エピソード459【闇の竜・黒帝】
更新詐欺再び。
次回がかなりカオスなので、一旦シリアスさんをぶっ混みます。
エロ、グロはないかと。
そんなに、長文では有りません(寧ろ、短文)
ただひたすらに闇が支配する中。
其れはひっそりと産声をあげた。
蠢きを細やかに。
歩みなどは一切致せない。
声を発する事も、表情を、感情を表す事すら皆無。
正しく、無の極致。
留まるを知らず、際限無く湧き出る暗黒だけが自分という存在を認めさせた。
滅多に顔を出さないが。
稀に、私の様子を伺う何者かの呟きが聴こえてくる。
「ふむふむ。経過は順調ですね……計画は上手くいきそうです……ふははははッ!!」
両手を高々と掲げ、暫し。
長い耳の種族は感慨深く瞳を閉じ、大袈裟に頷く。
厭らしい笑みが鬱陶しさを感じさせたが、敢えて、無視する。
何故ならば、私にとっては、全てが無意味なのだったから。
「教授。アレは少々危険なのでは?」
敬虔なる助手が不安そうに伺う。
だが、彼は違ったようだ。
「いえいえ。これこそが完璧なのです! あとは……この辺をちょちょいと……おや……??」
意識していなかったが、何かがおかしい。
溢れ出す暗黒が留まるをしない。
並々と注がれていた己が、感情が更に増幅し、煽る。
もしかしたら己は爆発してしまうのでないだろうか。
「す……素晴らしい!! ほら!御覧なさい!! これこそ正に……」
「駄目です! 教授!! さあ逃げますよ!!」
フラスコは割れ、破片が辺り一面に飛び散った。
実験台として費やしていた日々から解放されたのだ。
新鮮な空気に触れ、深く長い呼吸と伴に、私は一切合切を吐き出した。
「ぐるるるるるおおおおおッ!!」
辺りに闇の球体が複数産まれる。
別段、恨みなど無かったが、手当たり次第にそれを解き放った。
すると、触れた箇所が丸く抉り取られる。
重力球体とでも名付けようか。
何とか逃れられた教授は助手に手を引かれ、その場を後にした。
もう、此処は用済み。
彼等は二度と戻ることはないだろう。
「ぐるるる……まだだ……もっと……もっと……」
満たされることの無い中身が、闇を欲する。
目前にあった鏡台を見て、ようやく自分の姿を確認した。
漆黒の体躯。尖翼。ギザギザの背鰭。
障気を帯びた尻尾。
そうか。
私はいわゆる『竜』だったのか。
一頻り、溜まりを吐き出し、落ち着いたあと。
その部屋中を、屋敷を探索し、粗方の知識は得た。
何やら、この世界にはまだまだ沢山の命が存在しているらしい。
特に気になったのが『王国』。
様々な種族が存在し、力の強い者達が集うという。
先ずは、此処からだ。
そして、私は外の世界へと旅立った。
暗闇を撒き散らしながら、大空を飛行する漆黒の竜。
勝手に身体の奥底から力が湧き出るので、何も気にすることはない。
闇が蒼空を黒く染めてゆくのは仕方がない。
俺は自由だ。
『黒竜』は、ほくそ笑む。
抑え付けられない興奮に従い、鈍く煌めく鋭い牙を端から端まで舌舐めずりした。
たまに視界に捉えた村や街に立ち寄り、暴れたりもした。
全滅させるのは容易いのだが、それでは国も対策が立てられまい。
私は奴等と本気の勝負がしたいのだ。
「ぐるるる……もうそろそろの筈……ん。何だ?」
あれから数日が過ぎた頃。
私と同じくして、大空に浮かぶ奇妙な軍団が輝きを纏い目の前に現れた。
どこかで見た気がする。
ああ、屋敷の書庫で読んだヤツか。
確か『天使』だとか云われて人々から崇められている神の使い。
反吐が出るほど、胡散臭い奴等だ。
その数は見た限りでは約300ぐらいか。
だが、今はそんなものどうでも良い。
私の興味は『王国』の軍隊との戦争、唯それだけなのだから。
『此処から先へは通しません』
頭の中に直接光が入り込んできた。
鬱陶しいにも程がある。
話し掛けるな。遮るな。
俺の邪魔をするな!
