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ドラゴンNO涙  作者: caem
第3章・くだらない。全ての世界に、終末を。
51/96

覆す。そんな不条理、認めない!!その17。

無理矢理捻じ込んだ。後悔してみる。

現代世回。いや、現代世界です。

超茶番劇。エロありです。百合っぽい。読み飛ばしても可。

 カラカラカラ……


 軽く刻む時が生命を紡ぐ。




 彼女達、女子高生仲良し三人組は無事私立の高校を卒業し、就職の春を迎えた。

 其々が其々の道を歩み始めたのだ。

あの厳しくも懐かしい、より良き日々を思い出しながら。


 もう、あの……

 『異世界転移』などという戯けた理などに関わらなくても良い。

 やっと、漸く全ては清算され、真っ当に『いち人間』として暮らしてゆけるのだ。


 3人は此れから先に待っている鮮烈に目映い、新しい人生に突き進んでゆく。



「ヒナちゃんの番から、だね~……」


 カラカラカラ……

 時は刻む。


 颯爽と足取りは軽く、明るい未来を欲す。

 大きな一歩である。出だしは好調。


 だが、そこに至るまで、下積みも長く人並み外れた涙無くしては語れない苦労もしてきたであろう。

 一畳一間の狭苦しい賃金の安い宿で、その身をやつしながら。

 漸く、彼女がその手に掴んだ輝き。職業。

 全国民が憧れを抱く尊ばれき職業『アイドル』。



「ヒナちゃあん……あぐっ……ぐすっ……よがったねぇ~……ぐすっ……」


「長い道のりだったな。おめでとうッ!! ヒナ!!」


 抱き締めあい、まるで自分の幸せであるかのように涙を交わし合う。

 トールはそんなヒナをカナミを力強く抱き締めつけた。



「痛いよ、痛いってば……もう。ありがとうね。ふたりとも……」


 自分を祝福してくれるふたりに対し、伝う涙が溢れるを必死に堪える。

 ヒナの第二の人生が幕を開けるのだから。


 漢泣き。

 辺りの目線など全く気にせずに。


 両拳を振り上げ、激しく号泣しかねない程その身を震わせているトールの涙を。

 ヒナは、手にしたハンカチでそうっと、優しく撫でる。


 カナミも、もう。

 瞳に溜めた愛がはち切れんばかりに。

 そんな彼女の頭を、髪を。

 優しく、何度も解き解してあげるヒナは告げる。



「ん。アタシは大丈夫! さ、次は……ふたりの番だよ!! 頑張って!!」


「うん……あ、アタシの番だね~……」



 カラカラカラ……

 時は刻む。



 次に幸せを掴みとるのは果たして本当にカナミなのだろうか。

 彼女も、ヒナと同じくして、大きく一歩を前進した。


 辿り着いた先に待っていた人生は……


 マニアックな住人達が巣食いし『地下アイドル』だった。

 確かに、細々と。地道にネットで活動はしてきたのは否めない。

 まさか、こんな形で其れが実るだなんて……


 ある意味、カナミの本気が神様に届いたのかもしれない。

 感極まり、握り締めた右拳を天空に掲げて想いを天に届ける。

 『我が生涯に、一片の悔い無し』と。



「わ……! やったじゃん! カナミ!! 念願の……ぐすっ……夢がやっと叶ったんじゃない!!」


 カナミに飛び付くヒナは嬉しさを隠すなど到底できない。

 頬を擦り寄せて、お互いの涙を混じり合わせる。



「カナミ……お前も、もう。立派な大人に成ったんだな……だけど、社会は厳しいぞ。今迄以上に、充分に気を引き締めて、な?」


 馬鹿っぽい、軽いチャラい男なんぞに騙されるんじゃあないぞ!とばかりに。

 まるで、カナミの実の父親の代わりにと激励叱咤。

 及び、様々な想いを彼女の胸に突き付けるトール。


 だが、見逃せなかった。明らかに、トールは。

 カナミが、此処を離れて、どこか遠くに行ってしまうのではないかと。

 彼女を心配しすぎるあまりに、唇を噛み締め、零れ落ちた涙が床を濡らしていていたのだ。



「トール~……大丈夫? アタシは大丈夫だから~……そんなに泣かないでよ~……」


「な……泣いてなんかないやい!! これは心の汗だッ!!」


 絶え間無く押し寄せる嗚咽を堪え。

 ぐいっと掌を交互に、涙を拭き取り、平静を装うトール。

 擦りすぎて、赤身を増した眼底ないし両頬が、逆に痛々しい。


 その様子を心配したカナミは、とっておきの化粧水をガラス棚から封印を解いた。

 やっと、日の目を見れた化粧水達は、同じくして、並ばれたフィギュアとおさらば。

 『ふふん!我らは貴様らとは格が違うのだ!』と激しく主張している。


 だが、そのガラスケースに立て並べられたフィギュアの数々は逆に申し立てるであろう。

 『いやいや。あんたが此処に我々と同じように置かれていたのが可笑しいのだ』と。


 その配置を施した主。

 カナミは、ピチャピチャと。

 いやらしくない手つきで。


 片掌の窪みに溜められた其れを軽く混ぜ合わせる。

 そして、微かに赤く爛れたトールの頬に、眼底に優しく塗り込み、愛撫する。



「ダメだよ~……せっかく……トールはさぁ……今。やっと、恋をしてるんだから~……恋する乙女なんだよ?」



 爆弾は、今を以て、解き放たれ投下された。



「うにゃあああああッ!! 今! 思い出させるにゃあああッ!! 今! それを言うにゃあああッ!!」



 禁句。

 咄嗟に思い出される『灼熱』の代名詞。

 暑苦しい漢・ジャニアースとの慕情。

 若気の至り。

 及んだ。其の身に委せた行為『接吻』。


 何て、馬鹿な事をしたんだと未だに後悔の念は猛々しく己を狂わせる。

 カナミの室内で、火照りあがる顔を両手で隠し、一際激しく転げ回る剣道ガール。


 むぅ。可愛い。

 萌える。俺、トールが好き。イチオシ。



「でも、さ。トールは凄いよ……アタシなんて……そんなのこれっぽっちも無いからさ~……」


 何処か遠い目をして懐かしむヒナ。

 未だ女子高生なのに、既に悟りを開いているのだろうか。


 だが、彼女は気付いていないだけなのだ。

 いつでも活発で、キラキラと爽やかな汗を流す美少女・女子高生。

 学園生活なら、いざならず。

 

