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ドラゴンNO涙  作者: caem
第1章・竜と悪魔と魔術師と
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むりやり喚ばれて、冒険者になったJK達。その6。

「律儀な生物だな、人間という者は……」


 【虚化】と紳士に向かい合う陣形を傍目に、いや、遠目に傍観を決めていた。




 その、『人成らざる生物』は完全にその気配を断ち、仕事に準ずる魔術師達を小馬鹿にした。


「確かにそうですよねぇ……。全く以て馬鹿らしい……クククッ!」


 その傍らに居る者が会話に加わる。


「この大地に於ける……いや、この世界に於ける極めて僅かな環境問題に何故あんなにも必死になっているのか。甚だ疑問ですよねぇ……ククッ!」


 彼ら二人の背中には、まるで、地獄で燃え盛る炎のような真紅の羽根を纏いていた。

 その頭頂部には、何人足りとも追従を許さぬであろう猛々しくも荒くれた猛牛や、険しい丘の支配者であろう山羊の王を彷彿させるような美しい角が装備されていた。



 『悪魔』。



 様々な伝承により、大概は『完全悪』として扱われる邪悪な存在。

 その尋常ではない魔力、生命力、残虐性は、幾度もファンタジスタ大陸を危機に追いやり、また、自由気儘に世界を謳歌し続けている脅威の存在なのだ。




「デルメト様、口が過ぎまするぞ」


 と、もう一人の影が姿を顕し、二人の話を御する。

 その姿は、闇夜を表現するに相応しい程の黒色の肌を滑らかにした。


 森の気高き妖精『エルフ』と見間違える程に美しく、酷似した体躯だが、その眼には狂気や混沌の企みを宿し、忌み嫌われる闇の妖精『ダークエルフ』であった。


「バルテズール、善きに計らえ」


「は、グランヴィア様。ですがデルメト様も申せまするように、あの者達少々過ぎるのでは?」


 グランヴィア様、と呼ばれた悪魔は。

 その場にいた悪魔である2人のうち、最も軽量且つ小者感が強そうな姿をしていた。


 だが、『ダークエルフ』としてはかなり上級の位にあるバルテズールが施した結界魔術でさえ、彼の全身から放たれる魔力を抑え込むのが精一杯なのであった。


 それは『悪魔・グランヴィア』が『魔族』の中でも屈指の指導者としての実力を持つ事を意味していた。


「まぁ、好きにさせるが良い。だが『竜の涙』は全て……我が魔族が頂く」




 そもそも、ここに集いし悪魔2人と『ダークエルフ』。


 このたった3人で、ファンタジスタ大陸という異世界を混沌に導く事はさほど困難な事ではない。

 だが、悪魔とて他の生物に比べ、遥かに長寿ではあるが不老不死ではないのだ。


 何処からか生まれ、いずれは何処かへと消えゆく。


 もしくは、予期せず出会ってしまった聖なる教職者や冒険者によって倒され消滅してしまう。

 それを回避し永遠の混沌を支配するのが彼らの意義であり、使命なのだ。


 しかし、昨今【虚化】などという、いわばライバルのような現象。

 それが増殖し悪魔達はその身を細くするばかりなのだ。


 食べ物が無ければ生きていけない。


 糧が無ければ生きていけない。


 有りとあらゆる欲望を満たし続けなければ生きていけない。


 それが『悪魔』という存在の真髄なのだ。






 さて、少し本題は逸れるが……。ここで、『ダークエルフのバルテズール』と、『悪魔・ベルトーグ』との関係を少し話してみる事にする。



 数年前、『悪魔・グランヴィア』と『ダークエルフ・バルテズール』は運命的な出逢いをする。


 当時、裏社会の頂上として君臨していた『闇の賢者』。

 その一族として暗躍していたダークエルフ達と悪魔との戦闘だった。


 彼等は例え悪党……盗賊や貴族・王族、魔物、悪魔でさえも取引先として生業としていたのだが、些細なミスがグランヴィアの怒りを買い、『闇の賢者』は壊滅寸前に追い込まれた。


 辺り一面はまるで地獄のように血の海となり、焦土となり果てた。

 しかし、バルテズールは、生き残った。

 最早、その身の殆どは形成されていなかった。


 同志であったダークエルフ達も既に血溜まりになり、または黒焦げという有り様。

 圧倒的な破壊力。

 立つ事も話す力すらも無かった彼に『悪魔』はその手を差し出した。


「ふむ、面白い。貴様、その力を我に寄越せ」


「こんな……くだらない『場所』で、終らせる事はない」



 それは、バルテズールに於いて衝撃的な出逢いであった。

 彼は以降『悪魔・ベルトーグ』に屈し、その生涯を、仕える事になったのだ。


 やがて、彼はその才能が開花されたのか。

 宝珠【竜の涙】の魔力を解き明かし、彼との契約に従い、いや、寧ろ運命であったかのように狂喜乱舞したのであった。


 以降、まるで元々、自分が当たり前に魔族であったかのように。

 彼等、悪魔と共存していく闇に堕ちたエルフのバルテズール。

 彼にとっても、悪魔達にとっても、これ以上はない程の同志となったのであった。




「バルテズール、例の『異邦人』はどうしている」


「探らせておりました所……。『魂の泉』へと動き始めたようです」


「一応、僕の使いを走らせましたけどねぇ。さぁて、楽しませてくれますか……ねぇ?」




 ふと何かを感じたのか、偉大なる魔術師バレンシアが空を仰いだのだが、その時には既に、邪悪の欠片すら微塵も感じられない晴天がそこにあった。






「気のせいか……。何事もなければ良いのですが……」






 何処かで、冒険者達が、盛大にくしゃみをしていたかどうかは定かでは無い。

…とりあえず、『悪魔』『魔術師』が揃いましたw

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