「ぐるるるおおおおおおッ!!」
邪魔物を殲滅すべく、雄叫びを轟かせて盛大に闇を吐き出した。
天使達の大半が闇に呑み込まれ、やがて消失した。
全く、いい気味だ。いい気分だ。
運命よ。そこをどけ、俺が通る。
『どうやら、話を聞かない質らしいですね。では、致し方無い……聖鐘を鳴らしましょう』
代表格らしい奴がそう告げ、懐から小さな鐘を取り出し軽く振るう。
耳障りな音が更に鬱陶しさを掻き立てる。
堪らず、もう一度闇を吐き散らかそうとした。
だが、出ない。何だこれは。
ふと、辺りを見てみると、鐘を鳴らす人数が増えている事に気付いた。
この感覚……僅かに身に覚えがある。
確か、あの試験管に封じられていた時の感覚だ。
小癪な真似を……苛立たしくも憎らしく腹立たしい。
沸き上がる情に委せ、闇よ、膨れ上がれ。
有象無象を事象の彼方へと葬り去れ。
我こそは暗黒の支配者為り。
「御意に」
全く聞き覚えの無い声が、闇から聴こえた。
身の内に潜み微睡む闇の渦から突如、ぬうっと姿を顕した。
刺々しい骨の、黒い甲冑を着込んだ髑髏の騎士。
騎乗している馬も厳つい鎧を着込み、漆黒にその身を染めている。
「天使どもよ。貴様らの縁にはもううんざりだ。消え去れ!」
彼はそう言うと、片手にしていた禍々しい長剣を水平に薙いだ。
途端、歪みが産まれる。
歪みは徐々に勢いを増し、円を描き、鐘を鳴らしていた天使達を食む。
「我が主に仇なす者達よ。次元の彼方へと跳べ!」
辺りを取り囲んでいた天使達は、その剣の技に呑み込まれ消失した。
ただ、代表格の天使には通用しなかったようだが。
『まさか……髑髏の騎士を召喚するとは……貴方。地獄を介しているのですか……』
驚きを隠せない様子の大天使は手にしていた鐘を懐に仕舞い、鉾を片手に持ち直し戦闘の意を示した。
取敢えず、鬱陶しい鐘の音を消せたのは有り難い。
一息吐き、再び冷静を取り戻す。
「ぐるるる……任せて良いか?」
「御意に。ですが、私独りでは少々手不足かと。なので、獄界より配下を召喚して頂きたく……」
どうすれば良いか解らなかったが多分、先程の要領、感覚であろう。
捻り出した闇が、更に倦属を大量に召喚した。
地獄から、続々と。
大群が押し寄せてきたのだ。
あの書庫で読んだ限りでは、どうやら、魔界と地獄とは別物らしかった。
魔界には悪魔が屯い、地獄には死者が屯う。
私には後者の。
死者を使役する能力があるらしいのは、此れにて証明された。
「ぐるるる……此処は任せたぞ……」
「は。『黒帝』様は目的を果たしなされよ……」
『此処から先へは通しませんと申したでしょう……カリゼラ様。いざ、御顕現を!!』
先程から、やけにおとなしいと思っていたら、何やらブツブツと祈りを捧げていたようだ。
両手を天に掲げ、祝福を唱える。
『彼が顕現する迄も御座いません。獄界へと出戻りなさい。粛清の光よ。降り注げ』
天空からの言霊と共に。
辺りは、目映い光に包まれ、意識が遠退いてゆく。
………………
再び気付いた時には、召喚した倦属は姿を一切残さずに。
自分も、その身体に訪れた異変に畏れ戦き、驚愕の表情を露にした。
対峙していた彼等、天使と同じ様な身体付きへと変貌してゆく。
「ぐるるるおおおッ!! こんな馬鹿な事があってたまるかッ!!」
何の為に、あの試験管から表へと出たのだ。
こんなくだらない事があってたまるか。
だが、そんな憤りも虚しく。
薄れゆく意識の中で、彼は誓う。
いつか、再び闇から産まれて。
刃向かう全てを暗黒に呑み込ませてやろうと。
収拾つくかなぁ……
いや、本編のstoryは決まっているのですが、お遊びが過ぎて(爆)
次回投稿は土曜日は10月7日の深夜予定。
かなり、冒頭からブッ飛んでいます。
( ̄▽ ̄;)




