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クズが異世界を通ります  作者: 山崎トシムネ
第6章「クズ VS 神」
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「束の間の休息」

王国南部都市モルガンでの死闘から数ヶ月。一時は瀕死の重傷を負ったドラ男君を始め、ホー君やゴブ一郎。それにアラちゃんといった面々の怪我も癒え、魔王軍一同は平穏な日々を過ごして居た。



「魔王様!ちょっとよろしいですか?」



「今忙しいから後でね〜」



そう言う利央はというと、アラちゃん特製の糸製ハンモックに揺られながら見た目麗しいハーピィという亜人が扇ぐ風を受け、のんびりとしている最中であった。



その姿を見て苦笑いの伝令役の兵士は、それでも続ける。


「で、では一応報告を…北部の森林にて人間の2人組が国境を越えて魔王軍領に侵入。見張りの猿猴2名が負傷し、2人組はその後姿をくらましたようです」



「あいー。どうせ王国か帝国の冒険者でしょ、ほっといても平気よ!…はい、下がって良いよ〜」



「はっ!」


兵士は敬礼をしながら返答し、そのまま部屋から出て行った。




「さてと…今日は何しよっかな〜」



風を発生させる係を務めていたハーピィに軽く手を挙げ、利央はそれまで居た部屋から出る。




「とりあえずみんなの様子でも見に行くか」




今や数えきれない程の亜人たちを抱え、農業や畜産。漁業に狩猟と食事の面も何不自由なく、クーズー城という快適な住まいまで手に入れたが…



この世界、兎に角暇なんだよね。



スマホもゲームも無いし、あるのはオセロもどきみたいなボードゲームくらい。まあ、隣人が明日死ぬかもしれない危険な世界で生きてくのがやっとなんだろうけど…それにしても暇だ。


最早欲しいものは何でも手に入る地位まで上り詰めたんだけど、こればっかりはいつになっても手に入れることはできないっぽいよね。


あーあ、"全クリするまで家から出れまてん"を久し振りにやりてぇな〜。タバコをカートンで買って、カップ麺片手に徹夜で適当なゲームを全クリ目指してゲームやってたの楽しかったな。もう俺が住んでたアパートなんてとっくに片付けられちゃってるんだろうけど。家賃払ってなかったし…



そんな事を考えていた利央だったが、適当に場内を歩いていると、とある部屋の前で声がかかる。



「お!リオ様!!ちょっとよろしいですかな?」


「相変わらず暇そうね」



「どうしたジーバ君、それにシャーリーまで」



クーズー城の一角、主にジーバ君とシャーリーが使うアンデット研究用の部屋から2人が現れた。


ちなみにスケルトンウォリアーが生まれた部屋でもある。



「それがですな…この前私が戦った合成獣とかいう生き物がいましたな?」



「…あー、そんなのもいたね〜」



「本当に覚えてるのかしら?…まあ、その合成獣ってのの死体をジーバさんが持ってきて2人で解剖してたんだけど…」



「え?!解剖?!?!なにさらっと強烈なワードを…」



「いいから聞きなさい!それで解剖の結果なんだけど、凄い?というか不思議な事が分かったのよ」



「んー…それで?」



「何とこの合成獣とやら、心臓らしきものが見当たらないんですぞ」



「なるほどね〜………は?!?!心臓が無かったのあいつ?!」



「そうなのよ、アンデットでもなさそうだし…不思議というか気持ち悪いわ」



この世界にはアンデットと呼ばれる不老不死の存在もいるので、単に心臓が無いと言われても納得できる場合もあるのだが…



「確かに…そういえば人間を襲って食ってたしね。アンデットなら食事なんて必要無いしな…」



「兎に角、我々はもう少し研究を続けて見ますぞ」



「おお、よろしくね2人とも」



こうして2人は研究室の中へと戻って行く。




「生き物なのに心臓が無いって………分からんな。考えるのもめんどくせ」



利央は早々に思考を断念し、そのまま散歩を続け始めた。




しばらく歩くと、クーズー城内にある巨大な修練場から声が響いてくる。



「はっ!…はっ!…まだまだこいっ!!」



「わかりました!!行きますっ!!!」



利央が修練場を覗いてみると、そこには鍛錬中のゴブ一郎とリザロの姿があった。



「おっす!!おつかれ〜」



2人は手を止め、驚きの表情を浮かべながら駆け寄ってくる。



「これはリオ様!!このようなところで見かけるのは久しぶりな気がします」



ゴブ一郎は笑顔で声をかける。その隣でリザロは無言で頭を下げていた。



「そうだね、そういえば訓練とか全くしなくなったからな〜。ゴブ一郎は相変わらずだな、怪我はもういいのか?」



「はい!お陰様ですっかり良くなりました!!ミランダ様にも感謝しています」



「リザロ!ホー君やドラ男君はどんな調子だ?」



「はっ!お陰様であの2人も喧嘩が出来るまで回復した次第であります」




「そうかそうか…良き良き。まことに良きかな。じゃあその調子で鍛錬を続けたまえ!」



「「はっ!」」



利央は非常にご機嫌な様子で修練場を後にする。幹部たちが元気になった事が随分と嬉しかったようである。





「さてと…アラちゃんは服作ったりで忙しいし、ミランダ姐さんはナナと遊んでるし、ミノタウルス君は元王国都市にいるしな〜この後何しようか」



利央は今後の予定で悩む。



「オフォーブル?だっけなそれにソフィー?あの2人とやけに一緒にいるオームのところでも行くか??」


一瞬候補に入れるものの…



「いや、オームだしいいか。それよりも…久しぶりにケル吉やスネ夫と遊ぶか!!森のどっかにいるだろう!…多分」



利央はそう決めたのか、近くにいた兵士に声をかける。



「ちょっと森に行くからさ!ペガサスの用意頼むよ!」



「はっ!!!」


気合いの入った返事をした兵士は大慌てで駆けていく。



「あいつらと会うのも久しぶりだな」



利央はニヤニヤしながら用意されたペガサスに乗り、大空へと駆け出したのだった。

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