「旧友」
「あれ〜…どっかで見たことある気がするんだけどなぁ〜」
ペガサスからケル吉とスネ夫の元に降りた利央は、どこか見覚えのある少女たちを見ながらそう呟く。
一方で絶体絶命のピンチを切り抜けたリアたちであったが、目の前に現れた男によって新たなピンチに陥っていた。
「ど、どうします隊長?これは逃げられませんよぉ〜?」
「分かってるわよ!…」
目の前に闘志むき出しの2人がいるにもかかわらず、それを意にも解さない様子の利央は自らの記憶を掘り起こすようにして目の前にいる見覚えのある2人組みを舐めるように見る。
「いや〜絶対会ったことあると思うんだけどなぁ…ねぇ、君たちどっかで会ったよね?」
「な!?あなた私の事を覚えてないってどうゆうこ…?!ふがぁふが!!」
「なーに言ってるんですか〜隊長ぉ??このお方とは今初めて会ったんじゃないですか〜。危ない所を助けていただきありがとうございますぅ〜」
ハンナは闘志むき出しのリアの口を慌てて塞ぎ、利央に向けて感謝の意を述べた。
「どっかで見た気がするんだけどなぁ…ま、いっか。それで君たち誰よ?こんなところで何してんのさ」
利央は思い出すのを諦めたようで、興味無さげに質問する。
「私たちはですね……そ、そう!王国の冒険者なんです!!薬草の採取のためにこの森に入ったら迷ってしまって…」
「迷ったにしては深くまで来すぎじゃね?そんな軽装備でさ」
「そ、それは…」
言葉に詰まるハンナだったが…
「その薬草が森の深くにしか生えてないのよ、装備は途中で捨てたわ。あな…なにかよくわからない亜人たちに追われたから」
ハンナの高速を振り払い、リアが代わりに答えた。
「…ふーん。まあ、どうでもいいや。そういえば森で冒険者がなんちゃらかんちゃらって報告受けた気もするし…」
利央はケル吉とスネ夫を撫でながら、相変わらず興味無さげに喋る。
それから…
「まあまあ、こいつらの事は許してやってよ。森の中で会う人間なんて基本的に"密入国"してる奴だからさ、普段なら殺しちゃうんだよね。だから君たちも…」
そう言って利央はポンポンと2匹を叩く。
「バウッ!」 「シャアッ!」
2匹は嬉しそうに身体を利央に擦り付ける。
「…悪魔め」
「ん?なんか言った?」
「…なんでもないわ。それで?私たちはもう行っていいかしら?」
リアはハンナの手を掴み、今にもその場から離れようと準備をしている。
だが、利央はそんなリアの言葉を受けて驚きの表情を浮かべた。
「え?!駄目に決まってんじゃん!君らには俺の城まで来てもらわないといけないんだから」
「「えっ?!」」
利央は決して表情に出してはいないが、氷のように冷たい口調で…
「だって、君らが報告にあった冒険者なら…俺の部下を殺したでしょ?!ならば報いを受けるのが当然じゃね?」
笑顔の裏にある言葉の意味を理解したリアたちの表情は強張る。
「い、いや…私たちはその…」
「まあまあ、話は後で聞くからさっ!兎に角…乗れよ」
利央の表情は遂に怒りの色に変わっていた。
そしてリアとハンナは怒れる魔王の指示に従い、魔都に連れて行かれるのであった。