抗えば。抗うほどに、螺じ曲がる。その15。
遅くなりましたッ
(;>_<;)
相変わらずの異世回、もとい異世界です。
極力短めに纏めていましては、数話、続きます。
エロ・グロは無いものの……ギリギリかなぁ。
運営さんに消されないことを祈る!!
「 ── さて。現状を省みましょうか……問題は山積みなのですよ?」
浮かれる女子高生3人組を目の前にして。
見た目は年下だが何百年の時を過ごしてきた幼女。
変態教授の敬虔なる助手・ロデムは斜に構えつつ険しい表情で壇上に立っている。
ゆるめでだぼつく白衣が自然と似合うのが解せない。
何時の間にやら手にしていた指揮棒紛いの長めの定規を掌で数回しならせ叩き、教師染みた態度でその場に揃う皆を偉そうに見下ろすのだ。
掛けてもいないのに、眼鏡をクイと揚げる素振りで、これまた何時の間にやら用意されていた黒板に白いチョークらしき媒体でカツカツと文字を列ねてゆく。
上の方までは届かないのか、小さめの椅子を足元にしながら。
チラホラと、白い粉は細雪のように舞い落ちるのだが、全く気にも止めず。
やがて、箇条書きにされた各々をピシリと指揮棒で順番に指し抑え、更に各々について、一から十まで、赤子にも分かるように説明しだすのだ。
まるで、『今でしょ!』と謂わんばかりに振り向く。
── 先ず最初に。
はい、ここ試験に出ますよと謂わんばかりに。
コンコンと指揮棒で指し示されるは、最早、ひとつ目玉の怪物改め。
『バグベアード』のイラストが黒板に、それぞれの特徴を良く捉えては描かれていた。
毛むくじゃらの暗闇に、気持ちの悪いひとつ目玉が凶悪に浮かび上がる。
その美的センスには類いまれなる才能をそこはかとなく感じさせた。
ロデムは厳しい目付きで、バベル教授から得た情報を元に対策と傾向を練る。
そして、改めて皆に告げるのだ。
偉そうに、解説を続ける。
「良いですか? 先ずは」
続いて、彼女は退屈そうに欠伸をしようとした生徒にピシリと指揮棒を突き付け緊迫感を告げる。
思わず反応は姿勢をただす。
「教授。貴方から頂いた情報なので今更くだらないのかもしれませんが、しっかり話を聞いてください」
「ふぁ……あい。すみませんでした」
「では、もう一度。話を続けます」
指揮棒を再び胸元へと引き寄せ、してやったりと御満悦な助手。
こほんと軽く咳をして話を元に戻す。
龍角散を飲みなさい。
「この『バグベアード』なる怪物。奴は凶悪なダークエルフによって作られた。この点は間違いないですね?」
同じくしてその会議に参加している、背筋を伸ばし凛とした態度で席に座る生徒。
魔術師バレンシアは恭しく頷く。
「はい。十中八九、間違いないでしょう。爆散した女性のダークエルフから産まれたと推測されます」
聞くだに恐ろしい。 身の毛がよだつ。
当時を思いだし、震える肩を寄せ合う女子高生、そんな彼女達3人を余所に。
しかし、冷静に聞いていた教授はふと何かを思い出したのか独り言のように発言する。
「ふむふむ。多分それは呪いの術式ですな。確か……そうそう」
席をはずし、神々しいまでに敷き詰められた本棚へと手を伸ばすバベル教授。
やがて彼は、美しく整理された本棚から1冊を手に取る。
『人を呪う千の方法』。
著、バビロ○ア=バ○ル。
「……字が霞んで読めませんな~……」
まさか、自分が書いた方法を実践されるとは。
そして、本人ですら、誰知らずとして世に出回っていたとは。
内心冷や汗を掻きつつも、惚けた顔をして、再び本棚へと優しく仕舞い込む。
そんな教授を察するも、いつものことだと呆れる助手は溜め息をつく。
いつまでも話が進まないので、魔術師バレンシアは挙手して、ずうっと気になっていた存在を伺う。
