覆す。そんな不条理、認めない!!その15。
ちょい迷いました。挙げる順番を……
現実世界、異世界。混じっています。
今話。グロエロは無い……かと?
伏線回かな?
(^_^;)
「ったく。あいつら気付くのが遅すぎなんだっつーの……ばッかじゃね? …か…ッはははッは!!」
手元に置いてあった菓子袋を開けて、おもむろに、中身を口へと放り込んだ。
ポテトチップスと表記されている。
直に大量に掴んだので、手はべたべたになってしまった。
近くにあったウェットティシューの箱から何枚かを引き抜き、両手を綺麗に拭いたつもり。
「さぁて~……アッチはどうなってんのかねぇ。…く…ッふふふッふ!」
再びモニターに食い入るように、まだ少しベタついた手でマウスを弄くる。
ダブルクリック。カチカチと。
暗く締め切った室内に、汚ならしい咀嚼音とともに機械音は、細やかに響き渡る。
「お……。いーね。いーね! …だ…ッはははッは!!」
笑い声とポテトチップスの欠片が辺りに盛大に飛び散った。
未だ、くすぶる笑いを堪えつつ、側に置いていた炭酸飲料で一旦、口の中を清める。
途端に訪れたゲップが、一際汚く室内に響き渡る。
小休止。
直ぐに、いつでも吸えるように胸ポケットに入れていた煙草を取り出し、うち1本を無造作に選び口に咥える。
しからば、ライターで着火。
すぱすぱ。ぼっ。
「……ふぃ~……ったく。飽きねえな! あいつらは!!」
僅かに。
小刻みに震える肩は心底、状況を愉しんでいるようであった。
空になった炭酸飲料をぽいッとゴミ箱に投げ入れた。外れた。
でも、そんな事は気にせずに煙草を燻らせながら、椅子に背中を預けた。
天井を染めてゆく白煙を眺め、軽く瞳を閉じる。
落ちてくる匂いが身体の隅々まで浸透するのをゆっくりと味わう。
「よっしゃあ……さて。お次は……ッとお……」
軽く一服を済ませた後、再びモニターに意識を集中させ、映し出された幾つかのファイルの中からひとつを選ぶ。
カチカチ。ダブルクリック。
「……あ……? ……んだこれ。繋がんねぇ……おい……おいおいおいッ! あんのハゲ……何して、くれて……やがんだゴルぁッ!?」
モニター越しに苛立ちを吐き出し、怒りの表情は手にしていた菓子袋を床に投げ付けさせた。
散乱したポテトチップスが、唯でさえ汚い部屋を更に汚す。
「……クッソがぁ……舐めた真似してくれてんじゃあねーぞッ!!」
まだ火の着いた煙草を口の端に咥えながら、両手が、両指が忙しなくキーボードを叩き付けてゆく。
見た事も、聴いた事もないような数字や文字の羅列が喧しく並ばれてゆく。
戦慄のメロディを奏でる。
超高速のタイピング技術が冴え渡り、鳴り響く。
と、同時に。
周辺機器の上に置かれていた、やや小さめの水晶球が激しく点滅を繰り返す。
室内はまるでディスコのように、色鮮やかに照らされてゆく。
やがて、暗く締め切った室内は目映い光に包まれた。
「はぁ…はぁ……はぁ……。んッだよ、この野郎……この、俺様を……舐めんじゃあ、ねー……ぞ……ッ」
流石に疲労は隠せない様子。
大量に溢れ出している鼻血がそれを語っている。
一先ず、それを掌で拭い、深呼吸をひとつ。
「ふうぅぅぅ………………よろしくお願いしまぁぁぁぁぁすッ!!」
enterKey。push。
願いを込めた人差し指が優しく捻り込まれた。
…………ガコッ…………
鳴りを潜めていたそれは突然、強制起動を促し、光を放つ。
……ヴゥン……
モニターに映し出された男はおもむろに、怒声を吐き散らかした。
『ゴルルルぁ!! てめえッ!! この変態野郎ォッ!! 何シカトこいてやがんだぁッ!!』
ガタンッ。ドサッ。
ごろごろごろ。ずしゃあ。
きょろきょろ。きょろきょろ。
突如部屋に鳴り響いた野蛮な怒声に驚く彼。
