では最弱だったけど…それでもそこそこの力はあったはずだもね」
「とにかく先に進むか」
「ええ、そうね」
2人は目の前の存在を全くに意に介している様子は無い。
そしてヒリエは魔法の詠唱を始める。
「…氷結の槍!」
氷で出来た槍がオーム達に向けて飛ばされる。
「がはぁ!!」
「うぅっ…」
槍は2人を貫いた。
急所は外れたようだが、それでも致命傷である事には違いない。
「口程にもない奴らだったな。早く強者と戦いてぇぜ」
「貴方ってほんと戦闘狂ね」
「…ん?」
ラモンの足が止まる。
見るとオームがラモンの足を掴んでいた。
腹部からは大量の流血。更に先程の魔法を受けて大きな穴があいていた。
「なんだこの死に損ないは?」
「…いか…せ………ない」
「おい、離せオーク」
「いかせ……ない」
オームは力の限りラモンの足を掴む。
命の灯が続く限り。
「じゃあ死ねよ」
ラモンは手にしていた巨大な棍棒を振り上げる。
数分であったが時間を稼げた。
これで魔王様や幹部の方々が準備する時間が少しは稼げただろう。
それに関しては後悔は無い。
しかし…
数多くの同胞を殺した男に殺されるとは…。
これだけが無念で仕方がない。
この男はオークを殺したことなんて覚えていないかもしれないが…それでも悔しい。
同胞の無念を…俺の無念を晴らしてください魔王様。
オームは祈るようにそう願うと、覚悟を決めた。
「…あばよ」
巨大な棍棒がオーム目掛けて振り下ろされたのだった。




