「ジーバ君」
ゴブ一郎の配下…まあ俺の配下でもあるゴブリンが飛んできて、城の中に来てもらえないかと言ってきた。
なんでも城の中に敵対的な奴がいたらしい。
めんどくさいなあ…
でもこの城は捨てがたい。というか既にクーズー城として俺がロイヤルニート生活を送る拠点として決定しているためにあきらめるというのはありえないな。
まあ、めんどくさい事はいつもみたいにみんなにやってもらおう。
「じゃあ全員でいくか」
ケル吉とスネ夫、それに城の前で待機していた残りのゴブリン達を連れて城の中へと入っていく。
利央達は城の中を進み、最奥部にある大広間へとたどり着いた。
「魔王様!…お手を煩わせてしまって申し訳ないです」
「フォッフォッフォッ、そなたが魔王とやらか?」
「ゴブ一郎、誰にだって失敗は…ん?、、、ガイコツが喋ってる?!?!」
古びたローブを纏った骸骨がカタカタと口を動かして喋っているのだ。
「こ、怖っ!!!!!!」
「ふむ…後ろに連れているのはケルベアーにヴェノムボアか、魔王と言い張るのもあながち間違いではないのかもしれんのう」
骸骨はブツブツと…いや、カタカタと何かを呟いている。
「失礼!、我が名はジーバ!リッチである」
「ジーバ?…ゆるキャラみたいな名前だな」
「ゆるキャラ?…ゆるキャラとはなんであるか?」
「いや、なんでもない!…それでジーバ君、俺たちはこの城に住みたいのだが、なんでも君が抵抗しているらしいね、俺と…俺たちと一戦交えるつもりか?」
「フォッフォッ、その必要はない。お主が魔王であるならばその魔力量は膨大なはず…。我は人の魔力量を見ることが出来る魔法を使う事が出来るのでな、それを見せてもらえればよい」
「ま、魔力量?!…それを見せれば出て行ってくれるのか?」
「勿論じゃよ…では良いな?」
ジーバ君がゴニョゴニョ…いや、カタカタと何かを呟くと…
ジーバ君の目が赤く光り、ジーバ君は俺の方を凝視しているようだった…するとこれまでのジーバ君とは明らかに様子が変わり、激しく動揺している様を露わにした。
「こ、これは…この膨大な量の魔力は一体…長き時を生きてきたがこれ程の魔力を見た事は…」
相変わらずカタカタと何かを呟いてる。
「で?どうなの?こっちは3人も仲間を怪我させられてる訳だからね?、そっちがその気ならこっちも出るとこ出るよ?主にスネ夫が!!」
赤い光を失ったジーバ君の虚空の目がこちらの方を見た…気がした。
「…配下の方への無礼を謝罪させてほしい。失礼ながらお名前をお聞きしても良いですか?」
「え?!…俺は利央だけど」
ジーバ君の口調がそれまでの陽気な老人のような喋り方から、流暢でいて気品もある政治家のような喋り方へと変わった。
「リオ様、数々の無礼を承知でお願いしたい。私…このジーバを配下の末席にでも加えてはいただけないでしょうか?」
「ん?!…あ、いや俺は全然構わないけどさ、お前が怪我させたあの3人のゴブリン…それにゴブ一郎に聞いてみなよ」
「貴方が彼らの支配者なのでは…?」
「何でもかんでも俺が決めるとさ、経験上あとあとだる…後悔する事になるのよ。それに仲間の意見は重要っしょ?」
「なんと!!!!………ゴブリンの皆様先程の無礼を承知でお願いしたい、私を魔王様の配下に加えては貰えないだろうか?私が持つ力、経験、知識全てを魔王リオ様に捧げると誓う」
ジーバ君の言葉には強い意志がこもっていたのを感じることが出来た。
「勿論だジーバ殿、リッチである貴方が加わるとなるとかなりの戦力アップだ!私としては歓迎したい」
「我々もです!先程の魔法、とても強力でした…あれでも手加減されていたのでしょう?今後はその力、是非魔王様の為に役立ててください」
3人のゴブリンもジーバ君を認めたようだ。昔のヤンキー漫画みたいなあれだろう、殴り合って絆が深まる的なね。いや、一方的にやられただけか。
とにかく
「決まったな、これからよろしく!ジーバ君!!」
「このジーバ・サル・オベロン、この身が砕けるその時まで貴方に仕えると誓いますぞ!フォッフォッフォッフォッ!」
ジーバ君は普段通りの口調に戻り、とても愉快そうに笑った。