漕ぎ出そう。新たな未来へ、突き進め! その3。
( ゜∀゜)ノ
かなり茶番かも?
荘厳華麗な門構え。
いや、映え聳え立つは巨大な門。
さて中を潜り抜け見回してみよう。
様々な商店は軒を連ね、賑わう様は繁盛していれば。
多種多様な人種は闊歩し、それぞれに夕刻を嗜んでいた。
日本にして朝方、時差は8時間ほど。
影の延び具合から察するに夕映えが冴え渡る。
国を象徴する広告塔が更に赤く染まっていった。
文字通り搭なのだが。
昨今、日本人が根付き文化が拡がりを魅せる国。
フランスの首都パリの象徴的な名所となっている塔である。
パリ7区、シャン・ド・マルス公園の北西に位置するシンボルは尚も観光客の胸を締め付け、心に一片の感動を与えるのだ。
美しくも当たり前。
そんな日常は一瞬にして終わりを告げた ──
エッフェル塔の上空に顕現せしめす唸りは次第に暗雲と化し、漆黒のごとき鎌首がずるりと最上部に巻き付く。
奈落を帯びた雄大な巨躯、そして辺りを闇で埋め尽くさんと開かれた大きな翼。
尻尾はびしりと貼り付きエッフェル搭の各所は損害を顕にしていたようであった。
額から伸びるは真夜中の珊瑚か。
数本の尖角は黒々と輝き、全土を見渡す ── 漆黒の竜『黒帝』。
彼はその有り様にうんざりし溜め息を溢していた。
「んむむむ……ここではない。あまりにも温る過ぎる……」
まだ尚召喚される異形の者達を全く気にせず見向きもせず。
地上の住人達を吹き飛ばすほど翼を激しく羽ばたかせるのだ。
強風に薙ぎ飛ばされ一部の施設は跡形もなく、一瞬にして膨大な数の死傷者が余儀なくされる。
悲鳴は鳴り響き、押し寄せる異形が更に彼らに襲い掛かった。
「ふん。勝手にするがよい。さて……何処ぞに我を満たす者がおろうや……」
エッフェル塔をあとにして空高くに舞う『黒帝』。
やがて彼は何かを見つけ眼光は鋭く狂喜を宿す。
その視線の先には ── 夥しい数の戦艦が陳列されていたのだ。
フランス海軍。
パリは燃えているか。
いざ、暗闇が偲び寄る。
「くはははは! 良いぞ、良いぞ! さぁ、我を満足させてみよ!!」
闇は欲する。
終わりのない闘いを。
血で血を洗う戦争を。
.:*゜..:。:. .:*゜:.。:. .:*゜..:。:. .:*゜:.。:.
「Quel enfer……」
「Ca m'etonne!」
「C'est incroyable……!?」
「Pas vraiment !」
「Mon dieu !!」
※以下、訳します。
駐屯していた軍隊は、一際高い展望台に配属された兵士が騒ぎだし、やがて恐怖心は伝播する。
けたたましいサイレンが鳴り響く ──
訓練に励んでいた海軍兵達は遥か彼方からやってくる漆黒の脅威に怯えつつも各部署へと向かっていった。
「何なんだ……あれは!?」
「分かりません、総長……。ですが今入った情報によりますと……ウソ……!?」
「どうした!? 報告せよ!!」
参謀と思わしき兵士はモニターに映し出された衝撃の光景を目の当たりにして口を閉ざしてしまう。
衛星放送だろうか。
大陸全域に渡り、謎の怪物達によって侵食される様を目視しながら。
果たしてこれは現実なのだろうかと訝しむのだ。
横入りして参謀を退かせる。
チョロ髭が微かに似合う彼は、太過ぎる片眉だけを吊り上げるのだ。
「何だ……これは、いったい……!?」
「分かりません……ですが、国家の危機には違いありません!!」
夥しい数の機器に携えられたレシーバーのひとつを手にした総長とやらは勢いも甚だしく通達する。
「全軍に告ぐ!! アレを仕留めよ!!」
