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ドラゴンNO涙  作者: caem
第3章・くだらない。全ての世界に、終末を。
53/96

覆す。そんな不条理、認めない!!その19。

異世回。もとい、異世界です。

今話はエロなし。グロあり?プチ長文?かもです。

そして、相変わらずパロっています(笑)

冒頭で諦めずに最後まで読んで頂ければ幸いかと?

(^_^;)

「お師匠様! こちらでも観測致しました! 『竜の涙』の魔力反応です!」

「私の方でも感知しました……遥か南西のジワナ諸島の方角です!」



「私の方の、感知では……北北東はブラー砂漠地帯にて……非常に濃度の高い反応が有り!」

「う……此れは……観測に依れば……かつて『炎帝』によって滅された『氷帝』かと存じ上げます……!!」



「こちらでは東北東の位置に強大なる存在を感知……これは……まさか……『炎帝』ッ!?」

「しかも……同時に『大天使』級の聖なる波動が多数有り!!」

「その地には、もうひとつ……邪悪な波動が今も猛々しく上昇中……あ、有り得ない……パターン黒……此れは……『無道』ッ!?」


 映し出されるその脅威に、唇は震え。

 思わず掌で溢れる絶望を塞ごうとする。


「そんな馬鹿な事があるか!! ヤツはその昔に『大天使』の軍勢により聖域にて封じられた筈だ!!」

「レインボーブリッジ封鎖できません!!」



 ??



 最後のはよくわからない。

 そら、封鎖できんわな、普通。納得。

 どうやら部外者だと思われるので、さっさと、退場して頂く事にする。

 あんたらは、会議室の名前でも真剣に考えておきなさい。全く、もう。

 管轄外なんですよ。


 事件はそう。

 会議室で起こっているのだ。

 ん? 違うな。現場だ、現場。

 青島。確保!


