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クズが異世界を通ります  作者: 山崎トシムネ
第5章「セオス教」
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「使徒」

「良いのですか?モルガン公?…得体の知れないセオス教国などに助力を求めて」



「…構わん」



「やはり帝国に頼るべきだったのでは?このままだと民たちはセオス教を救世主かの如く崇めてしまいます」



「構わんと言っている!!…見ろ、事実帝国では手も足も出なかった魔王軍を圧倒しているでは無いか」



王国南部都市モルガン。



都市の長である反王家派貴族の筆頭モルガン公の眼下ではセオス教国からの援軍と魔王軍の戦いが繰り広げられている。



そしてセオス教国軍は終始魔王軍を押している。



その矢面に立っているのが…




「使徒…か」



ぼそりと呟いたモルガン公の視線の先には、使徒と呼ばれる教国の秘密兵器。



それはバードマンやホークマン、ハーピィの如く翼の生えた人間である。



しかし、それらの亜人と一線を画すのが翼の美しさである。



まるで神が人間に与えたが如く純白で端正な翼は、物語に出てくる"天使"の様であった。




そして際立っているのがその戦闘力。


全員がかなり高度な光魔法を操り、魔王軍の兵士を溶かすように殺していっている。



更には都市からの魔導砲による砲撃によって、統率の取れていない魔王軍は大混乱に陥っているようだ。




「所詮はこんなもんか!前代の魔王軍はもっと骨のある奴らだったがな」



「おい!しっかりと仕事をこなせ。セオス様は常に見ておられるのだぞ」



使徒達は全く同じに見える大きな翼を持つものの、肌の色や顔。喋り方や性格などに個性があるようでよく互いにコミュニケーションを取っている。



派手な髪型をヘアバンドで纏めた、所謂ドレッドヘアーの使徒は大混乱の魔王軍陣地を見ながら…



「とっとと敵の頭を叩いて終わらすぞ。敵の頭は…あいつらだな」




そして視線の先には、必死に部下を纏めている竜人と空を旋回しているホークマンの姿が映っていた。



「そのようだ…魔力量が他の個体よりも多いな」



「じゃあ俺があっちのトカゲだ!お前は空飛んでる奴な!」



ドレッドヘアーの使徒はそう言い残すと、颯爽と飛んで行ってしまう。



「おい!待て!!確実に我らで…まあ、いいだろう」



残された方の、厳格な雰囲気を醸し出している壮年の男性風な使徒は空を旋回しながら都市の魔導砲撃を掻き乱しているホークマンに狙いを付ける。




そして翼を羽ばたかせ、物凄いスピードで一直線に飛び立つ。







「お前が人外共を率いているのだな」




「?!」



自身が出せる最高の速度で都市上空を旋回していたホー君だったが、すぐ後ろから聞きなれぬ声がしたことに違和感を感じ、すぐに止まる。




「なんだお前は?!その翼…お前が天使とやらか?」



「人外にしてはよく知っているな。そうだ、我々は使徒。神セオスに使える"12使徒"である」



「12使徒?…お前らは12人いるって事か?」


「ふっ、お前がそれを知る必要は無い。…ここで死ぬからな」



「!?」




無詠唱で繰り出された光の槍を、ホー君は己の直感だけで避ける。



「ほう?これを避けるか」



「いきなりやりやがったなテメェ!…ちっ!」



その後も連発される光の槍をホー君はほぼ垂直に滑空することでかわしていく。




「ほらほら、少しは反撃してみろ!鳥もどきが!」



「くっ…俺を…鳥と呼ぶなぁああああ!!」




ホー君の種族であるホークマンは人間の体に猛禽類の翼が生えた種族である。


それ故に翼以外は普通の人間であり、種族的な特徴は翼のみである。


なので他の幹部と違い、これと言った攻撃手段を持たない種族なのである。




…しかし、それは種族としての話であり



「おらぁ!!闇球!!!!!」



「?!」



ホー君は己の中にある魔力のうち、かなりの量を用いて闇属性魔法を放った。



それは使徒の虚をついた形になり…




「がぁぁぁあああああ!!!!!!!!」




闇の球が直撃した壮年の使徒はもがき苦しむ。



「ふんっ!お前も鳥みたいなもんだろうが!!」




「はあ…はあ…貴様。今の魔法は…かの魔王の」



「ふん!幹部は皆魔王様の寵愛を受けているのだ!!そのお陰で魔王様の最強の魔法を使うことができるのだ!!」



壮年の使徒はそれまでの余裕があった態度から一変してホー君を睨みつける。




「はあ…はあ…。神の寵愛を受けし我々が、貴様らのような人外の魔法で…くそっ!許さん!許さんぞぉ!!!」




そして使徒は両手を天に突き上げ、巨大な魔力の塊を生み出す。



「あ、あれは…昔魔王様が同じような…」




「ふっふっふ。消し飛べ!!化け物共がぁああ!!!」





常に光を放つ巨大な魔力の塊は、都市の上空で眩い閃光と共に弾けたのだった。

















「へっ!こんなもんか?隊長格なんだろ?お前」




「くっ…私の鱗を貫くとは…」




突然現れたドレッドヘアーの使徒を相手にしていたドラ男は、隔絶した実力差に手も足も出ずにやられていた。




「まあ、殺しはしないでやる。お前は伝令役だ…魔王へのな。んんっ…我々に降りた"啓示"が近いうちに実行される。神の復活と共にお前たち人外を排除する。精々準備してろ…とな」




「…貴様!!!」



ドラ男は槍を投げつけるが…



「おい!伝令役つったろ?…しょうがねぇな。死なない程度に…」




「!!がはぁあ!!!!」




ドラ男は肩を光魔法によって貫かれ、意識を失った。




「おい!そこの虎!とっととそいつを連れて行け」



「くっ…ドラ男様…」




白虎は悔しそうに使徒を睨みつけるも、足早にドラ男を抱えて戦線から離脱する。








「さて…今度はどんな強者と戦えるかな?」




ドレッドヘアーの使徒は敗走していく魔王軍を見ながら、笑顔を浮かべていたのだった。

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