抗えば。抗うほどに、螺じ曲がる。その13。
ちょいカオス?回です。
恐る恐るあげます……
異世回。もとい、異世界。
かなり茶番ですが、お楽しみください……
( ノ;_ _)ノ
取り急ぎ、揃え並べられた様々な拷問器具はその輝きを以て狂喜乱舞する。
長机の上には今か今かと調理を待つ新鮮な魚……などではなく。
彫像と化したトールは今やバビロニア=バベル教授の格好の餌食となっていた。
決して彼女を助ける風には見えないが、これが彼の戦闘スタイルであり、治療行為なのだ。
なので、衝撃の光景を目の当たりにして途中で中断させられてしまう可能性を避け、御友人ふたりと魔術師バレンシアには退席して頂き別室にて休ませている。
とどのつまり、実験室から追い出したのだが。
「さぁて……何れから試しましょうかねぇ……ふほほほっ」
「教授……涎がしこたま垂れていますよ」
付き添う助手ロデムが甲斐甲斐しくその涎を布巾で拭き取り、その匂いを興奮ぎみに嗅ぐ。
どうやら変態は伝播するらしい。
「先ずは……とぉ~……」
手に取ったは鋭利な牙が夥しく立ち並ぶ鋸状の得物。つまりは鋸。
バールのような物も長机の上には準備されていたが。
それはバールだ。形状が語る。
解体でもするつもりなのか。
だが、断る!とばかりに、ギョロリと瞳が動き彼を睨み付けた。
「うぴいいッ!?」
教授は思わず大きくその場から跳びずさり、彫像と化したトールを遠くから観察する。
決して動く筈の無い彼女の瞳は彼を一喝したのち、再び元の成りへと身を潜めていた。
「気のせい……でつか……?」
恐る恐る近寄り、指先で軽く弾く。
反応がない。ただの彫像のようだ。
「教授。それは使わない約束ですよ」
寝たきりのお爺さんを慮る孫娘や長年連れ添ってきた婆さんが語りかけるように。
次に発される言葉は、まだ飯を食べていないとかが予想される。
志村け○か、馬鹿殿か。
「もう。さっき食べたでしょ?」
などと言う掛け合いから始まるコントに期待しては次なる笑いや想いを馳せてみたが。
ひとみ婆さんは其所には居ない。
やれやれ、と言った素振りで助手のロデムは鋸をそそくさと片付けてゆく。
代わりに、幾つかのフラスコを列べていった。
殺伐とした道具は悉く仕舞われてゆき、教授はつまらなさそうに口先を尖らせるのだ。ぶーぶー。
「さて。仕方ありませんね~……」
伏し目がちにそう言うと、彼は自分の机へと視線を向け足を運び慎重に椅子にへと座り体重をかける。
きょろきょろと辺りを窺い、助手のロデム以外誰もいない事を確認した後、軽く右から左へと拳を鳴らす。
入念に手の準備体操を行い、いざ、スイッチへと指先は捻り込まれた。
カチリ。
……ヴゥン……
闇に閉ざされていた画面に明かりが点り、教授の顔を明るく照らし出す。
奇妙な音が未知の領域へと誘う。
異世界大陸ファンタジスタに於いて最も不似合いな遺物、いわゆるPCであった。
いったい如何なるルートで入手したのだろうか。
そして、その電気や電波はどのようにして可能とさせているのか等々、甚だ疑問である。
「さてさて~……今回も美味しく利用させて頂きますよ~……ぬふふふっ」
某もみ上げの盗賊のように、いやらしい笑み。
次いで、カタカタと検索欄に打ち込まれるは『石化解除』とあった。
何と彼は日本語で打ち込んでいたのだ。
カチリと鼠をクリックすると羅列される数々の検索結果。
大半はfinalなんちゃらとかいう娯楽の情報だった。
攻略法などが関与しているらしく、次々と繋がってゆく情報網。
矢鱈と同じキーワードが目立つのでその一つを選択。
何やら、これを使えば石化は治ると云われる便利なマジックアイテムらしい。
「ふむふむ。『金の針』ですか……」
同様の効果が得られるであろう其の幻想世界の魔法も気にはなったが、この異世界大陸ファンタジスタで一般的に使われている『解除魔法』が効果を成さないのである。
よって、彼は余すことなく、使えるものは使う事にしたのだ。
甘い汁を吸うに遠慮などは一切せず、我が身に与えられた宿命を、設定を逆手にとるのだ。
