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ドラゴンNO涙  作者: caem
第3章・くだらない。全ての世界に、終末を。
50/96

覆す。そんな不条理、認めない!!その16。

異世回、もとい、異世界(笑)

再び『無道』の太郎さんです。

いや、他にも新キャラか?

 再三再四。

 時代は繰り返すと云われているが。

 果たして。今回は…




 ずずん。ずずん。と。

 地鳴りが響き渡る。


 カタカタ、どころではない。


 住人達は、その震動に激しく怯えては、其の身を寄せあっていた。


 窓に添えられていた花瓶が床に落ちて割れた。

 しっかりと窓枠を止めた筈の棚はその地鳴りに応えて、勝手に開く。

 仕舞い込んでいた食器が次々に散らばる光景などに、最早構っている余裕もない。


 辺りは阿鼻叫喚の地獄絵図か。


 小さな村であったが、幸せな家庭が集う、自然豊かに。

 豊穣な実りが営みを、更に豊かに。

 村民、皆の笑みが絶える事の無い、良い幸せのかたち。


 だが、それは最早。

 右往左往し、ひたすらに逃げ惑うか、または、運命に身を委ね、じっと身を隠すか。

 生きる事は決して許されない地獄へと化していた。


 晴れ渡っていた、気持ちの良い蒼空を果てしない闇が埋め尽くす。

 一瞬にして。それは昼を、夜にした。


 どこぞの魔術師が、そんな魔法を使えるらしい噂は聞いた事がある。

 だとか。

 身体を擦れば、昼と夜を転換させるらしい魔法の壺などの噂だとか。


 しかし、彼等。

 異世界大陸ファンタジスタの住人達が目の当たりに、今。

 体験しているのは、まごう事なき『大震災』ないし、『大天災』なのである。


 『あれ』にとっては、唯の一歩かもしれない。

 だが、殆どの生き物にとって、それは破壊の象徴でしかなかった。



「母さん! 怖いよお!」「大丈夫! きっと、何事もなく通りすぎてゆくわ!」


 親子は互いに抱き締めて愛を離さず。

 恐怖に抗う為にと、精一杯の言葉で現状を誤魔化し合う。

 一方、そんな被害甚大なる村の外では勇敢なるも無謀に立ち向かう者達が猛り、挑みかかる。



「射て! ……射てぇッ!!」「隊長……もう……残り僅かです……」


「怯むな!必ず……ヤツを仕留めるんだ!! 己を鼓舞せよ!!」「とは、言っても……これじゃあ……もう……」



 あからさまに絶望に浸る部下を見て苛立ちを覚えはするものの。

 如何せん。現状を認めざるを得ない。

 隊長らしき彼は歯軋りを鳴らし、遥かに聳え立つ相手を睨みつけた。



『うううう……何かしただかあ……痒いだよお……』



 ポツリと呟いた。

 それだけで大気は震え上がり、衝撃が辺りを凪ぎ払う。


 封印から解き放たれた悪魔『無道』。

 その悪魔はあまりにも大きすぎた。

 今、その現状に立ち向かっているこの村だけではない。


 緑豊かに育まれた山々でさえ、彼の影に呑み込まれていたのだから。

 彼がただ歩を進めるだけで、その足元の全ては踏み潰され壊滅の色を濃くしてゆく。



「く…ッ!! このまま……潰されてたまるかッ!!」


 そう告げ、隊長はひとっ走り。

 一際目立つ、大きな孥に手を掛ける。

 据え置き式の大型弩砲である。

 『バリスタ』と呼ばれる攻城兵器。



「おい! デカブツ……喰らい……やがれぇぇぇッ!!」



 狙うは一点。

 某・英雄伝説に因み、狙われた箇所は足の付け根。アキレス腱。

 ……ってか。

 もし、それが巧くいったとしても山をも軽く跨いでゆく巨大な悪魔『無道』が倒れてきたら……


 いや、それは考えないでおこう。



「……どうだッ!!」



 意気揚々に決め台詞。

 だが、それは決して言うてはならない一言。

 『無道』の悪魔は親切丁寧に彼に応える。ポリポリ。



『んあ~……何か痒いのねん……まぁた虫にでも刺されたのかなぁ?』



 全く気にしていない。

 気にしない。気にしない。

 望みは高過ぎた。果てしなく。


 太く逞しい彼の足には傷跡ひとつ着いていない。