座り作業に没頭していたのだが。
その椅子から、激しくも盛大極まりなくド派手に転げ落ちた。
その際、色んな処にぶつけてしまったのだろうか。分かる気がする。
流れ落ちる鼻血をそのままに。
ズレた眼鏡も掛け直さずに。
作業机の上にそうっと顔を出し、辺りを注意深く窺う。
やがて、その声の犯人を突き止めた彼はほっと一息。安堵した。
「ふぅ……何だ。君でしたか……驚かせないで頂きたい……」
変態を越えた変態。いや、天才を越えた変態。
違う。変態を越えた天才。でもない。
ええと……あ、そうそう。
エルフを越えたエルフ・バビロニア=バベル教授は、ズレた眼鏡を漸く掛け直し落ち着きを取り戻した。
『あははッ。君でしたか。じゃあねえんだよッ!! 勝手に接続切るなって言ったよなぁ!? ゴルぁ!?』
「いえいえ。私が切ったワケでは御座いません。助手がした事です」
『何言ってんの。お前はどこぞの政治家か弁護士かよ。おい、ハゲオヤジ。んな事通用すると思ってんの?』
「? 何の例えか存じ上げませんが……ありがとうございます!」
『いや。誉めてねえよ、変態野郎。ハゲてんのか? ってかよ、助手の手綱ぐらいまともに引いとけや、ゴルぁ!!』
「いやはや~……何せ彼女は『完全体』なのですからねぇ……うわはははははッ!!」
両手を高く掲げて。はい、例のポーズ。
天を仰ぎ、偉そうにふんぞり返る。
今、室内には彼以外に誰もいない。
だが、そんなのは彼にとって、これっぽっちも、寂しさに値しないのだ。
『いや。何それ。んな事聞いてねえし。てか、笑って済まそうとかしてんの?何も面白くねえし。聞けよ、人の話を。おい、こら。そこの変態野郎。ハゲ紳士!』
「まぁまぁ! 落ち着いてくださいよ。慌てない怒らない。ひとやすみ、ふたやすみ。もひとつオマケに、みつやすみ♪」
にこやかに、ぷちっ。
数ある中の内、毛細血管のひとつが浮き上がると同時にブチ切れた。
そして、彼はキーボードに何かを打ち込み。
『enterKey』を捻り込む。
打つべし、打つべし、打つべし。
「あわびゃびゃびゃびゃびゃッ!!」
電化製品が火を噴いた。
いや、正確には電撃と言うべきか。
モニター越しに。
変態紳士は、骨格を伴うビジュアルに、今、全身に感じている痺れや激痛を表す。
やがて、開きっぱなしの口からは焦げ臭そうな煙が漏れ出されていた。
昭和か。
『おい、ゴルぁ……いい加減にしやがれ……てめえのハゲた遊びに付き合う程、こっちゃあ暇じゃあねえっつーの』
よく言いますよ。
言うよね~。ってそりゃ、誰かさんも指を指しますよ。
どの口がそんな事を宣えるのでしょうか。全く。
寝言は寝てから言え、とはよくいったものです。
今も、口の端に煙草を燻らせながら。
床に落ちたポテトチップスの袋を拾い上げ、残った中身をポリポリと摘まむ。
器用ですね、貴方。
というか、汚ならしい絵面だなぁ、おい。
『ってか、よ……ソコにあんのは何だ?』
怪訝な表情を浮かべ、目線の先を追う。
作業机の上には、一際怪しい塊が鎮座していた。
時計のような機械が取り付けられた黒い塊。
秒針が動いていないのを察するに。
どうやら、まだ可動しても、完成してもいないようだ。
「……こ……これは……まだ、未完成なので貴方にも御見せする事は出来ませぬ……」
回復早いな、おい。
流石はエルフを越えた変態か。
決してハゲてはいなかった彼の頭は今、見事な黒々としたアフロヘアーを魅せつけている。
いや、だから。昭和のアニメかよ。
アフロヘアーのエルフ……需要減。いや、皆無。
モニター越しの彼はそんな教授をハゲだハゲだと言っていたが、それは彼の口癖なのだろう。
もっと、優しく。オブラートに包みなさいな。
お……俺は違いますからねっ。
「ヅラじゃない、カツラだ!」とか言いませんから!
