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ドラゴンNO涙  作者: caem
第4章・暴れだす。幕を引き裂き、さぁ、開演だ。
67/96

抗えば。抗うほどに、螺じ曲がる。その8。

少し話が逸れます。

相変わらずの異世界ですが。

(^_^;)


御容赦のほど、宜しく願いくださいませ……

m(_ _)m

 蒼空を漆黒で染めるように、闇色の球体が複数、大小様々に浮かび上がる。

 羽ばたかせる翼は宙空にてその巨体を一時停止させた。

 然らば、その暴威を轟かせんと一斉にそれらは放たれた。

 目指すも何もなく、辺り構わず掃射され、やがて球体は爆縮する。

 影響下にあった者達は次から次へと丸く抉り取られ、忽ちに球体に呑み込まれてしまった。

 勿論、生物だけではなかった。

 有りとあらゆる存在が、その闇の球体により消滅してゆくのだ。

 重力系の最上級魔法『グラヴィティ・ブラスト』は彼の吐息に等しい。


『ぐわははははは!! どうした? 人間どもよ……我に傷ひとつ負わせぬとは!!』


 闇風を靡かせ、巨躯は感極まり盛大に笑い声をあげる。

 伝説やお伽噺などでは、世界の至る所で自由気儘に破壊の限りを尽くした極めて邪悪な巨竜が威風堂々と聳え立つ。

 『黒帝』成る邪竜は今。

 異世界大陸ファンタジスタに於ける唯一の王国は首都『シェラザード』の上空を大きく旋回しつつ、その存在が脅威を知らしめていた。


「防御結界、張り直しました!」


「よし。そのまま続行! ……思い上がりも大概にしろ『黒帝』め。魔道砲部隊! 前へ! 焦点を定め……撃て!!」


 地上で一子乱れず戦列を組み、大勢の大砲から放出された光の術式を籠めた魔道弾が『黒帝』に襲い掛かる。

 闇を切り裂くのは光だと昔から相場は決まっているらしい。

 果たして、確かに幾らかの重力球は霧散・消滅はしたのだが、彼『黒帝』には届かなかった。


『ぐわははははは!! 無駄無駄無駄アッ!! 掠りともせぬわ!!』


 避けようともせず、全身に、周囲に張り巡らされた重力球(グラヴィティ・ブラスト)が悉くを呑み込み尽くす。


「次! 第二部隊、前へ! ……撃て!!」


 隊長の指示に従い、2発目が放たれる。


『むッ!?』


 何事かを察知した彼はその巨躯を翻し、遥か上空へと飛翔した。

 先程は魔力を籠めた弾丸であったのだが、光の帯が蒼空を劈いたのだ。

 地上では、数十名の魔術師が『黒帝』を目掛けて光の術式を行使していた。

 上級魔法『フォトン・メイス』が矢継ぎ早に撃ち込まれる。

 効果範囲を見切り、それら全て見事に避けきる巨体が空高く、偉そうにふんぞり返る『黒帝』。


『ほう。今のは流石に肝を冷やしたぞ! さぁ!次はどうする!!』


 邪竜は眼を爛々と輝かせ、わくわくしながら上空で佇む。


「聖騎士隊! 往けぇッ!!」


 ずらりと整列するペガサスに跨がる聖騎士達は、蒼空を駆け巡り、いざ勇敢に彼に挑む。

 各々が王国が認める実力者であり、剣術のみならず、魔術にも長けている。

 黄金に光輝く鎧を纏い、剣や槍などの武器にまで魔力を秘めた、大陸最強の軍隊が『黒帝』と対峙した。


「我が王国に仇なす邪竜よ! 我らの手により滅びを与えん!! 往くぞぉぉぉッ!!」


「「「「「うおおおおおおおおおッ!!」」」」」


 聖騎士長の前口上が全員の士気を高め、一際煩い雄叫びが沸き上がる。

 地上に待機している魔術師程の威力ではないが、四方八方から放たれる『フォトン・メイス』に思わず後退り、その空域から離脱を図る『黒帝』。


『ぬっふっふっふっ……これだから辞められぬ……ッ!!』


 逃走しつつも、ほくそ笑み、戦闘場所を見定めて、突如彼は振り向き様に溜め続けていた物を吐き出した。

 それは最早、球体などではなく、唯一筋の極太な闇。

 『黒帝』の奥義『グラヴィティ・ブラスター』が大きく開かれた口から放たれた。

 判断を見誤り、僅かに遅れをとった数名の聖騎士達が悲鳴をあげる間もなく、跡形もなく消去されてゆく。


「くっ……化け物めッ!!」


 聖騎士長は散り逝く彼等に振り向きもせず、闘志を更に昂らせて自ら突撃した。


「ぬおおおおお……喰らえ!! フォトン・キャノン!!」


 彼が独自に編み出した技が冴え渡る。

