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ドラゴンNO涙  作者: caem
第4章・暴れだす。幕を引き裂き、さぁ、開演だ。
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抗えば。抗うほどに、螺じ曲がる。その22。

今章ラストでございます。




 今や天界を支える主柱の如く、その巨体は雄々しく(そび)え立つ。


 背中に生やした真紅の翼は鋭く尖り、数多の天使の返り血を浴びて、より一層に艶かしい。 

 だが額から夥しいまでに流血を伴い、疲労も濃く。

 折れてしまった角をひとつ握り締めては、絶え間なく押し寄せる激痛に、その身を大きく揺さぶられていた。


 『無道』の悪魔・太郎。

 進化を遂げた彼は心底苦しそうにして目前の大天使を睨み付ける。

 

「……はあッ……はあッ……。 どうした!! 貴様(うぬ)の力はそんなモノか!?」


 嬉々として立ちはだかるは、同じく満身創痍の大天使、いや超巨大天使グレゴール。

 肩で大きく息を切らしながら、だが決して闘志は萎えず、尚も膨れ上がってゆくのだ。

 翼の折れた大天使(アークエンジェル)は太郎に向かってゆく。


  ─── 見渡せば死屍累々。


 他の大天使達も軒並み翼をへし折られ、またはボロ雑巾のように雑に投げ棄てられていた。


「……はぁ……はぁ……はぁ……っ」


 その代償は、酷く今の太郎の現状をよく表していた。

 3人の大天使達の猛攻をその身一つで耐え凌ぎ、況してやふたりを撃退したのは流石ではあるものの。

 進化を遂げた太郎ですら、目前の巨大天使グレゴールには苦戦する一方であったのだ。


「ぬあああッ!! 浄化の拳撃ッ(ピュリファイ・ナックル)!!」


 聖なる光を宿した拳が太郎のボディーへと叩き込まれる。

 巨大化し過ぎたせいで動きが緩慢になってしまい。

 太郎は、突き刺さった衝撃に思わず口許から血溜まりを溢す。


「うぼおおおうっ!!」


まだまだあああ(ペネトレーション)ッ!!」


 拳から放射され続ける光は留まることを知らず。

 太郎の身体を内部から粛正(ハカイ)してゆく。

 一切遠慮のない全身全霊の技が()の者を滅さんとしていた。


 割れんばかりにぎりぎりと奥歯を噛み締めて、必死に耐え抜こうとする。

 やがて、太郎はグレゴールの猛攻を見事耐え抜き、次は自分の番だと技を繰り出す。


「デッビーーール!!」


 イチイチ叫ばないと出せないのか?

 私としては、出来れば遠慮して頂きたい。

 『なろう。』の神、運営さまに楯突く気は毛頭ありませんので。


 ともあれ、『無道』の悪魔・太郎はすかさず。

 己が身に添えられた大天使グレゴールのその拳を両手で掴み握り締め、覚えたばかりの技を放つ。


 『デビルアロー』。

 折れた角を頼りにしながら。

 大気を歪めるほど鮮烈な明かりが迸り、焔の如く揺らめく電撃が大天使グレゴールへと注がれる。


「ぐわあああああッ!?」


 グレゴールは体躯を焦げ()ぜ、その身の内を駆け巡る電撃に喚き散らかす。

 口許から漏れる白煙。

 脳髄が焼ききれてしまうほどの衝撃に、そして視線も朧気に宙を舞う。

 定まらぬ意識に、それでも感極まり。

 目前の悪魔に対して敬意を評していた。


「 ─── やるではないか……効いたぞ……」


 好敵手と認めた彼、『無道』の悪魔を讃え。

 グレゴールは今までにない感触に浸り、求めていたのは正しくこれだと爛々と瞳を輝かせていた。


 だが ── しかし。


 そんな熱い(おとこ)達の闘いを余所に、圧倒的な存在感を感じてしまい。

 ふたりは思わず息を飲み、ゆっくりと後ろへと眼を配る。



「やれやれ……。『覚醒』してもその程度か……」


 その身は小柄ながらも、純粋無垢にして絶対的存在感。

 漆黒を身に纏った悪魔。

 闘いに身を投じていたふたりは無言で振り向き、声の主を追う。


 唯一無二にして最強を謳う者。

 『暴虐』の悪魔・グランヴィア。

 歩を進める度に、大気は歪みを帯び空間を(ねじ)曲げる。


 足許の雲海は彼が歩むと同時に漆黒に染まり、横たわっていた残骸(エンジェル)は悲鳴など発せず。

 やがて塵芥と成り、霧散してゆく。


「 ─── グランヴィア様 ─── 」


 グレゴールは尊敬の念を送りつつも、恐怖心が勝ってしまい、かつての大天使長を怯えた目付きで捉えた。


「ふん。貴様に様付け(・・・)される(いわ)れは無い」


 対する『暴虐』は一度たりとも目を合わせず。

 まるで路傍の石ころであるかのように、一際目立つ体躯のグレゴールをサラリと無視した。


「時は一刻を要する。『無道』よ、そこを退()け」


 向けられた迫力に思わず道を譲る『無道』の悪魔・太郎。

 決して相手にしてはならないのだと、全細胞が告げていた。

 太郎は無言でグランヴィアの往く据えを見守る。


「……くっ!! ここから先へは行かせんッ!!」


 立ちはだかるは超巨大天使。

 グレゴールはこれでもかと両腕を拡げ、動かざること山の如し。

 だが、それは意味の無いことであった。


 「退()け」


 たった一言。

 瞬時に添えられた拳は物語る。

 唯一点。

 (すべ)てをそこに置いてきたと ─── 。


 「 ─── っっツ!?」


 全身を(つんざ)くらう衝撃が脳髄まで響き渡り、無機質な塊と化した大天使(グレゴール)

 稲妻に打たれた ── そう現してもいいかも知れない。


 彼は立ったままにして、意識を失っていたのであった。


(ぬる)い。だからここ(・・)は好かんのだ……」


 ポツリと呟かれた悪態からはどうやら、次の舞台(セカンド・ステージ)を求めているようだった。

 瞳の奥に真の野望を灯し、一瞬ではあるが双眸を伏せるグランヴィア。


 尚も開かれた瞳の彼方に拡がりゆく暗黒の輝きが映り、彼は一際邪悪に口角を歪ませる。


 それはまさしく不敵な笑みであった。



「 ── さあ。終焉の時は来た ──」



 天を仰ぎ讃え、大きく開かれた両腕(かいな)はまるで慈しみに溢れ。

 ひとしおの歓喜に浸るもやがて、目前の御殿。

 『神宮』へと凡ては注がれる。



「神よ。お前はもう、用済みだ ─── 」



 その時。

 天界に鳴り響く鐘は終わりを告げ盛大に割れる。


 闇はその成りを全て現し、奈落の影が行き先を求めて一斉に集い始めた。

 異世界大陸ファンタジスタの各地方を脅かす『虚無』は荒れ狂い、その一点 ── 暗黒の輝きへと収束されてゆく。





 ──────





 その時。

 全てが消滅した。




もうちょい話を入れようか迷っていましたが……。

次章は最終章に繋げます。


舞台は現代へと移ります。

次回は1月15日辺りの予定です。

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