「 ── で。ですね……此方の方々は……?」
バレンシアは、明らかにこの異世界大陸ファンタジスタに不似合いな者達を掌で訊ねた。
背格好からして少年らしいその者は、左目を長髪で隠し、田舎暮らしの和のテイストを彷彿させる下駄と縞模様のちゃんちゃんこを着用していた。
「あ、気にしないでください。僕たちはあくまで興味深くてついてきただけですから」
敢えて、自分達は唯の観客であると主張する少年。
更には、灰色のスーツを着込んだ出っ歯の目立つ、ちょび髭の中年男性がバベル教授の様々な研究材料を手に取り、誰にも気付かれないように懐に仕舞おうとしていた。
しかし其れはやがて、大きな朱色の、猫を想わせる可愛らしいリボンを着けた少女に見付かってしまう。
「よけいなマネすんじゃあにゃいよッ!!」
彼の顔面は鋭く尖った爪先で縦掻き横掻き斜め掻きと、惨たらしく引き裂かれていた。
「みぎゃあああああッ!!」
これは、あくまでも被害者である男性の悲鳴である。
「ふむ。よもや、このような世界があったとはのう! しかも、奴さんまでおるとは……」
眠気が覚めるような、一際甲高い声が何処からか聞こえたので気になり、一同は忙しなく発生源を探す。
やがて、少年のさらさらの頭髪の中から、目玉がぴょこりと飛び出した。
「「「 うぅわッ!! 」」」
面食らい、気色悪さを隠せず、座っていた椅子ごと大きく飛びずさる女子高生たち。
特にヒナは酷く怯えてはトールに決して離すまいとしがみついていた。
カナミはというと、目にした目玉に手足が生えていたことに気持ち悪さを覚えつつも、どこか興味深そうにしている。
何故ならば、カナミは自分の部屋に良く似た部類のフィギュアを飾っているからだった。
「ありゃ。驚かせてしまったかのう。これは失敬、失敬」
「父さん。どうやらこちらの世界では僕たちはかなり異質な存在みたいです」
「そうね。あまり干渉しにゃいほうが良いかも……」
「いやいや! 待てよ待てよ! 宝の山だぜ、こいつぁ……て。痛てて!!」
またもや、懐に教授の私物を仕舞おうとした鼠を想わせる中年男性は、ちょび髭をきつく引っ張られたので、仕方なくその得物を机の上へと置き返した。
教授は意外にもその様子を見て怒らない。
寧ろ、自分の開発した物が認められたことに対して、口許に綻びを偲ばせ喜んでいたぐらいだった。
「じゃがのう。奴さんがこちらの世界でも同じように恐ろしい異能を秘めておるとすれば……かなり厄介なのじゃが……」
妙に年老いた口振りで、器用に瞼を閉じながら目玉の妖怪は渋る。
そんな彼を肩に載せたまま、息子である少年も気難しそうに腕を組み、激しく頷き賛同していた。
「どうすれば良いでしょうか……」
真剣な眼差しを向け、バレンシアは彼等に乞う。
未だ、疲労の色は濃く、僅かに痩せ痩けた頬と燻んだ肌艶が酷く痛々しい。
残念すぎる美人は、まるで天から吊るされた1本の糸を必死に掴むかのように、彼等に助けを乞うのだ。
神妙な面持ちで再び面を挙げた彼は、致し方無いとばかりに微かに溜め息を漏らし、息子である少年にそうっと耳打ちをした。
「えっ! 父さん……いいんですか?」
「うむ。これもなにかの縁じゃろう。あれを渡しておやりなさい」
息子はやや考えて動きを止めるも、頷き、上着の中から何かを取りだし目の前で沈痛な面持ちで答えを待つ彼女に差し出された。
魔術師バレンシアの掌に優しく置かれた其れは。
何てことの無い、極めて質素な手鏡だった。
すみません。
次回もこんな感じで続いてしまいます(爆)
11月29日は水曜日辺りの予定です。
いつも、ありがとうございますッ!!




