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ドラゴンNO涙  作者: caem
第3章・くだらない。全ての世界に、終末を。
54/96

覆す。そんな不条理、認めない!!その20。

ふい~……何とか間に合ったか……

これにて。今章はラストで御座います。

エロ、グロ無しだと思われます……かな?

シリアスさんは疲れますね(爆)

 その男は大群に取り囲まれていた。


 各々が、特有の姿形を以て彼に恐怖を魅せつける。


 最下位の小鬼から最上位の大鬼。

 それらの、各、突出された技術や魔力を扱える者なども一様に不満を浮かべている。


 または、漆黒の体躯をして唸り声を籠らせる巨大な三つ首の犬。

 『主従の首輪』なる魔力の籠められた道具をを嵌められてはいたが。


 その口許からは炎がちろちろと見え隠れしている。


 更に、普段は滅多に地上に姿を現さない鳥女なども群れをなし、高所から彼を見定めている。

 様々な憤りが、目前の彼に叩き付けられていた。



「お前。やり過ぎた。我ら。住み処失った。責任。とれ!」


 拙い片言で紡ぎ、怒髪天にも昇るかのように佇まいを足取りにして。

 鼻息も酷く荒く、全身から顕す覇気を湯気のように、激しく噴き乱していた。


 その群れから、いわゆる彼等の代表格であろう者がひとり、一歩前に進み出て訴える。

 携えた武器を肩に担ぎ上げ、空いたもう片方の指で差し向けては、鋭い目付きで彼を睨み付け殺気を放つを我慢せずに。



「ん? 貴様らなど。どうでも良い」


 その身を翻し、無防備にも背中を魔物達に向ける。


「嘗める……なよ!!」


 片手に握り締められた金棒を振り払う大鬼。

 鬼に金棒とはよくいったものだ。

 発された言葉を買い、怒り心頭の『オーガ』。

 全体重を乗せた一撃を即座に見舞う。



「遅い。まだカリゼラの方がマシだ」


 背後など全く見向きもせずに、その豪快な一撃を交わす。

 雄々しい金棒は彼の足元へと屈した。



「どうした。次の一手などあるのか。不甲斐ないにも程がある」


 精一杯力を込めて、それを引き抜こうとするも微動だにせず。

 あからさまに体格の劣る相手の足許から己の得物が外せない。


 徐々に増す血管の筋が、全身を朱に染めてゆく。

 食い縛る歯が憤りを語り、それを見守る配下達も釣られて拳を握りしめる。



「そんな事だから貴様らは其所から成長せんのだ」


 不意に抜けた金棒が反動で鬼の身体を後方へと反らす。

 思わず、彼は大地へと背中から体当たりをした。

 揺れる大地は観客をも一瞬浮かせたのだが、目の前にいる男は身動きひとつしていない。



「ギュアアアアーーッ!!」


 隙を見た彼女達。

 鳥女『ハルピュイア』と呼ばれる種族の魔物が軍を成して空中から突進した。

 ぎらりと輝く鋭い爪が彼を襲う。



「ふむ。悪くはない」


 その猛攻の悉くを最小限の動きで交わし、襲い掛かってきた全てに対して、丁寧に拳を添える。

 途端、彼女達は羽を散らし、地に突っ伏して逝く。


「気は済んだか? お前達に構っている暇など無いのだ」


 呆れ返る事も無く。冷淡に。

 彼はその場をあとに立ち去ろうとする。

 だが、その道筋を三つの漆黒の炎が遮った。

 『ケルベロス』などと云われ、ダンジョンなどでは最も畏れられている黒犬。

 口許からはまだ火が燻っている。



「ほう。少しは出来るようだな。面白い……俺の炎が上か。貴様の炎が上か。試してみるか?」


 そう言うと彼は、一瞬にして、闇色の焔をその身に纏った。

 其れだけで彼の回りの空気は徐々に焦げ臭さを増し、その異様な迫力に思わず黒犬は後退りする。

 仕向けられた焔を宿りし拳が犬を制圧する。

 きゃいん。きゃいん。



「つまらん。だが、それも賢い選択と言えよう」


 明らかに実力差がある事にようやく気付かされた魔物達は、彼が去っていくのを見守るしか出来なかった。



「何をしている! さっさとアレを殺らんか!!」


 何処からか、偉そうに指令が下される。


「ん? この気配は……」


 彼は魔物達のいる方向の更に後ろに注意を向ける。

