むりやり喚ばれて、冒険者になったJK達。その9。
悪魔ベルトーグは魔族としてはかなりの実力者である。
魔界での階級争いに於いても、その地位を譲った事が無かった。
だが、そんな魔界での暮らしに飽きていたベルトーグは、自分の力を見せ付けるように、度々地上に降りては自由気ままに生きてきた。
西に行っては人を殺し、東に行っては魔物を殺し。
南に行っては妖精を殺し、北に行っては天使を殺す。
または、同族の悪魔ですら、殺しの対象としていたのだ。
だが、ある時、完膚なきまでに叩きのめされる。
それが【偉大なる魔術師・バレンシア】その人だった。
彼女の魔法には全く以て歯が立たなかったのだ。
しかも、彼女はベルトーグを殺さなかった。
その為ベルトーグは、復活しては、その都度、何度も何度も彼女に挑んだ。
何を以てしても勝てない、傷つけられない、殺せない…
やがてベルトーグは、自分の不甲斐なさを痛感し、引き籠るようになってしまった。
だが、ある時。運命的な出逢いをする。
「俺と共に来い。ならば力を授けよう」
独り、引き籠っていた廃墟に突然現れたその者は、全身から、周りの大気が歪む程の強烈な魔力を放っていた。
【悪魔・グランヴィア】。
目の当たりにするだけで、指先ひとつ動かせない程の絶対なる存在。
真に仕える者を見出だした彼女は。
あの魔術師への恨みつらみすら忘れさせていたのだった。
ただひたすらに続いていた迷路を、一度だけ通り過ぎた確かな記憶に従い。
カナミは、ヒナとトールを引き連れ、個人的には全速力で駆け抜けてゆく。
竜と戦っていた迷宮の中の広場では、辺り構わず破壊・吸収をし続ける悪魔ベルトーグ。
その巨大化してゆく『竜のような塊』を相手にするには余りにも分が悪いと即座に判断したのだ。
地上に出て、広範囲の戦場を確保し、僅かな勝率を確かなものにする為であろうか。
などと、他の2人も推測はしていたが。
元来、カナミは他の誰よりも頭脳明晰と自負しているものの、体力的には誰よりも劣ると自負している。
現代世界でも幼少の頃から、その運動音痴を理由に苛められた事があり、その度、ヒナやトールに助けられてきたのだ。
なので、特に…
不覚にも?【魔術師・バレンシア】に召喚されてしまったこの異世界では。
皆の負担に成らぬように精一杯どころか、それ以上に確実に成果を出せるように。
常日頃から、頭脳をフル回転させているつもりなのだ。
「さぁ、さぁ、さぁ!! どういたしましたの!? かかってきてごらんなさいなぁ!?」
悪魔ベルトーグは、自らが支配した竜の頭頂部辺りにて。
自身の上半身だけさらけ出し、恍惚の表情を浮かべている。
「ったく……。好き勝手に暴れてくれてッ!!」
悪態をつくヒナが奮い立ち、携えていた弓を構え相対しようとする。
「こんな不条理な現場でやり合おうったって、分が悪過ぎるのよ~!」
カナミはこんな時、やはりヒナは無駄に武勇が過ぎる事に嘆きつつも彼女を諫める。
「とはいえ、奴に勝てる算段はあるのか?」
例えどんな状況に於いても冷静沈着……いや、寧ろ。
何も考えていないのではないかと畏怖すら覚えてしまう。
彼女、トールは剣を構えつつも冷や汗ひとつ掻いていない。
最早、立派なこの異世界の武人だ。
「えっとね~。とりあえず地上に出ること!んで、出れたら勝率アップかな~?」
「その心は?」
「……。見てのお楽しみかな~?」
不安しかない気がする。
が、乗ってみるのも一興か?
「逃げ惑うのが、貴女達の戦略なのかしらぁ? ほら、ほら、ほらぁ! もっとワタクシを…悦ばせてくださいなぁッ!!」
辺り構わず洞窟を破壊しながら、または、その瓦礫を更に取り込み巨大化するという能力にて。
ヒナ達、3人を執拗に追い続ける悪魔ベルトーグ。
に、対して最早、3人は防戦一方であった。
時折、ベルトーグによる洞窟自体への破壊活動により、剥がれ落ちてきた瓦礫や衝撃の余波などのせいで、自分達3人も、そこかしこにダメージを受けている。
一応、狂った精霊や竜との戦闘でも活躍していた。
『防護壁』の御札が残ってはいるのだが、もう残すところ1枚程度。
「……。お風呂に入りたいッ!」
「……。飯だ、な。」
「……。ネットしたいよ~」
などとブツブツ文句を言いながら疾走しつつ、その視線の先には、ようやく、地上からの『希望の光』が射し込まれていた。