「再会の乙女」
「魔王様!茂みからこちらの様子を伺っていた人間を2名捕らえました!」
「おう!さんきゅー!」
連絡に来たオークの隊長からの報告に対して、利央は抑揚に頷き礼を述べる。
最近はよっぽどの事がない限り、あんまり驚いたり動揺したりすることが無くなってきた。
人間って言ってもどうせ帝国軍の生き残りかなんかでしょ?
そんなのにいちいち驚いてたらきりがないもんね。
まあ、一応見に行ってくるか。
利央は人間が捕らえられたという地下牢へと向かう。
「えぇーーー!!!!!!!!コスプレ少女やんけ!!!!」
利央は驚きのあまり叫び声を上げてしまう。
「…悪魔」
「え?!隊長なんか言いました?」
「私たちをどうするつもり?」
リアは利央を睨みつける。
「そんな怖い顔しないでよ〜!美人が台無しじゃん?」
コスプレ少女は黙ってればハーフっぽくて可愛いんだからさ!
「なっ!!…」
リアは真っ赤な顔を隠すようにしてうずくまる。
「あれー?どうしたんですか隊長??真っ赤な顔して」
「ハンナうるさい!!!!」
「あ痛っ!!!何するんですかー?!?!」
強烈な一撃がハンナに向かって繰り出された。
この2人は何をやっているんだろうか…。
まあ、とにかくこの世界…
ここに来てから最初に出会った人間がコスプレ少女だったんだよね。
一方的にだけど思い入れ?みたいなのもあるし、出来れば手荒な真似はしたく無いんだけどなあ。
「2人は何でこの森に来たの?」
「えっとですね!それは騎士団のしご…」
「ハンナ!!」
「痛いっ!!…もうー、いちいちぶたないで下さいよ〜、、、」
ハンナはコスプレ少女にぶたれて半泣きになっている。何というか…色々と可哀想だ。
会って間もないけど、このハンナって子は完全にやらかしちゃう系の鈍感女子だな!間違い無い!!
「まあいいや、大方俺らの観察でもしてたって予想はつくしね」
「!!…」
「すごーい!!当てちゃうなんて」
「ハンナ…貴方は本当に…」
「とにかくさ、ここの場所も知られちゃってるみたいだし、簡単に帰したりは出来ないけど…まあ、しばらくはここでのんびりしててよ」
「ふんっ!…悪魔め、本性を見せ始めたわね」
「やったぁ!お休みってことですよね?!騎士団って全く休みが無いですもんね〜。久しぶりに休めますね隊長!!」
「…」
「…」
この子…予想以上だ…。
利央がとてもじゃないが自分の手には負えない女の子の対処から逃れようとして、地下牢から出て行こうとしたその時だった
警備兵をまとめるリーダーオークが飛び込んで来た。
「魔王様!!!!侵入者です!!」
「え?!またかよ!!!どんな奴ら??」
「人間が2名です!!!」
「また?!さっきこの2人を捕まえたばっかだで?!…こいつらの事とかじゃなくて??」
「どうやら新手のようです!!"巨大な棒のようなもの"を振り回す者と"氷系統の魔術"らしきものを操る者の2名です!!…既に多くの味方がやられてしまっており、現在オーガとバグベアが対処していますが彼らもいつまでもつか…」
なんだそのヤバそうな奴らは…
それに…
味方がやられた?
…
「直ぐに行く!!お前はジーバ君とシャーリーに報告に行け!!!」
「はい!」
俺の可愛い部下たちに何かあったら…
利央は焦る気持ちと湧き上がる苛立ちを抑え、ケル吉とスネ夫に闇属性魔法でテレパシーを送り召集をかける。
そして全力で走るのであった。