 ささっと足元を擦り、再び、何事もなかったかのように。

 彼はその被害甚大な村を気軽に通り抜けようと、歩みを進める。


 ってか。

 『のねん』とか『んあ~』って何よ。


 あんたは、イヤらしい災厄をプレイヤーに押し付ける某電鉄ゲームの愛らしい悪役のパンチパーマの奴かよ。

 賽子を降ったら、折角良い目が出たのに振り出しに戻すどころか。

 マイナスの負債をたちまちぶっ込んでくる天災かよ。


 確かに彼、『無道』の悪魔の巨大さは其れに近いが。


 もしくは。はたまた……

 汚物を撒き散らかしながら競馬場を席巻する某・牧馬王か。

 ネズミが頭に乗って騒がしく喚き散らすのは誰得だ。

 馬並みなのね。貴方、とっても。

 馬が合うからいつも、一緒。

 いや、俺はそこまで御立派ではない。


 こほん。

 話は逸れまくるので。

 視線をもとに戻してみましょうか、ね。



「こ……このままでは……ッ!!」


 歯軋り好きね、隊長さん。


 唇の端が切れて血が出ていますよ。どうどう。

 少しは落ち着いてくださいよ。

 ほら、其処らで地に伏せている部下達を見倣ってみては如何でしょうか。


 数人、身体の原型を留めていませんけど、ね。



 と、その時であった。



 「え? どんな時? 何時、何分?」というような突っ込みは御遠慮くださいませ。

 俺も、大概な。



 天空から、神々しい輝きが堕ちてきた。

 その村の住人達は悉く跪く。

 組んだ両手を胸に抱き、閉じられた瞳は祈りを捧げる。



「これは…聞いていなかったですね…竜の開放の件ならば、いざ知らず…あまつさえ、災厄を解き放つなどとは……」



 光輝く翼と、大いなる威光。

 従えしは神聖なる大軍団。


 片手には聖なる槍を構え、『無道』の悪魔・太郎と対峙するは『大天使』カリゼラ。

 浅く溜め息を洩らし、片手を高々と掲げては軍団を制する。



「良いですか。貴方達は周囲の『粛清』を。私は……彼『無道』を食い止め、再び封印を施します」「ははッ!」


 配下の答えを待たずとして。

 『大天使』カリゼラは相対した悪魔に話し掛ける事無く。

 聖なる槍を、瞬時に彼の腹に突き立てた。



『ぬぐわぁぁぁッ!! 痛えだよおおおッ!!』


 その叫び声すら、地上にとっては無慈悲なる破壊行為。

 しかも、その激痛の証しにと、両足を踏み散らし泣き喚くのだから。


 大地は激しくその身を揺らし、大気は泣き喚くを以て。

 其処らにあった小さな村など、一瞬にしてその姿を灰塵へと化した。


 吹き飛ぶ人の群れ。

 瓦礫も飛び交い、皆、命の悉くを散らして逝った。


 同じくして。

 『粛清』の任に就いた下級の天使達も其れに捲き込まれるは当然であろう。

 大多数の天使達は『無道』の絶大なる暴力により、予期せぬ天寿を全うしてゆく。



「むう。いけませんね……これ以上手間を掛けては……」


 至って冷静に現状を鑑みる『大天使』カリゼラ。

 悪魔『無道』に突き刺した聖槍に、理を灯す。



「汝の罪を問う。裁きたまえ。『断罪の威光』ッ!!」



『うぎやあああああッ!!』



 腹に突き刺された聖槍は激しく光を放ち、輝きは増してゆく。

 と、同時に。

 彼の体躯は僅かに、徐々に縮んだかのように見えた。



「全てを。ひとつひとつ。罪を裁き。許しを乞いたまへよ。『無道』なりし災厄よ」


 聖槍の輝きは更に増幅してゆき、光は辺りを浄化してゆく。

 涙を流しながら、彼『無道』は無慈悲なるその裁判の決断に物申す事も一切叶わず。

 どんどん、どんどん。その巨躯を小さくしていった。



『お……思い出したどお……おめえ……前にもおらを封じ込めたヤツだべ……』



 血の涙を流しながら、カリゼラを睨み付ける『無道』。



『おらあ、おめえら、許さね……じっちゃん。ばっちゃんを見棄てた……神さん。ぜってえ……許さね……ええええんだあああッ!!!!』


 憎しみが、愛しさと共に際限無く涌きいずる。

 己という存在を否定し続ける、腹に突き刺された聖槍を無理矢理引っこ抜く。


 夥しい、穢れ無き命の証を構わずに流出させる。

