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ドラゴンNO涙  作者: caem
第3章・くだらない。全ての世界に、終末を。
48/96

覆す。そんな不条理、認めない!!その14。

ぷちカオス。異世回、異世界です。

そこまで、エログロは無し。かな?

 昔々。

 あるところにお爺さんとお婆さんがおりました。


 お爺さんは川へ洗濯に。

 お婆さんは山へしばかれに。


 彼女。

 老いて尚、益々盛んでした。

 誰にナニをされていたかは、お互いの秘密なようで。

 性癖か血筋か。

 まぁ、そこはつつかないでおきましょう。


 時おり、帰宅後のお婆さんは何故か艶々しくも愛しくを顕に。

 その度に、お爺さんはその夜、激しく萌え上がったものでした。


 需要と供給でしょうかね。


 ある時。

 お爺さんが川で大量の洗濯に血眼になっていたら。

 川下から。


 どんっ、ぶらこ。どんっ、ぶらこ。と……

 バタフライで。

 『悪魔』が流れてきました。



「こ、これは……ッ!?」



 お分かりいただけただろうか……



 かつてないほどの衝撃に身を震わせるじじい。もとい、お爺さん。

 何故か洗濯には全く必要のない分厚い中華包丁を片手に興奮の坩堝。

 波打つ刃の輝きを涎で伝わせ、鈍い煌めきを美味しさに変える。

じゅるり。



「ま、ままま。待ってくれよお。お、おら。何もしてねえだよお。……おーいおいおい! おーいおいおい!」



 一先ず。

 地上に上陸した『悪魔』と対面するみたいですよ、お爺さんは。

 よく、落ち着きを取り戻せましたね。

 その咄嗟の判断は見事と言えましょうか。


 大体、桃じゃあないですから。

 しかも、川下から、でしたから。マスカラ。


 そして、まだ僅かに殺気を纏いし。

 険しい表情で伺うお爺さんを目の前にして。


 水牛を彷彿させるような双角を生やし、背中には立派な翼が目立ちます。

 更には。

 先程、川下から泳いでくるを可能にしたのは、その屈強なるも頑強なる筋肉でしょうか。


 まるで、日サロに通い続けたチョコボールなんちゃらの芸名を持つ男優のように逞しい。

 何でAV男優って無駄に日焼けしたがるのでしょうかね。

 おっと。

 それ以上の突っ込みや妄想はご勘弁して頂きたく存じ上げます。

 ぺこり。


 そんな彼『悪魔』は人目も厭わずに、盛大に泣き出しました。

 どぼじて、どぼじて。


 にゃんこ先生は此所におりませんね。


 涙と涙がぶつかり合い、両手の人差し指をつつき合わせる姿は剰りにも『悪魔』に相応しくありませんでした。


 ですが、じじい……お爺さんはその想いを顕に。

 辺りの空気は螺じ曲げてゆきましたね。

 くわばらおばた。

 どうやら、何かに気付いてしまったご様子でした。


 迸るエナジーを利き腕に持つ得物に注いだお爺さん。

 気合い十分、まだまだ若いですね。



「貴様……我が、愛しきは麗しい……洗濯物に何をしてくれておるのじゃ……」



 怒り心頭。気合いゲージはMax。

 数本、ストックしていますね。既に。


 じじい……もとい、お爺さんの血管ははち切れる寸前でした。

 浮き上がる筋が語っています。ああ、恐ろしい。

 僅かに、血が噴き出しておりまする。


 その『悪魔』は、なんと……

 彼の命よりも大切な、お婆さんの胸当てを足蹴にしていたのです。




 ……くう。描きたくない。

 無駄に気合いの入った刺繍が艶かしい。

 皆様。目の前で着替える母親の乳房をご覧になった事はおありでしょうか。

 自爆行為にも等しい。



「あ。す、すまなかっただ! そんなつもりは! 決して! なかっただよお!!」



 慌てて、その場から離れる『悪魔』。

 土下座と共に、その意を表します。

 地面に額を擦り付け、角がずぼっと埋まります。

 良いですね。

 そこに何かの種を植えれば実りを豊かにすること請け合い。

 幸い、直ぐ側が川なので、水源にも欠かないでしょうし。



「貴様……ワシに……恥をかかせるつもりか……ッ!?」



 多分、お爺さん。いや、爺。

 かつては、さぞ名の馳せる武将だったのでしょうか。

 片手にした得物と其の身に纏う雰囲気が、闘気が。

 悪魔を辺りを呑み込んでゆきます。



「あわびゃびゃびゃ……す、すまねえだ! こんなことで許して欲しいとは思わねえだが……」



 そう言うと『悪魔』は、両手から、金の塊。

 黄金を産み出したのです。

 まるで、カオナシだとか呼ばれるアレでした。あ、あ、あ。

