「魔人」
「そーねぇ…先ずは私たち、、、というか私の種族である魔人についてかしら。実は魔人という種族は今は私しか居ないのよねぇ〜。そもそも魔人って今の魔王ちゃんの前代の魔王である"サタン"によって創られた存在なのよぉ?」
「サタン?…それが前代の魔王の名前??このクーズー城の前の主人か」
「そうねぇ〜。実はここに来るのも久し振りだったのよ?随分と綺麗になってるみたいだけどね〜」
ミランダはそう言うと、まじまじと室内を見渡す。
「魔王サタン…懐かしい名前ですな。…しかし魔人が魔王に"創られた"存在だったとは驚きですな!あの頃はよく魔人が人間の都市で暴れまわっていましたな〜」
「え?!ジーバ君ってそんな前から生き………死んで(?)たの?!?!」
「そうですぞ!!…まあ、その頃は人間でしたが…」
「あらぁ?あの頃は"王"だったんじゃなかったかしらぁ〜?」
ミランダは意地の悪い顔でジーバ君を見るが、ジーバ君はミランダの言葉には触れずに続ける。
「…まあ、あの頃は魔人と使徒の闘いで一つの街が壊滅なんてことはよくあったものですぞ」
「えーと…その魔人ってのは魔王サタン?の部下みたいなもんなんだよね?、それでなんで使徒と争うのさ」
利央はミランダに問いかける。
「そーねぇ…そもそも魔人は使徒に、、、いいえ、神セオスに対抗する為に生み出されたらしいのよぉ〜。だから本能的?に使徒たちに憎悪を持つらしいのぉ」
「らしいのぉって、姐さんも魔人なんだから分かるんじゃないの?」
「私は"欠陥品"だったからねぇ〜」
「欠陥品?」
「そうなのぉ。私は魔人の中では力も弱く、天使に対しての憎悪の気持ちも持ってなかったのよねぇ〜。だからこそ今でものうのうと生きているのだけれど…」
ミランダの顔はどこか憂げな、物寂しさを感じさせる表情をしていた。
「と、兎に角!神セオスと魔王サタンは対立してたってことでおけ?」
「そうねぇ、対立…というか戦争かしら?ずーっと戦ってたわねぇ。まあ、私たち魔人も戦う理由は知らなかったのだけれどねぇ〜」
「それって…」
「魔王ちゃん、私が知ってるのはこのくらいよ。私たち魔人は魔王サタンによって創られた、言わば戦う為の道具。色々な命令をこなしたけれど、結局道具に対して目的や理由を語る必要なんて無いのよねぇ。だから私が知ってるのは事実だけ。魔王サタン、神セオス、両者の思惑なんかは分からないわ」
「そっか………先輩魔王さんは仲間に対してそんな感じだったんだな…」
ミランダの話を聞いた利央は、寂しそうでもありどこか残念そうな表情を浮かべていた。
「私は今の魔王の方が好きよ?仲間思いでちょっぴり駄目な魔王さまの方がね」
「しゃ、シャーリー………ハグしていい?」
「ば、ばか!調子に乗らないの!そういうことは2人きりの…」
「魔王さまぁ!!我々は今の魔王さまが最高だと思います!!このオーム、一生ついて行きますぞ!」
「そうですな、珍しくオームの意見に賛成ですな」
「まったくです」
盛り上がるオームを見ながらジーバ君とリザロが会話を交わす。そしてシャーリーは…
「………バカ」
そんな一同の様子を見て、嬉しそうに笑うのだった。
「楽しそうねぇ〜………貴方はどう思う?」
盛り上がる部屋の隅っこで、ミランダはソフィーに問いかける。
「…何故私にそのような事を?」
「さあねぇ〜…まあいいわ。のんびりしていってちょうだいねぇ〜」
そう言うとミランダは部屋から出て行く。
「おいソフィー、彼なら大丈夫なんじゃないか?"例の"やつを託すに値する…」
1人になったソフィーの元にフォーブルが駆け寄る。
「いいえ先生。まだ早いです…もう少し様子を見ましょう」
「しかしソフィー!彼らは…あのリッチはどうか分からないが、本当に魔王や神について無知のようであったぞ?」
「それが演技とも限りません。…我々が持つあれは世界すらも覆すような代物、見極めには十分に時間をかける必要があると思います」
「そ、そうだな…もう少し様子を見るか」
フォーブルとソフィーが見つめる先には、楽しそうに部下たちと笑い合っている魔王の姿があったのだった。