「セオス教国軍」
「へぇ、あそこがバフース…いや、セオス様再臨の地か。それにしてもアンドレの奴も大概だな。12使徒最強を自称していたくせに人外の下等生物に負けたなんて…あんなのが同じ使徒を名乗っていたなんて恥ずかしくて仕方ないぜ!!なぁ??イスカリオ?」
元帝国領バフース近郊。そこに陣地を築いた10万はくだらない数のセオス教国軍。
神のための"聖戦"に赴いてる彼らは一人一人が自信に満ち溢れており、非常に洗礼された軍隊という印象を受ける。
そしてその陣地の上空で人型の生物が数名、背中の羽を広げて強固な防衛施設が築かれている元帝国領バフースを観察していた。
そこでは全身に深い傷跡を持つ強面の使徒が顔に大きな火傷の跡が残る使徒に話しかけていた。
「くっ、俺への当てつけか?ヤテマ?…。仕方なかったのだ。あの人外…確かオームと言ったか、あやつの用いた攻撃はとても我が"生きていた"時…いや、現在の世界でも考えられないような攻撃で…」
「ふんっ、言い訳かよイスカリオ。落ちたもんだな。そう言えばお前が"死んだ理由"も確か亜人に殺されたんだっけか?なすすべも無く、無残になぁ?」
「くっ!!貴様ぁ!!!」
激昂するイスカリオは大きく手を振り上げると、巨大な魔力の塊を生み出してヤテマと呼ばれた使徒に迫るが…
「そこまでにしなさい?神聖な再誕の地で使徒同士が争うなんて…不敬ですよ??」
2人の争いを仲裁するように現れたもう1人の使徒。その容姿は主だった特徴は無く、いわゆる"普通"な見た目だがその異常なまでの色白い肌は彼を必要以上に不気味に演出していた。
「じょ、冗談だぜシモン!!なぁ?イスカリオ?」
「…そうだな」
気配無く現れたシモンは一見すると穏やかな表情に見えるが、長い付き合いの2人は僅かにつり上がった眉の動きを見逃さなかった。それは普段温厚なシモンが苛立っている証であり、シモンを怒らせれば自分たちでは到底敵わないことを理解している為、2人の争いは自然と収まった。
「ふっ…今後セオス様が復活なされるこの神聖な地でそのような不敬があった場合は…分かりますよね?」
「すまんすまん」
「…ああ、わかってるさ」
ヤテマとイスカリオはシモンに向けられた視線から目を逸らしながらも了承する。
「ふふっ。分かれば良いのです。我々は志を同じくする同志なのですから…ふふっ」
不気味に笑うシモンを横目にイスカリオとヤテマは前方を見ながら言葉を発する。
「どうやら準備が整ったみたいだな」
「ああ、どうやらやられちまったアンドレとヨハン以外全員揃ったみてぇだな」
2人が見る方向からはシモン達と同じ様に背中から純白の羽を生やした人影が続々と集まってきていた。
「ふふっ、やっとですね。これでやっとあの憎っくき魔王を…ふふっ」
シモンはバフースに向けて完全に陣地を築いたセオス教国軍と集まってきた使徒を見ながら不敵に笑うと、小さな声でそうつぶやいたのだった。