 騎乗している天馬を含め全身を聖なる光で覆い尽くし、唯一個の弾丸と化した彼は『黒帝』を貫いた。

 しかし確かな手応えを感じ得ず、一抹の不安が頭によぎる。

 散ったのは『黒帝』の姿を映した幻影だった。

 周囲の闇が濃ければ濃いほど、自分の姿を投影させる事が出来るのだ。

 そして、闇に潜む事などはそれよりも容易く。


『ふははははは!! いかんぞ? 怒りの感情に囚われて、現実を認めぬとは……』


「むむ……ッ!?」


 不意に頭上の漆黒の中から『黒帝』の首だけが顕れ、聖騎士長を丸呑みしようと大きく口を拡げる。

 だが、それは想定内だった。


「……かかったな。喰らえ!! 『サザンクロス』!!!!」


 怯むこと無く彼はその頭上へと十字に刻んだ剣撃を光と共に放つ。

 聖騎士長の奥義『サザンクロス』が炸裂し、邪竜は初めて痛みを伴い絶叫した。


『ぬぐおおおおおッ!?』


 重傷を負った『黒帝』。

 彼は再び漆黒の中へと姿を潜め、しばらく静寂は訪れる。


「隊長! 大丈夫ですかッ!?」


「あぁ、問題ない。闇に潜った『黒帝』はそう簡単には出てこれんだろう。だが傷が癒えれば再び襲ってくる。今の内に態勢を整え更に軍備の強化を……」


 少し疲れたらしく肩で息を切らす聖騎士長。

 心配そうに駆け寄ってきた部下が、突如、彼の胸を槍で貫き黄金の鎧が深紅に染まった。


「な……何故……だ……」


 口許から溢れる血溜まりが死の雰囲気を誘き寄せる。


「くっ、くくくッ……くはは……くはははッは!!」


 突然の出来事に茫然と立ち尽くす聖騎士達。


「甘い。甘いよ、甘過ぎんよ~。隊長さんよ~?」


 配下の聖騎士だった彼は徐々に変貌しやがて真の姿を顕す。

  計八本の腕を忙しなく生やし、頭部からは何十本もの鋭い尖角が滑らかに煌めきを魅せる。

 背中には烏揚羽を彷彿させるような美しい大きな翼を何枚も羽ばたかせては空中停止を可能にしているようだ。

 そして、特有の三角を先端を持つ尻尾がそれらの物語に結末を告げる。

 まごうことなき『悪魔』だと。

 『残虐』は、してやったりと口角を歪ませ邪悪な笑みを浮かべている。


「……ふ。やはり、内部に悪魔が居たか……」


 突然の出来事にこれまた意表を突かれ、『残虐』は逆に呆気に取られる。

 いつの間にか、聖騎士長の身体から刺さったままの槍は引き抜かれ、貫いた筈の傷口は完全に塞がっていたのだ。


「……あいえええっ? ……なんでッ!? ……ニンジャなんで!?」


 激しく動揺し、首を捻り混乱する『残虐』さん。

 そんな彼に対して、優しくネタをばらす聖騎士長様。


「まったく。芝居を打つのも一苦労だな。王国に悪魔が潜んでいる事は私を含めて極小数の者しか知らされていないのだから」


「……いや……いやいやいや! そういうこっちゃ無えんだわさ! 確かに殺った筈なんだってばさ!?」


「これもまた、極小数の者しか知らぬ。俺の命は…心臓は此処には無い。流石に傷は負うがな?」


 訳が分からず、何重にも頭上にハテナが並ぶ『残虐』のナロウバ。

 ぽくぽくちーん。そもさん。切羽。


「まさか……あの雌豚……取っ捕まってバラシやがったのか!!」


「ほう。中々に頭は切れるようだな。そうだ。あの『魔女』は自供した。いや、正確には将軍の息子が口を割らせたというべきか?」


「……あちゃー……こりゃまた1本取られましたねっと。んじゃ!」


「逃さんッ!!」


 身を翻し、逃げに徹した『残虐』は聖騎士長のもうひとつの奥義『ノーザンクロス』により瞬時にして細切れに成り、やがて消滅して逝った。


「奥の手は隠しておくのが常識だ。皆も心しておくように!」


 いったい何が起こったのか。

 開いた口も塞がらず間抜け面を晒す聖騎士達は互いに顔を見合わせてから、こくりと頷き、何も見なかった事にした。


「さて、将軍に伝えねば……ここは一旦帰還する!!」


 犠牲者は出てしまったが、感情に囚われてしまえば油断が出来るのは戦場の常なのだ。

 歴戦の聖騎士長バルバロッサは心の中でだけ深く追悼の意を捧げ、首都へと戻って往くのであった。


次回は11月4日辺りを予定でっす。

重々、御容赦頂きたく……

( ノ;_ _)ノ

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