対し、慌てた素振りの参謀が眼をかっと見開き驚愕して諫めようと試みたのだが。
「総長? 宜しいのですか!? 大統領の指示を仰がないので!?」
「言っている場合か!! 非常事態であるぞ!!」
その表情は険しく、覚悟を決めたようであった。
統合参謀総長 ──。
軍事における最高権力者。
彼はバッジが縫い付けられた帽子を深々と被り直し、モニター越しに大空を悠々と泳ぐ漆黒の竜 ── 『黒帝』へと厳しい眼光を向ける。
その場を参謀に託し、あとにした彼は即座に直属の部下を数人呼びつける。
そして大型の自動式昇降機に彼等を付き添えて乗り、遥か天井は展望台へと向かったのだ。
刻僅かにして辿り着き、待機していた軍用ヘリコプターから操縦士が身を乗り出して慌てふためく。
片手にした分厚い双眼鏡を握る掌にはじっとりと汗が滲んでいた。
「総長! アレはいったい何なんでしょうか!?」
「狼狽えるでない!! ヤツは今どの辺りにいる!?」
「はっ……。十二時の方向、距離にして三千……二千……ッ!?」
高性能の双眼鏡を覗き込んでいた操縦士、且つ兵士はその余りにも凄まじい飛行速度に驚き、やがて放たれた漆黒の球体を観て言葉を失う。
刹那、数体の艦は暗闇に呑み込まれ消失してしまった。
『黒帝』の吐息にも等しい重力球。
それはたった1発にして。
一瞬にして軍の財産ともいうべき艦艇を消し去ったのであった。
乗り込んでいた兵士の叫び声など一切伴わずに。
「……なんということだ……」
額から溢れる汗はその惨状を物語り、膝から崩れ落ちそうになるを必死に抑えこむ。
血が滲むほど握られた拳。
総長は酷く唇を噛み締める。
「貸せッ!!」
付き添いの部下の着衣に備え付けられたレシーバーを強引に奪い、総長は猛々しく吼えるのだ。
「全軍!! あの化け物を叩きのめせッ!!」
「「「 Yesser !!」」」
各艦隊に常備された砲塔は一斉に照準を定め、天を切り裂くほどの轟音が鳴り響いた。
先程の『黒帝』の吐息には劣るであろう。
だが数が違う。
瞬時に放たれた号砲は辺り一面に焦げ臭さを巻き上げ、派手な爆発音が手応えを感じさせたのである。
各々は互いに手を取り合い、または拳と拳を合わせて歓喜に身を寄せていたようであった。
「化け物め……ざまあみろ!!」
トップとしては相応しくない台詞を吐き頻りに腰を降り、昨今の若者のようにガッツポーズをとる総長。
しかし酔うにはまだ早かった ──
燻る爆煙が晴れるや否や、けろりとした態度で。
だが僅かながらに負傷した『黒帝』は満足そうに微笑んでいたのだ。
「ば……バカな……。第2陣!! 撃えッ!!」
「「「 Yesser !!」」」
以前にもまして、皆は鼓舞する。
解き放たれる砲弾はまたしても見事に『黒帝』の巨駆に命中した。
全弾命中といっても過言ではない。
轟音が鼓膜を突き破るほど鳴り響いた。
皆は一様にして息を呑み、成り行きを見守る ──
それは全く通じない言語ではあったのだが、彼等地球人でも理解出来た。
「くわははははははははは!! 愚かなり!! だが見事よ!!」
着弾したのは間違いなかった。
身体中から血を滲ませながら『黒帝』は笑いを堪えきれず、遥か眼下の軍隊を誉め称えていたのであった。
『黒帝』にとっては痛みこそが全て。
そしてそれを屈伏することが生き甲斐なのだ。
有り体に言えばドMか?
はたまたドSか。
彼は大きく……大きく息を吸う ──
次の瞬間。
─── 全ては闇に呑み込まれた ───
この作品はあくまでもフィクションです。
実際の某国とは全く関係ありません。
↑
当たり前だ(笑)
次回は2月3日辺りの予定です。




