エピソード555【傲慢なる竜】
短文ですが。
『炎帝』の竜のエピソードを。
エロ、グロ無しかな?
忍び寄る炎熱。
かつては、山紫水明の深い山で採れる木の実や河魚など。
緑豊かに恵まれた土地であったのだが、今やその面影は何処にも垣間見られない。
其れが大きく歩みを進める度に大地は、大気は焦げ爆ぜてゆく。
常に全身に張り巡らされている火の精霊『サラマンデル』は歓喜に沸き、やんややんやと誉め称えている。
全てを燃やせ。
全てを炎で埋め尽くせと。
我こそが最強の竜であるという証明を示す。
『炎帝』の竜・カリギュリアが軍勢を率いて進軍し続けていた。
暴君と呼ばれ、万物。
生物全てから恐れ戦かれる存在。
絶大なる脅威を誇示し、彼は周囲を見渡し、標的を見定めた。
「ほう……まだ、息があるか『氷帝』よ」
言葉を発する度に荒々しくも猛々しい炎を吐き散らかす『炎帝』。
粛々と続いてきた争いに、因縁の勝負に決着を付けるべく彼『氷帝』に近付いた。
「……掛かったな……ッ!!」
絶対零度を其の身に纏い尽くした彼『氷帝』がほくそ笑み、止めを刺さんとした彼を騙し討つ。
己の腹部を無謀にも曝け出し、降伏の意を伝えんとしてまでも。
死んだふりを見事に演じきり、不意討ちに転じた。
ガブリと、『炎帝』の頸元に噛みつき、二度と離さない決意を露にする。
夥しい血を流しながら尚も、カリギュリアは余裕の笑みを見せた。
噛み付かれた箇所から、氷と炎が鬩ぎ合う。
だが、それまでのダメージが祟ったせいか。
やがて炎は其れを蒸発させてゆく。
「ふ……お前の……勝ち……だ……」
躯の外からも内からも炎に侵食された『氷帝』は今度こそ本当に。
ゆっくりとその身を大地に擲つ。
対し、『炎帝』は痛々しい傷痕を勲章に、勝鬨をあげた。
「今この時を以て……最強の竜は我。『炎帝』カリギュリアなり!!」
「「「「うおおおおおおおおッ!!」」」」
何処からともなく、歓声が盛大に沸き上がった。
その場に近付くだけでも危険極まりない行為なのだが、多分に、彼の倦属は耐性があるのだろう。
下級から上級までの竜が群を成し『炎帝』カリギュリアを讃え拍手喝采を送る。
「漸く……長年に渡りし悲願が叶いましたな……カリギュリア様……」
何処か遠くを見つめては、懐かしき日々を思い出す。
傍に寄ってきた竜が沁々と語りかけた。
「うむ。此れで…遂に…『昇華』を果たせるのだ」
感慨深く。
一旦気を緩め、傷付いた身体をゆっくりと大地に落ち着けた。
至る所に付けられた酷い爪痕にはサラマンデルが集い、それを治療しているようだ。
暫くして、殆ど体力が回復した『炎帝』が皆に告げる。
「では。皆のものよ。これより『昇華』の儀式へと取り掛かる!いざ、陣を組み、祈りを捧げよ……」
各々が散らばり、決められた位置へと移動し、静寂が辺りを包み込む。
陣形の、ほぼ中心部にて鎮座する『炎帝』カリギュリア。
やがて彼は、陽を遮り埋め尽くされた曇天を仰ぎ睨み付けた。
「きたれ……竜神よ!! そして……我を更なる位へと導きたまえ!!」
純粋な願いを雄叫び、瞳を閉じる。
うっすらと雲は扉を開き、一点の神々しい光が大地へと降り注いだ。
『よくぞ、唯の一介の下竜から登り詰めましたね、炎帝よ』
竜の翼と双角を携えた人間が天空より舞い降り、傅く『炎帝』の頭に優しく掌を添えた。
だが、次の瞬間。
突如訪れた脳髄まで迸る衝撃に身悶え、呻き声を漏らす。
「……う……ご……ッ!? ……な……ぜ……ッ!?」
いつの間にか、彼は取り囲まれていた。
天使の大軍勢によって。
祈りを捧げていた倦属なども既に、痛みに囚われ捕縛されていた。
悲痛な面持ちで、それでも涙を堪えながら訴える。
『もう。貴方達は必要有りませんので』
竜神はそう告げると同時に皆に指令を下す。
掲げられたもう片方の手を挙げ、其れを承った天使達が各々請けもつ竜を粛清してゆく。
そして、その様子を伺う彼。
竜神は、姿を次第に変貌させてゆく。
聖なる光と羽衣を身に纏い、清く光り輝く翼。
『大天使』そのものであった。
「そ……んな……馬鹿……な……」
『貴方が他の面倒を処分してくれたお陰で、随分と楽に粛清できましたよ』
感謝とばかりに軽く頭を垂れる大天使。
だが、その最中にもカリギュリアへの攻めは途切れずに。
辺りの倦属らは既にその原型を留めていない。どころか。
カリギュリアはその異変に気付き、驚愕の表情を浮かべた。
同胞達が、天使の姿へと成っていったのだ。
『大丈夫ですよ、貴方は十分にその資格があります。ほら、あれを御覧なさい』
先程、激しい戦闘を繰り広げ、討ち取った『氷帝』。
とうに命を失っているであろう彼が中級の天使により、その姿を変貌させてゆく。
『昇華してしまえば、全て復元致しますので。まだ息があったのが幸いでしたね』
まだ、『氷帝』が生きていた事に、少し安堵してしまう自分に情けなさを感じるもどこか嬉しい。
長年に渡り、宿敵として幾度も対峙してきたものの、最早、親友といっても過言ではないだろう。
その彼が、全く無関係な天使などによって書き換えられていたのだ。
「さわるな……お前らが……気安く……触れる……ぬあああああッ!!」
天使達の、大天使の粛清を強引に絶ち切ろうと踏ん張り、猛々しく吼える。
劈くらう魂の主張は数名の天使の意識を刈り取り、その命を奪った。
だが、時、既に遅し。
大天使の粛清によりほぼ全身を蝕まれていた彼には、そこまでが限界だった。
雄々しい巨体を揺らし、消魂しく音を発てて大地へと倒れ込んだ。
『安心して御逝きなさい。これからは同胞として御君に仕えるのですから……』
薄れ行く意識のなかで彼は誓う。
いつか天使に、この世界を創造した神に復讐の牙を突き立ててやると。
あれ?おかしいなぁ。
悪乗りしてない……why?
(; ̄Д ̄)?
次回投稿予定は10月4日か5日辺りにしようかと。
まったりペースで更新します。
( ・∀・)っ旦