 そして、鋭く睨み付け彼等を遠ざけさせ『道』を作らせた。



「ち……役に立たん奴等よ……」


「貴様……悪魔……いや、堕天使か?」


「お久しぶりですよね。グランヴィア様……まぁ、たかだか一介の天使なんて覚えていないでしょうが、ねぇ……」


 最早、天使の頃の面影など一切が感じ取られない。

 黒く染まった肌艶と翼。

 僅かに尖った角が悪魔であろうを彷彿させる。



「何にせよ。やり過ぎですよ……折角、良い感じで暮らしていたのに……天使達が封印した竜を全て解放するなどとイカれた真似をなされるとは……」


 深く溜め息を吐き、その面持ちが悲壮感を染まる。

 今や、かつて彼等が住み処としていた場所は『帝級』の竜によって蹂躙され、乗っ取られていたのだ。



「あんなの相手に出来るワケがないでしょう。私達に……なので、せめてもの憂さ晴らしにアンタを殺ろうとしたのですが……まさかこんなにも差があろうとは……」


 これでもか、と。

 更に深く溜め息を漏らす。

 愚痴る言葉は尽きない。

 だが、そんな彼に対して。

 『暴虐』の悪魔グランヴィアは助言を与える。



「愚痴るぐらいなら、強くなれ。お前も元天使であろうが」


 それが出来て然も当然だと。


 彼は相手が何様であろうと態度を変えずにそうしてきた。

 ただし、立ち向かってくる者に対しては一切手加減などしないのが『暴虐』たる所以か。



「は……これ以上話しても無駄でしょうな……仕方がない……起きろ! 出番だ『サイクロプス』!!」


 彼にとって隠し玉であった『其れ』がむくりと起き上がる。

 たったひとつの寝ぼけ眼を擦りながら、『巨人』が石柱を片手に立ち上がった。


 件の『無道』の悪魔迄とはいかないまでも、蒼空をも遮る巨躯。

 何でも噛み砕けそうな牙が夥しく。

 首をボキボキと鳴らしながら肩を軽く慣らし、手にしていた石柱をおおきく振りかぶった。



『ぬあ~……どれだぁ~……?』


 無駄にでかい声に堪らず耳を塞ぐ面々。

 司令塔の悪魔でさえも、鬱陶しそうにしている。

 片方の耳を塞ぎながら不遜に立ち尽くす『暴虐』を指差す。



「アイツだ! 思い切り、やれ!!」


『んむ~……じゃあ……いくだよぉ~……』


 気の緩い発言であったが、その威力は、先程の大鬼のものとは比べ物にならない。

 災害級の暴風を撒き散らしながら、石柱が降り下ろされる。

 周囲の事など鑑みないその一撃は大地を激しく震わせる。


 ……筈だった。


 『暴虐』の悪魔グランヴィアは、片手だけで、その暴威を抑え付けたのだ。


 大地を揺るがす事も一切無く。

 興味深そうに彼を見上げる。


「ふむ。中々に良い威力だ。申し分無い」


『……ぬ……ぬぬぬぬぬっ!? う……動かねぇだ……よお……っ!?』


 先程のオーガとの光景をそのままに再現するかのように。

 両手で得物をグランヴィアから引き剥がそうとするも。

 押し潰そうとするも微動だにせず。



「貴様らは『力の本質』を見極めておらぬ。だから伸びぬのだ。ほら、どうした?俺を持ち上げてみろ?」


『むぐぐぐ……ぬおおおお……ッ!!』


 躯が、天と地ほどの差があるのに、全く持ち上げられない。

 体重すら意のままに操作しているのだろうか。

 ふんぞり返るぐらいに気合いを入れるサイクロプス。

 それを嘲嗤いもせず、『暴虐』は冷静に観察している。



「違う。そうではない。こうだ」


 あまりにも、今だ嘗て有り得なかった、衝撃の光景を目の当たりにした面々は言葉を失う。

 開いた口が塞がらないとは、まさにこの事をいうのだろう。


 巨人が、逆に宙に浮かんでいたのだ。

 石柱から両手を離さなかったのは流石と言えようか。

 逆さまに見える景色に。



『不思議だあ……ね~……』


 などと、現実逃避の世界へと御招待されている。

 お前は変なおじさんか。だっふんだ。

 いや、そんな場合ではない。

 『暴虐』は更に、軽く掴んでいた石柱を巨人ごと振り回し出した。


 巨人が1回。巨人が2回。

 巨人が3回、4回、5回いぃぃ。

 巨人が6回いぃぃ……

 7回、8回、9回、10回いぃぃッ!!