其処には最早、迷える子羊を導くという慈愛や正義感は欠片も感じ取られない。
というより、教授本人の希望に欲望に忠実なのだからどうしようもなく。
相変わらずの姿勢を貫く彼にほとほと呆れ返るロデムは「やれやれ」と項垂れていた。
「ではでは……早速行ってみますかね~……」
教授はそう呟くと同時に、如何わしい仕草で自身の腹部をまさぐる。
よく見てみると、その臍辺りには奇妙な袋が縫い付けられていた。
何次元ポケットかは分からない。
そこから取り出されるガラクタの数々。
肝心な時に必要な道具が取り出されないのは仕様なのだろう。
あれでもない、これでもないと。
様々な玩具や、黒豆餡を柔らかい生地で挟まれた和菓子などが辺りに散らばる。
やがて、辿り着いたブツは室内でドン!と聳え立つのだ。
てってれー。効果音を伴う。
『どこでも扉ぁーーー』。
その姿形は至って単純な作りではなく、荘厳且つ煌びやかな出で立ちであった。
開かれてしまえば、片腕片足を代価に奪われてしまうのではないかという恐ろしい雰囲気を醸し出すその扉に手を掛け、教授は助手に伝言を言い渡す。
「影武者をたてよ。そしてこの襖を決して開けてはいけませんよ?」
一句目は察しとれたのだが、次の句の意味が分からず思わずロデムは首をかしげる。
助手にして一見幼女の風貌のロデムは『変身能力』を持っている。
なので、暫しの間。
彼バベル教授に成り変われとのお達しであろうと鑑みては納得したのだが。
襖を開けてはいけませんとはこれ如何に。
押すな、押すなよ?の前振りなのだろうかと怪訝な表情で教授の真意を汲み取ろうとする。
しかし、その返答を聞くまでもなく彼は扉を押し開き、辺りを覆い尽くさんとばかりの目映い閃光と共に別世界へと旅立ったのであった。
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「う……此処は……いったい……?」
肌を焦がす程の、照り付ける陽射しのせいなのだろうか。
眩しさよりも先ず暑さが勝ったので教授は取り敢えず辺り構わず数枚の服を脱ぎ散らかした。
そこは南国というよりは地中海を思わせていた。
季節も季節なら、涼しげでリゾートには最適だろう。
そして目の前に拡がる広い砂浜の上にはログハウスがいくつか建ち並ぶ。
バベル教授は取り敢えず『どこでも扉ぁーーー』を懐に仕舞い、ログハウスの方へと向かった。
薄い水着姿の人が多々目立つ。
其処らに際立つグラマラスな女性たちは、はち切れんばかりの見事な胸囲を見せびらかしていた。
だが、しかし、残念なことに。
彼には通じないのだ。
何故ならば、尋常ならざる性癖とは別として、そのような淫らな肉質には全く興味がないのである。
エルフを越えたエルフであるという証明。
バベル教授のその部分だけは敬意を評する。
そこかしこに屯う淑女などには一切見向きもせず、目的の品を探りだそうと目を見張らせる。
やがて、一人の男性を発見した教授は興味津々な面持ちで彼に歩み寄ろうとした。
金髪で尖ったように逆立った髪型をしており、端正な顔立ち。
整った中性的な顔立ちをしており、いかにもな『美形』である事が分かる。
瞳は青色をしており、服装はノースリーブのハイネックシャツと紫紺の服を身に纏い、身の丈ほどもある巨大な幅広の片刃剣を背中に掲げていた。
ピンク色のリボンを左腕に付けている彼・ツンツン頭の青年は何やら買い物をしているようだった。
「毎度あり~♪」
麗若い女性の店員から受け取られたその物品の輝きに眼を惹かれ、教授は彼に近付き恐る恐る声をかける。
「あのう、もし……宜しければそれをお譲り頂けませんかねぇ?」
アフロヘアーのエルフなどはかなり珍しいであろう。
怪しすぎてお釣りが余分に払っても良いぐらいに。
対面した彼は条件反射的に。
徐に背中の巨大な幅広の片刃剣を手にして身構えた。
「貴様……彼の者の手先か……」
「ちょちょちょ……お、お待ちくださいッ……決して貴方様の敵ではございませぬッ!!」
まさかの好戦的な対応に戸惑い、バベル教授は一層激しく片手を振り乱し戦意が無い事を前面に出して謝罪の意を示す。
