漕ぎ出そう。新たな未来へ、突き進め! その4。
短めです。
(´。・д人)゛
沈痛な面持ちで、だが睨み合う。
どうやら互いに牽制しているようであった。
複数のモニターが円陣を組み、映し出されていた各国の代表者はこの状況を打破すべく集められていたのだ。
一際目立つ大きなスクリーンは中央に鎮座しており、被害状況をこれでもかと見せ付ける。
一同は皆、それぞれに口をつぐみ、または呻き声をあげていた。
全世界に於いて突如現れた異形は侵食を開始し、目につくもの皆、あっという間に食らい尽くしていったのである。
目を背けるような惨劇を映し出すスクリーンを余所に、誰かがポツリと呟いた。
「……うちには関係ないことだ」
「なんだと? 貴様は分かっていない! アレは何れ全てを飲み干すんだぞ!?」
「というか、果たして現実なのかね? 証明出来るのかね?」
「まったくだ。 何かの加工映像では? 最近のCGは良くできておるからなぁ」
「どうせ某国の仕業ではないのか? くだらぬよ、こんなことは」
「しかし! 実際に我が国は被害を被っておるのだ!!」
モニター越しに激しく叩きつれられた拳は机を弾く。
どうやら、絶賛蹂躙中らしく憤りは甚だしくも、やがて両手で顔面を覆いつくしてしまった。
吐き出された溜め息には、最早どうしようもない現状と己の立場の不甲斐なさが混じる。
「それは我が国も同じである。同志よ、落ち着きたまえ」
僅かばかりの情けを掛ける。
だがそれは表情から察するに真実であったのだろう。
他国の総統閣下は未だ尚沈痛な面持ちで両肩を震わせるその者を宥めるのだ。
果たして真実は如何に。
中央の巨大スクリーンに映し出されている信じがたい光景を眺め、各国の代表者達は意見を酌み交わす。
── 突如 ──
雑音は鳴り響き、画面の端々から奇妙な線がちらつき始めた。
ザアザアと揺らめく現象。
歪な映像に浸食されゆく。
ぶしゅん ──
一瞬の閃きを伴い、暗転。
そして直ぐ様、画面は切り替わる。
それはまるで放送時間が終わりを告げたテレビ映像のようであった。
ピーと鳴るわけでもなく、唯ひたすらに砂嵐が映し出される。
恐怖心を煽るような音が流れ、食い入るようにして。
だが決して見てはいけないのだと試みるが好奇心に勝るモノはなかった。
各国の代表者達は息を呑み、成り行きを見守る。
ほどなくして、パッと映像は切り替わった。
そこに「井戸」は無かった。
ホッとする面々。 俺も。
「あー……テステス。マイクテス……ん"ん"っん"!」
口許で煙草を燻らせる金髪の似合う、今で言うところのチャラそうな男。
短めに整えられた顎髭を指でなぞりながら、彼は爽やかに微笑む。
「見えてますかぁ? 見えてたら、はい。右手をあげて!」
思わず反応してしまい、皆は手をあげてしまう。
意識が彼に集中されている証拠である。
「ん、宜しい。さてさて~、質問は受け付けません! ですがぁ、選択の余地はあります♪」
煙草を口に咥えたまま、小気味良くダブルクリック。
スクリーンの最下部辺りに分割され表示されていたのは、相変わらずの惨状だった。
「ま、これはマジの話だわな。で……だ」
いかにも軽そうな声であったので意見を発しようかと思ったが、次なる映像を観た一同は言葉を失ってしまう。
じいっと見据えられていたのは自分達であった。
止めどなく、全身の穴という穴から吹き零れる汗。
激しく鼓動は高鳴るも、息をすることすら出来なかった。
絶対的なチカラ。
圧倒的な存在感。
現実に決して居ない生き物。
澄み渡る瞳の奥から漂う狂気。
見つめられるだけで胸が苦しくなる。
真紅の翼は艶かしく輝き。
頭部に聳え立つ物々しい双角。
宛ら、それは猛牛を彷彿させていた。
皆が知っていた訳ではないだろうに。
「悪魔」だと本能が告げていたのだ。
皆の止まらぬ身震いをサラリと無視して、進行役の彼は灰皿へと指を叩く。
「ふー……。 お分かりいただけただろうか。ヤツこそが全ての元凶であり、あんたがたの敵だ」
傍に置いてあった炭酸を口に馴染ませ、男は言う。
「居場所は流してやる。あとは自由にしろ。俺を楽しませてくれりゃあそれでいい。あと ── 」
付け加えて、男は顔を酷く歪ませる。
「日ノ本には手を出すな」と。
戦闘シーン、早く描きたいなあ。
(  ̄- ̄)
次回は2月7日辺りの予定です。