 意外にも、サラサラで健康的な血液を流し、其れは大地を満たしていった。



『おめえら、許さね……おら……ぜったい……許さね……』



 息も絶え絶えに。膨れ上がる復讐心。

 其れは彼『無道』の体躯を再び巨大化させていった。



「……天使達よ。集いなさい。『大結界』を施します……」


 『大天使』カリゼラは、その脅威に改めて敬意を評し、決断する。

最悪の災厄を目の当たりにして、形振り構わずに。



「カリゼラ様!? ですが、此の地は『認められた聖地』ではありませんが!?」


 抱いた不安を素直に吐き出す下級天使。

 其れもそうであろう。

 何せ、此の地は既に。

 幸せも豊かに必死に営み、住んでいた村人や。

 有りとあらゆる敬虔なりし生命が奪われてしまった穢れた土地なのだから。



「気にするでは有りません。私の聖能を消費致しますので……流石に顕現力は薄まりましょうが……」


 覚悟完了。


 大天使カリゼラは自らの命を懸けて『封印の大結界』を施そうとしているのだ。


「は……御意に。致しましたれば……」


 生き残っていた下級天使達は『無道』の悪魔・太郎を取り囲み円陣を描く。

 決まった位置、配置に浮かび、其々が祈りを捧げあい聖なる反響を促す。



「皆のもの。良いですか……では……」


 焦りは禁物。

 息を深く吐き出す。

 次なる詠唱の為に呼吸を、精神を整える。



「今、此処に於いて。我の言霊を。彼の者に導かれんとす。開け!『神威の封陣門(サンクチュアリ)』ッ!!」


 カリゼラから放たれてゆく夥しい光の数々が下級天使に導かれてゆく。

 やがて、其れを承った彼らはお互いに光の連鎖を共有する。

 『無道』の悪魔を取り囲んだ、大いなる威光による聖陣が其の効果を発揮しようとした。


 その時。


 事を成すには必要不可欠のひとつが。

 天使のひとりが、何処からともなく発された、鮮烈なる灼光に潰された。

 熱線は大気を切り裂き、焦がしてゆく。

 そして、悪魔封印の儀式は、無駄に終わりを告げた。



「……何ですか……今のは……」


 とりあえず、助かった『無道』の悪魔・太郎。

 彼は一旦大地にその身を預け、息を整え、事の成り行きを見守る。



『我は、その者と同じくして、復讐にきたに過ぎぬ。いざ、立ち向かえよ。憎き天使どもよ……』



 奈落の憤怒か。

 焔は猛々しく。

 羽ばたきを潜めたその翼までにも獄炎は盛る。



「貴方……でしたか」


 カリゼラは熱き咆哮の元へと視線を向け、普段通り、冷静に務める。



「……天界より開放されし竜の上級種『炎帝』でしたか……何故に邪魔をするのですか?」


 部下の天使を葬られた余波は、どうやら本来『大天使』カリゼラに向けられたものだったらしい。

 その斜線上に居たので、あたら、命を無駄に燃やし尽くしてしまった下級天使には申し訳ないが。



『我は、其奴に加勢しにきたわけではない。ただ、貴様ら天使に今迄の恨みつらみを果たしにきただけだ』


 再度放たれる焔の咆哮。

 熱線は、一瞬にして、カリゼラの配下を消し去った。


 今、此処に於いて。


 天界の第一級『大天使』カリゼラ。

 聳え立つは異世界大陸ファンタジスタに於ける災厄成りし『無道』悪魔・太郎。

 そして、今迄の鬱憤。うさを晴らしにきた焔の巨竜『炎帝』。


 三大怪獣による激しい闘いが始まろうとしていた。






 それを傍目に。


 モニター越しに、愉しむ悪魔『残虐』は。

 まるで、映画にでも興ずるかのように。

 ゲームでも楽しんでいるかのように嗤いを伴い両肩を震わせている。

 当事者達は、誰も、気付かないでいたのは当然かと。



『くくく……か……ッはははッは!! ……良いねぇ良いねぇ~……もっと俺を愉しませてくれよ!!』




 あれ……??




 ヒロイン達。




 出番が無いや(爆)



ヒロイン達……出番遠いなぁ。

誰のせいでもない。俺のせいだわ(爆)

次回更新日は9月26日か9月27日の火曜日、水曜日辺りにしようかと?(^_^;)

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