「降臨の地」
デズデモーナ大森林の北側、国土の半分が山岳地形のセオス教国。そしてその首都では現在慌ただしく人が行き来しているようであった。
その多くは純白の鎧を纏う兵士のようで、物資や武器を担いで首都内を奔走している。
そしてそんな慌ただしい首都の中、全てのセオス教徒にとっての聖地。巨大なセオス像の下に作られた巨大神殿内において、慌ただしい外とは対照的に、非常に静かに会議が執り行われていた。
「人間の領地に兵を出すなど…教国の歴史であったかのぉ?」
「セオス様の教えは人間とは争わぬこと、それは教典にも書かれてある教えだが…」
セオス教大神官たちの言葉に続くように…
「しかし、お告げは絶対です。神直々の言葉に勝るものは無いのです」
大きな純白の翼を靡かせ、使徒の纏め役とも言える使徒…シモンが声が声をあげた。
シモンは続ける。
「しかし…この器ももう限界のようですね」
議会に参加している大神官たちの前には、力なく倒れているライナスの姿があった。
「そろそろ代わりの器に移したらどうだ?」
ある大神官の提案に対して反応する声がひとつ。
「適正が出た者がもういない。それよりも…早く降臨の地…いや、再誕の地に向かわねばなるまい」
創世官はそのように述べた。そして続ける。
「この前のお告げでは、魔王を止めねば世界に災いが降り注ぐとあったが…実際魔王軍は使徒アンドレを打ち破り、王国の西半分を手にしてしまった、急がねば…」
「それに…"邪悪な気配"が忍び寄っているらしいですよ。詳しくはわかりませんが…!!!!」
使徒シモンは話している最中、何かに気がつく。
「セオス様…」
みると先程まで倒れていたライナスが、起き上がっている。
「この身体はもう駄目だ…これが最後になるだろう」
ライナスは自らの腕を見つめながら言う。
そしてその様子を見た創世官に大神官たちは即座に臣下の姿勢を取る。
「セオス様…我らはこのままバフースを目指して良いのですか?」
創世官の質問に対して、ライナス…神セオスは不快げな様子で…
「急げ…あの"忌々しい魔王"の気配が迫っておる…ぐっ」
そう述べたセオスは苦しそうに首を抑える。
「脆弱な身体だ…急げ…我への供物を忘れるな…復活には莫大な…がはぁっ!!」
そしてライナスは力なく倒れたのだった。
大神官たちは互いに顔を見合わせる。
「急げ…全軍バフースに向け出発だ」
創世官の言葉に対して頷いた数名の兵士が神殿の外へと駆け出して行く。
「ふふっ…いよいよですか」
そして楽しそうに笑う使徒シモンの背後には、彼と同じシルエットが10。みんな同じように翼をはためかせているのであった。