 いや、それでも。

 異性、同性年齢を問わずして。

 普段から彼女に好意を抱く異性の数は、留まらずを知らない。


 それを未然に防いでいたのはカナミであり。いや。

 その殆どは、巨大なるを威圧的なりし野獣娘の手柄か。

 剣道ガールのトールが影ながらに応援に徹していたからであったのだから。

 余計な真似はしないように。


「まぁまぁ……良いじゃあないの。さて、次は……トールの番だよ!」


 じゅるり。

 わくわく。てかてか。どきどき。はぁはぁ。


 カナミは、彼女……トールの人生を。

 彼女の情欲をひたすらに待ち臨んでいたのだ。

 シャッターチャンス、到来。


 カラカラカラ……

 時は刻む。


「む。いきなり……子供をふたり宿す……などと……」


 感極まりない。

 愛しきは『灼熱』の某・彼と結ばれるを待たずして、唐突に訪れた幸せ。

 祝福の鐘が鳴る。りんごーん。りんごーん。


 紅潮した頬が更に茹で上がります。ぽっぽーっ。汽車は逝く。

 垂れる涎がみっともなく。淫らに表するは白眼。

 ほんのり開かれた口は彩りを桃色に。

 こら。舌を出さない。はしたない。

 貴女にアへ顔は似合わない。


「ほら、トール……我慢なんてしなくてさぁ……?」


 促された意向に問わすして。

 答えなんて求めていない。

 カナミは己の欲望に、その身を委ね、何かに期待してモジモジしている。

 ……貴女、どこまでも欲望に忠実ですね。


「えっ……我慢しなくて良いのか……?でも……」


 はたと、己を取り戻したトールは割りと真剣に恋愛相談。

 何せ、本命のあの漢には自分ではない『想い人』がいるのだから。

 先に、手を…唇を差し出したのだから、今のところは一歩リードしているとは思う。

 あぁ、またあの温もりも思い出す。

 火照る頬を隠し、純粋に『女』の核が疼く。



「お~い。帰ってこ~い。トールさ~ん?」


 彼女の直ぐ目の前で、催眠術士が掛けた暗示を解くように何度も指をならすヒナ。

 というか、多分。

 人生のルールを先飛ばししている事に、他のふたりは気付いていない。


 先ず、就職のマスに止まり、するかしないかを選択しなくてはならないのだ。


 はい。

 まぁ、既にお気付きの方々はおられるでございましょう。



 彼女達、女子高生仲良し三人組は。

 カナミの部屋で某・人生ゲーム なるボードゲームに興じているのです。



「ってかさ。『初ちゅー』って。そんなに、こう……ぐっと来るモンなの??」


 はい、出た。

 十数年間生きてきて、色恋沙汰を全く経験していない天然記念物ヒナ様。

 ある程度の『そういった知識』はあるみたいなのだが、如何せん。

 知り合った異性はいつも男友達止まり。

 今以上、それ以上、愛する事など決して無い彼女。

 断言する。わいんれっどのこころ。


 想いを密かに抱く相手にしてみれば。

 彼女に出会う度に胸が苦しく、切なく締め付けられる事この上無いであろう。


「ん~……トールは、さぁ。ずうっと剣道一筋だったからね~……」


 何でしょうか。

 カナミがヒナをじいっと見つめモジモジしている。

 何だかドキドキする。

 裸待機で様子を伺う。俺。



「ん! んんんう……ッ!!」



 おーまいがっ。

 突然の雨に打たれて。



 カナミはヒナの唇に唇で蓋をした。

