抗えば。抗うほどに、螺じ曲がる。その11。
またもや、短めです。異世界です。
いかんなぁ。
次章、最終章はもうちょい盛り込みますのでっ!
(^_^;)
「カーーーカカカカーーーッ!!」
野太い笑い声が辺りに響き渡り、森の住人達は堪らず耳を塞ぐか、その場をあとにして飛び去る。
立つ鳥、跡を濁す事は有るらしい。
そんな事は全くお構いなしに突き進む、1つ目だが三面皮の巨大な悪魔は更に破壊の一途を辿り歩み続けていた。
元からこの異世界大陸ファンタジスタに於いて畏怖され続けてきた伝説の巨人。
『サイクロプス』の、名は『執着』の悪魔・アシュラ。
彼は今や悪魔として進化を遂げ、己の往くがままに身を委せ、目の前に立ち塞がる全てを薙ぎ倒しては自由を謳歌していた。
道中、何度か行く末を邪魔する厄介者は居たがまるで相手にもならず。
最早、向かうところ敵無しと謂わんばかりに自信に溢れては我が道を突き進んで軽快に全てを駆逐していった。
だが、そんな軽やかな足取りはふと何かに気付き歩みを止め前方を見やる。
そこには小さな集落があり、多種族が和やかに生活を営んでいた。
先程から喧しく轟いていた巨人の馬鹿でかい笑い声に恐怖を感じたのか。
非力な村民達を庇い、数名の勇士は各々武器を片手に村を守ろうと勇猛果敢にアシュラに立ち向かう。
「立ち去れ! 大悪魔よ!!」
霊媒士が聖典を片手に悪霊を除霊する如く。
その勇士の中から一人、長い耳で美しい金髪を靡かせ光輝を纏う青年が細身の剣の切っ先を悪魔に突き付ける。
まるでお伽噺や昔の絵本から出てきたように美しい姿は彼がエルフだと確信させた。
そのエルフは目前に聳え立つ巨大な悪魔目掛け、短く呪文を詠唱してはレイピアの剣先から鋭い雷撃が放たれた。
「穿ち貫け雷よ!!」
「ぬおおおッ!?」
身体の内部を迸る電流が脳髄まで響き、脚がよろつき倒れかかるも既の所で踏みとどまる。
巨大な悪魔はその先制攻撃に対して出遅れた事に苛立ち、横顔をくるりと正面に回転させた。
物々しい形相は満面に怒りで充ちていた。
「アシュラ面。怒りぃぃぃッ!!」
逞しい8本の腕はその巨体から豪快に繰り出される。
あらゆる角度から襲い掛かってくる豪拳に対して、決して焦らずにエルフは言葉短く呪文を唱えた。
「大地よ、我らを守りたまえ!!」
土の精霊が彼に応え、悪魔の打撃が届く寸前に形を成す。
他の勇士も含め、ドーム状に成った土塊は鋼鉄の如く頑健さを帯び、悪魔の攻撃を耐え凌ぐ。
「ぬぐわあッ!?」
その強度に傷付いてしまった拳を引っ込めて、痛みを我慢しつつも忌々しげに土壁を睨む。
痛々しい傷口を舐めながら。
悪魔アシュラはたかが独りのエルフに手こずっている事に更に苛立ちが募り、歯軋りをしながら悪態をつく。
「俺様にぃぃぃ……敵うと思ってんのかあああッ!?」
片眉はつり上がり、こめかみに伝う血管がビキビキと音を立てて怒声を張り上げた。
巨躯は感情に逆らわず、思うが儘に有りとあらゆる攻撃を繰り出す。
8本の腕は拳を傷付けながらもひたすらに撃ち込まれ、合間に折り込まれる蹴り技が次第にその威力を発揮してゆく。
両腕よりも。
日々、生活するに於いて活躍している屈強な脚により放たれた技は当たれば一撃必殺にも成りうるのだ。
やがて亀裂が入り土壁の中にいる勇士達は皆、もろとも吹き飛ばされた。
それでも、彼は即座に立ち上がり毅然とした態度で悪魔アシュラを睨み付ける。
元来、エルフは決して頑健な種族ではない。
卓越した弓術や、あらゆる魔術や様々な精霊と交信する『森の賢者』とも呼ばれている存在であり、決して近接的な戦いは好まない。
況してや、格闘能力に於いては人間にも劣るであろう。
なのに、何が彼をここまで迸らせるのだろうか。
吹き飛ばされたものの、命からがら建物の影に逃げ込んだ勇士達は既に戦意を失い怯えきっている。
しかし、後ろを省みずエルフの青年は怯むことなく1歩前へと進むのだ。
「お前……俺が恐ろしくないのか……?」
迫力に圧され、僅か半歩程たじろいでしまったアシュラが問う。
彼は応える。
「それは恐いさ。だが! だからと言って退けば我が種族の誇りは地に落ち、そして尊き命を失われる!」
瞳の奥に熱い炎を灯し、傷付きふらつく両足に気合いを入れる。
陽光を味方に剣先をアシュラに向け、まるで伝説の勇者かのように立ち振舞う。
「我が名はレジェン。いざ! 尋常に……勝負ッ!!」
勇猛果敢に単身、彼は大悪魔へと駆け寄りレイピアで真っ直ぐに突く。
その覚悟を感じとったのか、アシュラはくるりと面を変えてニヤリと嗤う。
「カーーーカカカカーーーッ!! 俺を満足させてみろッ!!」
喜びに満ちた表情で、エルフの青年レジェンが繰り出す冴え渡る剣技に拳で応えるアシュラ。
だが、突如悲劇は訪れる。
二人の間にぽっかりと虚空は顕れ、ゴクンと呑み込んだのだ。
傍観していた勇士の一人がその場でへたり込み呟く。
「まさか……『虚無』が……こんな所にまで……ッ!?」
エルフと悪魔を呑み込んだ『虚無』は更に大きく膨れ上がった。
村に立て付けられた御触れにあった恐ろしき超常現象。
逃げねば、と。
村人達に通告しようとしたのだが、その勢いは留まる事を知らず。
一瞬にして。
村であった何かは世界から消えた。
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遥か彼方で。
掌に浮かべられた水晶球を見ては、独りのダークエルフはとても嬉しそうに囁く。
「良いぞ……もっとだ……もっと増えろ!」
異世界大陸ファンタジスタが終わる時が近いのかもしれない。
次回は11月13日は月曜日辺りを予定に。
因みに今章は予定では20話ぐらい、ぶっ混んで数話エピソードを入れてから。
更に20話程度で最終章を書くつもりです。
ご容赦くださいませ……
( ノ;_ _)ノ
ではっ!




