「神の意志」
「ちょっ…デカいって!!デカ過ぎだって!!!」
アンドレを拘束していたアラちゃんとミランダによる糸は身体の巨大化に伴って次々に切れていく。
そしてそれまでの翼以外人間と同じであったアンドレの容姿は次第に…
「ふふふ、久しぶりねぇ。あの姿は」
「み、ミランダさん…あの姿に見覚えが?…」
「さあ、どうかしら」
アラちゃんとミランダの会話を他所に使徒アンドレの身体は巨大化すると共に、その肌は燻んだ灰色へと変色していく。
「何あれ………石?」
利央の言葉通りアンドレの皮膚は次第に硬質化し、その表面からは破片が飛んでいるのが分かる。
見る者を魅了する純白の翼すらも次第に変色していく灰色に包まれ、その美しい輝きを失い石へと姿を変えていく。
「まさかこの姿を見せる事になるとはな」
完全に変身を終えたのか、アンドレは先程の3倍以上になった自らの身体を確認しながらそのように呟いた。
「ねえ姐さん!!あれ何よ!」
「さあね〜。見たことあるような無いような…まあ、見た目通り"硬い"んじゃないかしらねぇ?」
相変わらずミランダは情報を伝えようとはしない。
また俺の反応を見て楽しもうとしてるな…
ジーバ君の話ではミランダ姐さんの種族である"魔人"は現在魔王軍最強の戦闘力を誇る (はずの)ナナちゃんを軽く上回るらしい。
まあこの世界では単純に魔力量だけで強さの優劣は決まらないので、あくまで推測ではあるのだが…
兎に角、そんなミランダ姐さんが何故魔王軍に入ったかというと…
「セオス様の意志の執行者たる我ら使徒…その真の力を持って貴様ら人外供を排除するとしよう」
巨大化した身体の違和感を乗り越えたのか、アンドレは利央たちを見据えて力強くそう言い放った。
ミランダ姐さんの話はまた今度だな。
兎に角今はこの化け物みたいな化け物を…
「来ます!!!」
普段は小声でボソボソと話すアラちゃんが大声を上げる。
辺りに仕掛けておいた糸が魔力を感じ取ったのだろう。直後凄まじい風圧が利央たちを襲う。
「ゴブ一郎!!!」
「はっ!!」
利央はとっさに叫ぶ。
すると闇属性魔法で身体を強化したゴブ一郎が、とんでもない速さで飛来して来た石の塊を受け止めるが…
「がはぁっ!!!!」
勢いを受け止めれずゴブ一郎は後ろに吹き飛ばされる。
「翼も石になってんのに!!なんで飛べるんだよっ!!!」
利央目掛けて一直線に飛んで来たアンドレを、利央はミランダのアシスト (利央すら認識していない謎の魔法)もあって間一髪でかわす。
「危なかったわねぇ」
「サンキュー!!姐さん!助かったわ」
目標を失ったアンドレは地面に突っ込み、地面には巨大な穴が空く。
「ひぃー、なんて威力だよ全く…」
「ただの突撃でこの威力…とても厄介です…」
「どうしましょうリオ様!」
「さあて、魔王ちゃんはどうやって使徒を倒すのかしら?…楽しみねぇ」
そして4人の前には人の4倍から5倍はあるだろう巨大な石の体を持つ、神の意志の執行者が立ち塞がるのだった。