ちょっと、額が後退してきただけだと主張します。キリッ。
と……話を戻しましょう。
「これは……さる御方から承った重要な任務なのです。いくら、私に貴重な資料をくださった貴方でもお教えする事は……」
彼が全てを言いきる前に。
二発目の。
電化製品が雷撃を放つ。
いや、だから。それは……
『終了のお知らせ』に成るんですってば。
電子機械から雷撃とか。
あまりにも非道過ぐる。
「んごごごごごごごごッ……ごーぎゃんッ!!」
『お仕置きだべぇ~……ってか。良いから、そこから退けっての……んんん~……どっかで見た事あんだけどなぁ……』
今、貴方が発した台詞の冒頭。
そのアニメによく出てくる髑髏マークの黒い球体なのにまるで気付いていないみたいですね。
此処まで、有りとあらゆる非常識を異世界に介入させる知識を持っているのに記憶は追い付いていない模様。
その『ぼんやり脳みそ』をほじくり出して、アルコール漬けにして巨大化……
させたら『マモー!』とか。
やたらとモミアゲの目立つ三代目の盗賊さんがクライマックスで叫びだし兼ねないので辞めておきましょう。
やぁ、カール……そんな獰猛だが相手を選ぶ犬は此処には居ない。
クラリスとかいう女子も。
仮に押しても、カリオストロ。
「教授……? ……どう、致しましたか!?」
阿鼻叫喚なる光景が繰り広げられている部屋の外から助手のロデムが割りと真剣に尋ねてきた。
何せ彼女は、現役女子高生であり、異世界に於ける救世主・カナミに使命を言い渡されたのだから。
教授の仕事を最後まで見届けろ、と。
モニター越しの、邪悪で汚ならしい彼と教授との会合は、つい先程、彼女。
助手のロデムが教授の夜食を用意する為に席をはずしてしまった隙をついて、それは訪れてしまっていたのだ。
ドンドン!と叩き付けられる扉は、何故か固く閉ざされていた。
『おい。変態教授よ。分かってんだろうな……』
「はて?何の事でせうか? アレか? またもやアノ件か……」
惚け、しらを切る教授に、怒濤の三発目。
電化製品が火を噴いた。いや「電撃だっちゃ!」と。
少なくとも。
いや、間違いなく素敵なダーリンとは呼ばれる相手ではない。
相手柄でも無い。
いとこに炎を吐く関西弁の赤子もいない。
OPより、EDが好きです。
特に、キャラが勢揃いのinvitationなヤツ。
……イカン。話が逸れてしまう。
こほん。咳をひとつ。話をもとに戻す。
『良いか? よく聞け……俺の分身体……【残虐】を向かわせて、お前らの存在自体を抹消させても良いんだぞ……』
ぞくり。
何か見逃せない、聴き逃せない単語を耳にした。
『あと……な。お前が最も心の拠り所としている…此れ、な?』
モニターから、彼を映し出している機械そのものを指差す彼。
『全部の機能を停止させてやろうか? んなもん。朝飯前だわ……』
片手の拳を、指を順番にパキパキと鳴らし、恫喝は。
邪悪な笑みと共に、恐喝は鋭さを増してゆく。
「あーややややや、嫌ッやや!! そ、それだけは御勘弁をッ!!」
頼むから。
某ハロプロから訴えられるのは御勘弁願いたい。
その額から、全身から。
嫌な汗が流れ溢れ、その身を激しく。
身も絶え絶えに震わせる教授。
知りたくもないし、見たくもない。
描きたくもないのだが……
彼の下半身からは、臭い排泄物が床を濡らしていった。
『分かってんのなら……余計な真似だけはすんじゃあねぇぞ……』
「は、はいいい!!」
最後に。
『俺はいつどこでも、全てを観ているぞ』
と死の宣告をしながら。
現実世界で、謳歌に依りそう。
転移の先駆者。
誰よりも早くに、この世界の理。
真理に辿り着いた悪魔。
一介の人間として堕落な日々を過ごす悪魔『残虐』。
愉しげに。
教授……彼の心を蹂躙していったのであった。
次回更新は……
9月24日の日曜日か月曜日の深夜にしようかと。