 柔らかい桃色の襞と襞が重なりあう。

 しっとりと濡れた唇同士がオタク色満載の室内を熱く染めている。


 その異様な光景を目の当たりにして、ドン引き。飛びずさったトール。

 辺り一面には百合の花が咲き乱れてゆく。



「ん! んんん!? ……んふぅ……」


 気のせいだろうか……

 ヒナがその変態行為を受け入れつつあるのは。


 カナミの情熱的な激しいKISSはヒナの心の奥を蹂躙し続ける。

 『You Wanted the Best!?』

 そのKISSではない。ふたりは、決して『KISSARMY』でもない。


 あ。ちょいと。舌を挿れるのは反則ですよ。

 そして、舌で彼女の歯を数えないでくださいな。


 ひい、ふう、みい、よお。いつ、むう、なあ、やあ。

 カナミが感じてみるに、上下共に、虫歯の気配は皆無ですね。

 良いなあ。羨ましい。


 僅かな歯石すら、感じ取られないのだから。

 歯磨きって大切ですよね。糸楊枝って、凄く便利。


 ちょっと、カナミさん。

 舌の届く限りに奥まで挿れないでくださいよ。

 てか、どこまで伸ばせるんだ。


 あと。しれっと、ヒナの口許から零れ落ちそうになる涎を吸わないでください。

 ヒナさんや。

 貴女もカナミの偏愛にイチイチ応えないでください。

 舌を激しく絡め合わせないでください。何処で覚えたんだよ。


 お互いに欲し合い、支え合う肩を決して離そうとしない。


 ……いい加減にしないと俺が怒られてしまいます。

 あの、もしもし?聞いてますか?おーい。

 ってか、肺吸力。長いなぁ。



「……ぷはぁっ……どう?分かった?ヒナちゃん……うぇへへへ~……」



 どこぞのエロ親父……もとい。

 ひとつ年下の幼馴染み。

 カナミに初めての唇を奪われ、とろんと瞳を潤わせ、躯を小刻みに震わせているヒナ。



「……あふ……んう……はぁ……はぁ……何か、分かる気がする……」


 おい。もちつけ。気を確かに。

 ヤツに騙されるんじゃあないぞ。

 このままだと貴女、カナミから離れられなくなりますよ。

 『カナミ依存症』。

 今、ここに新しい病気が発症しつつある。

 彼女達の行為を傍目に観ていたトールなどは、何故か身悶えている。


 イカン。


 異世界冒険ストーリーは何処へ。

 危険な女子会の夜はこれでも、まだ始まったばかりだというのに。

 紅潮させた頬を顕に、見つめ合うヒナとカナミ。

 俺についてこいよ!と愛しの彼女を抱き寄せる。

 うっとりと頷くヒナ。


 此れはヤバいと感じたトールはその雰囲気を察したのだろうか。

 あくまでも、私はnormalだと云わんばかりに、そそくさとその場を後にしたのであった。


 トールさん、大正解。

 翌朝、目が覚めてみたら。

 何故か同じベッドで、しかも、裸同士だったヒナとカナミ。

 チュンチュン。朝チュン。

 何があったのかは、また、別の話。


 あれ?まともなヒロインじゃあなかったっけ?

 どうして、こうなった。

 誰のせいだ。




 あ。

 俺のせいだった。



前回の雰囲気ぶち壊し。やっちまったなぁ。

後で修正効くか、なぁ……

(  ̄- ̄)

次回更新は9月28日の木曜日辺りで。多分。

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