突如、美味しそうな臭いに誘われて。
そんな険悪な場に現れ空気を読まずに間に入ってきたのは短髪で程よい褐色の肌の少女。
瑞々しい果物で敷き詰められた飲み物を片手にしていた。
しかし、ふと違和感を覚え、彼女の後ろは背中を見てみると一際大きな手裏剣が小柄の体躯に括り付けられていた。
決して忍者には見えないファンシーな服装の彼女を怪訝な表情で戸惑う教授はさておき。
彼女は片刃剣を構える彼の闘志を遮りバベル教授に対して興味深く、まるで新種の生物を発見したかのように魅入る。
くりくりとした可愛らしい瞳が徐々に爛々と輝きを増しては口許の端は口角が上がってゆく。
「ふ~~~ん……なんだか知らないけど。これが欲しいの?」
何時の間にやら、先程ツンツン頭の彼が購入した商品袋は彼女の手に握られていた。
背中の手裏剣は伊達ではないのか。
手癖の悪さは見てとれる。
他にも盗まれた物はないかと焦り、一旦剣を仕舞い鞄の中身や身体中を調べる青年を他所に。
見せびらかす獲物で以て交渉を開始する少女。
「ん~とぉ……そうだなぁ。何かのマテリアを持ってるんなら交換しても良いよ♪」
などと。
他人の買い物袋を勝手に交渉材料に使うのだ。
ふむ。『マテリア』成りし聞いたことがない単語。
だが、決して動揺する事なく教授はその誘い合わせに乗っかるのだ。
予習・復習などは彼にとって児戯に等しい。
前以て、調査済みだった彼女の性格を読み取り、其の世界の主人公である被害者を他所に話を進める。
「では……これでは如何でしょうか?」
然り気無く懐から取り出され提示されたのは光り輝く宝珠。
其れが全く何かも判別しないのに彼女は眼をキラキラと輝かせ物欲しそうに垂涎を垂らす。
興奮の坩堝に身を委せ、即座に同行者であり仲間である勇者の買い物袋を差し渡したのだ。
「わぁ~……綺麗……」
受け取った宝珠をうっとりと眺める彼女はまるで気づきやしない。
其れは、バベル教授が模倣した『竜の涙』の偽造品なのだ。
「あ!? ちょっと……勝手な事しないでくれる?」
初めて会った時から相も変わらず一貫する彼女の態度にほとほと呆れ返る彼は心底溜め息を吐き、がっくりと項垂れていた。
誰も気にしていなかったが。
ひっそりと同行していた小柄の獅子のような生き物はそんな彼を同情して言ったものだ。
「まぁ、これも運命なのだよ」
遠くから声をかけてきた長い黒髪の美しきは恐ろしいまでに凶悪な胸囲の持ち主がそんな現場の空気を読まずに駆け寄るも。
彼が再び顔をあげた時には、アフロヘアーの奇抜なエルフの姿は既にそこには無かった。
「……上手く行けば良いのですが……一応、念の為。他の世界も探っておきますかね……」
『コスタデルソル』と書かれた看板をさらっと無視して。
再度『どこでも扉ーーー』を、縫い付けられた腹部の異次元袋から取り出してバベルえもんは言う。
未だ、彼の独壇場ではないのだ。
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何処かの世界で予期せず待ち受けていた少年はピンッと髪の毛を1本逆立たせて言うのだ。
「父さん。妖気ですっ」
お椀に溜められた湯に浸かる目玉の親父は甲高い声で応える。
「まだ、この茶番は続くのか?」
鬱蒼と繁る森の中に佇む屋敷。
その庭先で大量の烏は、今か今かと浮かび上がらんとする風船を膨らませ、忍び寄る混沌から逃げ出そうとしていたのだが。
それが叶う事は無い。
「あの、ひとつ目玉に詳しい賢者は……此方におらっしゃいますかね?」
道端で訪ねられた猫の娘はこれでもかと謂わんばかりに眼をかっ開き、バベル教授を新手の妖怪かと思い、鋭い爪を引き出すのだ。
歌が鳴り響く。
みんなで踊ろう、ゲゲゲのゲ。と……
既に、灰色の代表者。
ねずみ男は嫌な予感を察して逃げ出しているのは流石と言えよう。
ギリギリか、な……
あからさまにはしていないので、某スクエアエニック○はガン○ンから訴えられないかと?
(;゜0゜) ヒッヒッフー……
次回は11月19日は日曜日の予定でっす。