 LaLaLaLa。somebodytonight。




「皆さん。一先ず、冷静に。落ち着いてください」



 うむ。

 俺も一息つきます。茶でも啜ろう。

 初っぱなから脱線しまくりで申し訳ござらぬ。おろろ。

 拙者、働きたくないでござる。



 異世界大陸ファンタジスタに於ける『偉大なる魔術師』バレンシア=レーサ。

 彼女は、所狭しと長机が並べられた部屋の頂上・教壇に立ち。

 慌てふためく皆を、言葉少なく、垂直に振り上げられた片手で制する。


 各々に与えられた机上には小さな座蒲団に鎮座する水晶球。

 魔力を注がれた『其れ』には、地獄絵図が映し出されていた。


 多分に、その各地域を担当された部署であろうか。

 バレンシアが統率している『魔術師ギルド』の主要な面々が屋敷の会議室に招集されていた。


 前回、ダークエルフや悪魔によって襲撃を受けた面子の生き残り達は十分に回復したようだった。

 また、彼等だけではなく。

 大陸全土に散らばった実力者達もその会議室に招集されていたようである。



「ですが! 此のような事態に陥ってしまっては!!」


 血気盛んなる若手の魔術師が声を荒げ、主張を訴える。

 学生の主張。懐かしいね、どうも。


 激しく叩かれた机から危うく落ちそうになった水晶球を。

 咄嗟に支える助手が冷や汗を浮かべ、安堵を共にする。

 もちつけ。ぺったん。



「すみませんが……バレンシア様。そう、落ち着いてはおられない状況と見受けられます……」


 混沌に満ちた会議室の扉を静かに開ける。


 恭しく、礼儀を重んじる。

 当主・バレンシアに仕える老齢の執事。

 ランドリーが、いつにも増して真剣な表情で彼女に、皆にそう伝える。



「で……ランドリー。どうしたのですか?」


「は。バレンシア様。首都が闇の支配者の竜『黒帝』から襲撃を受けたとの事です。今は全軍で食い止めているらしいのですが……」


「「「な……なんだってーーーっ!」」」


「要請は?」


「今のところ、来ておりませんが……その余裕が無いのでは。もしくはディスク卿が差止めているのやも」


 あくまでも、冷静に会話に務めるバレンシア。

 途中の、皆の動揺をさらりと流しおった。ちくそう。

 ふたりは、お互いに推測を重ね合う。

 とはいえ、悠長な事をしている場合ではない。


 会議室に集まった面々が、その屋敷の当主でありながら魔術師ギルドの党首。

 偉大なる魔術師バレンシアの決裁を神妙な顔で待ち控える。

 俯き、深く息を吐く。



「……分かりました。皆さんはもうしばらく待機してください。私は少し席を外しますので……」


 何かを決意したような視線で皆に伝えるバレンシア。

 彼女は、ふらつく足取りで部屋をあとにした。

 それもその筈。

 彼女は会議室内にいた誰よりも疲労困憊だったのだ。


 食事もろくに取れず、睡眠も可能な限り削り。

 ただでさえ、王国や近隣の街や村からの事務などが次から次へと参り込んでくる。

 そのような状態で魔力や体力の回復など見込める訳がない。

 ひとりブラック企業である。


 浜辺に押し寄せる波の音が聴こえる。

 幻聴だろうか。

 いっそのこと、身を委ねて眠りに落ちてしまおうか。

 だが、それでも。

 彼女は、半ば無意識に身体を引き摺り、屋敷の地下へと向かっていった。



「……まさか此処に再び来ようとは……」


 各部屋、各廊下を通り抜け。更に続く地下は最下層。

 奈落の底までも続いているかのような螺旋階段をひとり、ひたすらに歩み続けた彼女。

 漸く辿り着いた場所にて息を整える。


 沈痛な面持ちで、壁にそうっと手を当てる。

 普段は、透き通るように美しい白い肌は燻みを帯び、手の甲に浮き上がる骨が痛々しい。


『汝の憐れみに感謝せよ』


 合言葉なのだろうか。

 多分に、彼女以外には聞き取れない、理解できない言語で呟いた。

俺、よく分かったなあ。不思議。


 すると……

 手を添えられていた壁に、丁度、ひと1人分が通れそうなぐらいの穴が空いた。

 彼女がその中へと入ると同時に、何事も無かったかのように再び壁は閉じる。


 長椅子がずらりと整列されており、周囲の壁には幕が降ろされている。

 正面には、煌びやかな装飾が壁一面に施され荘厳さが漂う。


 だが、何よりも目に付いたのは、十字架を背負う人形の彫像。

 項垂れてはいたものの、何処かしら、神秘的な輝きを醸し出している。


 彼女バレンシアは、『大聖堂』を思わせるその広い室内を、彼の彫像の元へと歩み寄る。



「……ぐ……う……ッ……」


 一歩ずつ、一歩ずつ歩み寄るバレンシア。

 何故か、その度に苦悶の表情を浮かべている。

 まるで、相対している彼の彫像に非道く拒まれているかのように。


 大量の汗が頬を伝い溢れ落ちるを厭わずに、止まらぬ全身の震えを無理矢理抑えつけ。

 それでも。彼女は、其処元へと懸命に歩み続けた。


 漸く辿り着いた頃には、立つ気力さえ失われたのだろうか。

 その場でへたりこみ、のし掛かる身体を床に両手で支える。


 何度も繰り返し深呼吸をしては、だらしなく放り出された両足を整える。

 姿勢を正し、固く冷たい石床に正座をする。


 深く瞳を閉じ、頭を垂れ、胸元で両手を合わせた。



「……もう、二度と此処には来ないと誓っていたのですが……無礼を承知でお願い申し上げます……」


 沈痛な面持ちで願う彼女に。

 その声は掛けられた。



『久方ぶりですね。憐れなるバレンシアよ……』


 直接、脳内に響き渡る盛大な声。

 あまりの衝撃に意識を失いかけるも、彼女は必死にそれを食い止める。

 頭蓋を揺さぶる鮮烈な光に、続く言葉を振り絞り出す。



「此のような事……許されざるべきかと存じ上げたのは承知の上で……お願い申し上げたく……」


 深々と頭を垂れ、真摯敬虔なる態度で恭しくたるも伝えようとする。

 今までの心労が祟ったのか、美しく滑らかな黒髪の一部は白く成っていた。

 額を床に擦り付け、バレンシアは心のうちを正直に語り告げる。



「唯一の貴方様におかれましては。既に御存知かと思われます。が……今、世界は混乱に満たされておりまする……」


 一句一句を発する度に、自然と流れてゆく血潮。

 嗚咽すら我慢していたのだが、喉元から、体内から溢れ落ちる血液は留まるを知らず床一面を染めていく。


 も、もう。止めなはれ。

 貴女が逝ったら話が続かないってのよ。

 あわわ。

 てか、真面目なキャラがおらんようになりますやん?