 この件、CV若本さんで。

 数える羊のように。


 きゃっきゃ。うふふ。

 真新しいアトラクションのように。


 面白い程、サイクロプスは振り回されていく。

 回転数は次第に増してゆき、その姿は残像として焼け付く。

 やがて、解けてバターに成って仕舞うのではないかと思われる。


 果たして。

 その影響で遥か彼方へと吹き飛ばされていく魔物の軍勢の端々。

 残る者達は腹這いになり、両手で頭を覆い被せ、必死に耐え凌いでいた。


 に、しても……粘りますな。巨人さん。


 昨今、進撃ばかりしているものと思っていましたが。

 此処まで追い詰められた巨人も珍しい。

 というか、決してその両手を離さないのも一理ありましては。


 今、これを離してしまえば……キラーンと見知らぬ土地まで飛ばされた挙げ句、自身の記憶・存在など微塵にも残らないであろう。


 または、宇宙まで飛ばされる事などは必須。


 『やがて、それは考えるのを止めた』などと解説されるEDなどは迎えたくはない。おーばーどらいぶ。


 訳の分からぬネタに。脳内を、三半規管を激しく揺さぶられるも、精神を、意識を、必死に繋ぎ止める。


 絶え間なく押し寄せてくる吐き気を堪えて頬が膨らみを増す。

 止めろ。吐くなよ?吐くなよ?


 押すなよ? 押すなよ?

 前振りではない。そんな汚い絵面描きたくないんだよ。



「ほう。中々やるではないか」


 見事、己の全力の『振り回し』を耐えきった巨人に感心する『暴虐』の悪魔グランヴィア。

 はたと、彼を優しく大地に降ろし評する。

 ふらふらとさ迷い、定まらぬ目線を何とか維持し、悪魔グランヴィアに。

 それでも果敢に立ち向かおうと試みる。



「うむ。見事成り。よって、貴様に『力』を与えよう」


 絶対成る威力を顕す強健な拳ではなく。

 温かみを帯びる掌を彼に添える。

 瞳を閉じ、何かを念じるグランヴィア。

 邪悪なる波動が大気を揺るがし、サイクロプスに注ぎ込まれてゆく。



「其所なる、ひ弱な悪魔などに従うな。好き勝手に生きろ。今を以て、貴様に『執着』の名を授ける」


 だから~……

 何でアンタ達は何でもアリにするんだよ。

 食人鬼のアイツもそうだ。

 聞いてないにも程がある。むきー。


 途端に。


 『サイクロプス』と呼ばれた巨人の体躯に異変が生じる。

 二本の腕に。更に四本の腕が生えた。

 そして、相変わらず、ひとつ目なのだが、顔が三面皮へと。

 其々が、『怒り』『悲しみ』『笑い』を浮かべている。

 やべえ。やり過ぎたか?



「お前。名は何と言う?」


 聞くな!

 そして、答えるんじゃあねえ!



『おらぁ……アシュラってぇだよ……』


「うむ。今を以て。お前は『執着』のアシュラだ!好きに生き、好きに暴れろ!」




『カッカッカ……カーカカカ……カカカカカーーーッ!!』




 魂の咆哮が、 辺りを劈くらう。

 多分に、今までは、其処に腹這いになっている小悪魔に支配されていたのであろう。

 道具として。

 だが、彼は新たなる倦属へと昇華を果たしたのだ。

 もう、何者にも屈する必要などない。


 目前に逐わす偉大なる悪魔『暴虐』を他にしては。



「良いか? お前には誰にも勝る『力』があるのだ。何事にも屈する事なかれ。全てを覆せよ!」


 迸る何かが。


 元『サイクロプス』などと呼ばれていた巨人を昂らせる。

 その高揚は見事に彼を震い立たせた。

 彼は恭しく傅き、忠誠心を誓う。



『グランヴィア様……有り難きは……恐悦至極に。まこと。光栄に存じ上げます……』


 知的にも著しく進化を促した化け物が、今此処に産声をあげる。

 異世界大陸ファンタジスタに、新たなる脅威が誕生した。



次回は未定(おい!

いや、来週からしばらくはエピソードを何本か挟んでから。

第4章は新章を開始致しまする~……

( ノ;_ _)ノ

活動報告の方でも予定をお知らせ致しますので、御容赦くださいませ、ませ~♪

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