『ふむ。その覚悟はしかと受け取ろう……だが、我に何かを果たす義理など毛頭無い』


 ……あんた、鬼か。


 誰だか知らんが、そこまでして祈りを願いを求めているのに他人行儀かよ。



「些細な恩恵だけで良いのです……どうか……私の命を以てしても良いので……お助け頂きたく……」


 せやから、アカン言うとるやろ。

 分からんやっちゃな。ホンマに。

 貴女がおらんようになったら収集つかんのや。

 決められたstoryには、ちゃあんと従って欲しいのです。

 切実なる俺の願い。


 そんな他所の意を介さずして、彼女バレンシアは。

 内に秘めた僅かな魔力の輝きを、生命の全てを彼の彫像に捧げるべく。

 懐に隠し持っていた銀の短剣を取り出し、自らの心の臓に突き刺した。



「……皆が……救われるの……で、あれば……この身など……貴方様に……全てに……捧げましょう……」


 溢れるを留まることを知らず。

 辺り一面を、涙ひとつ流さずに。

 此れが摂理なのだと、己の生命で埋め尽くしてゆく。

 血溜まりに、その身を委ね、突っ伏せてゆくバレンシア。

 心なしか、その表情は豊かに笑みを浮かばせていた。



『うむ。しかと承った!バレンシアよ……嘗ての。あの時より、見事に。遥かに精進し、成長したようであるな』


 唐突に、鐘の音は大聖堂内に盛大に響き渡る。


 息も絶え絶えに。

 石床一面を血溜まりに染めゆく身体を微かに震わせ。微細なるを。

 僅かな意識を限界寸前まで失い掛けたバレンシアは、彼の神聖なる彫像を首だけで見上げる。



「……そ……それでは……」


『うむ。我が威光に従い、粗方の問題は取り除く事を宣言しよう。だが『帝』の名を持つ者や、その他の尋常ならざりし脅威及び悪意は取り除く事は出来ぬ』



「あ……有り難き……を……」


 おい。逝くな。逝くんじゃあねえ。

 頑張れ。負けるな。

 はっ! 今こそエールを送らねば。

 負けないで、ほらそこに。最後まで走り抜け……るな!

 最後ってったら縁起悪いじゃあないか。



『憐れなる者よ。お前にはまだ、残された命運が有りあまる。今はまだ、昇天される時ではない』


 その声が、彼女バレンシアに届くを微かに耳を擽る。

 天空から一筋の光が舞い降り、彼女を包み込んだ。

 途端、彼女の身体からは。

 生命力が光輝きを経ては充足しつつ、暖かなる優しさが全身を満ち足りてゆく。



「……こ……これは……」


 先程まで床一面を満たしていった血溜まり等はその姿を既に無くしていた。

 彼女の体内には、嘗ての疲労などは。その一切が掻き消されていたのだ。



 …………


 なんだよ。やりゃあ出来んじゃん。

 焦らせるなっての。ったく……



「……宜しいのですか……私のような……此のような未熟な魂をお救いになっても……神よ……」



 え。

 今、何てった?

 嘘。

 聞き間違えたかな。俺……


 神様に喧嘩売ってたの? まさか。はわわ。

 暴言の数々、御許しくださいませ。かしこ。

 かしこまり。かしこ。



 生命力が。魔力が光輝きを以てして。

 バレンシアの内に充足し満ち足りてゆく。



『うむ。矮小なりし者よ。お前にはまだ、やらねばならぬ数々の業が待ち受けておる。くれぐれも精進を怠らぬ事なかれ……』


 ぬう。軽くスルーされた。

 ちょっとぐらい構ってくれても良いじゃんかよ。ちぇっ。



「は。この身この命を掛けましても。必ずや御意向に……殉じますれば……」


 恭しく傅く。

 バレンシアは今まで感じた事の無い想いを抱き、素直に涙を流した。

 やがて消えゆく唯一の聖なりし存在を後にして。

 今まで以上に迸る生命力をその身に宿し。


 潔く。

 大聖堂を去った後、再び会議室に顔を表した彼女に、皆が様々に現状を伝え歓喜に浸る。



「バレンシア様!! 広範囲に及び、拡張されていった『竜の涙』の波動が薄れてゆきました!!」

「此方も同様に……各地域の些細な魔力の乱れが沈着した模様……とりあえず均衡は保たれました……」

「ですが……未だに『帝級』の竜は衰えを知らず……如何なさいましょう……か……?」



 会議室に集まりし面々が期待を馳せ、羨望の眼差しにてバレンシアに問い詰める。

 皆のその意に対して。

 力強く。


 『偉大なる魔術師』バレンシア=レーサは答えを発する。



「皆さん。危機は一先ず回避されました。ですが……此れからが正念場です。互いに手と手を取り合い、より良い未来へと導きましょう!!」


 その鶴のひと声は、見事に皆の不安を掻き消し、なけなしの己を鼓舞させた。

 まだ、此れからが本番なのだ。



 くれぐれも、侮る事なかれ……。


あと1話で今章に区切りをつけ、終らせようかと。

で、10月頭からはエピソードを幾つか、ぶッ込んで。

少しマッタリしてから新章(第4章)に突入する予定です。

御容赦の程、宜しく、お願い、申し上げ奉る~……

( ノ;_ _)ノ

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