 片手で揺さぶる金塊が怪しさ満載。

 そのうち、土塊になりますよね。

 一際甲高い声でヒロインの心を揺さぶる蛙の人が好きでした。

 イカン……そろそろ、怒られそうですよね。



「こ……これは……ッ!!」


 あんた。それしか言えねえのかよ。

 目映い欲望の権化は全てを魅了してゆきます。


 片田舎に落ちぶれたじじい……もとい、お爺さんは目が眩みます。

 それ、俺も分かる。頂戴よ、ねえ。頼むから。

 先っちょだけで良いから。



「お、おら……行く先が無えだよ……見逃してくれねえか、よお。頼むだよ……」



 両手を併せ、涙も僅かにその頬を伝いました。

 真剣に、お爺さんに御願いする『悪魔』。

 そんな彼に対して、お爺さんは覚悟を決めました。


「よし……お前は今日、たった今からワシの息子である!!」



 ……Why……??



 何で?

 意味がわからないですよね。全く。



「良いか? 決して、鬼退治だとかの物語に委ねるではない! ただ、ひたすらに我が家に貢献せよ!!」



 何を仰られていますのですか、じじい。

 いや、お爺さんや。


 だが、純粋過ぎた彼は従いました。



「あ……ありがとう、だよお……」



…………



 何か……

 可哀想になってきた。ごめんね。

 せめて、君には幸せな結末を用意してあげますから。



「そうじゃのう……おぬし、名は?」



君の名は。



「ふえ!? ……おら、名前なんて無えだよ……ただ、いつも『無道』って呼ばれていただよ……」



 過去を思い出しているのでしょうか。

 ポリポリと頭を掻き、恥ずかしそうに。

 愛嬌たっぷりな『悪魔』は苦笑います。


 遠い目をして。

 瞳の端々から、僅かに止めどなく流れる涙を隠す演技に努めてみては。

 彼の今までの過去を語っているようでありました。



「なら……今日、この時を以てして……お前の名は『太郎』じゃ!!」



 雰囲気を読んだのでしょうか。

 暗いイメージを吹き飛ばしたじじい……もとい。

 お爺さんから名を携わり、翌日からは幸せな日々が続いていきました。


 その後、山から腰をがくがくと震わせながら帰宅したお婆さんとも折り合いをつけ、愛すべき一人息子として暮らす日々を送りました。


 何せ、山奥であり、秘境なので。

 他人と出合う事など皆無であったのです。

 『悪魔』にして『悪魔』っぽくない。

 彼にしては、毎日が幸せに満ち足りていた事でしょう。



「……幸せって……こういうことなのかなあ……」



 川辺で洗濯物をしている巨躯を御座なりに。

 縮んだ背中には、既に哀愁が漂っていますね。


 『悪魔』に非ざりし発言。

 剰りにも、迂闊過ぎる。

 どこまでお人好しなのでしょうか。


 肩には小鳥が寄り添い、囀ずっています。

 大丈夫よ、貴方は。

 そう同情してくれているのでしょうか。



 暖かくも、伝う涙と共に。




 ふと、何かの殺伐とした気配を感じ、目が覚めました。

 細やかな幸せとの日々は幕を閉じる。

 そして、突き付けられた、此れからの悪夢の始まり。




「おい。起きろ。『無道』よ。いつまで浸っているつもりか」


 夥しい数の鎖に繋がれた彼に問い掛ける。

 胸に押し当てられた彼の脚が、きつく心を締め上げつける。



「き……貴様!? どうやってここまで……衛兵は何をしているッ!! 出合え! 出合えッ!!」


 喧しい、監視役の、たかだか、こわっぱの天使に。

 彼は、瞬時に。そうっと片手を添えた。



「喧しい。囀ずるな」


 右手は添えるだけ。

 彼のバスケ選手の言葉通りに。

 途端に、そこで覇気を叫び散らかした衛兵は逝った。



「おい。起きろ……貴様には、まだまだやるべき事が……役に立って貰わねばならぬのだ」


 虚ろに視線を漂わせる『悪魔』。

 何が起きたのか、全く理解出来ていない様子だ。



「あ……あんた……誰だか……?」


 他人からしてみれば、幸せだったのかもしれない。

 そんな浸る栄光に夢を見ていた彼を、無情にも叩き起こす。

 『暴虐』の悪魔・グランヴィアは、彼の四肢を繋ぎ止めていた鎖をいとも簡単に引き千切った。



「さぁ。お前は今、この時を以て、自由だ。やれ。意の向くままに。思い出せ。過去を」



 起き上がるは、山の如し。

 天空にまで届くを知らぬ巨躯が知らしめるを留まらず。


 超巨大なる『悪魔』はぶつぶつと呟いたのちに、ゆっくりと進軍を始める。


 『無道』の。

 かつて『太郎』と呼ばれ、愛された彼は怒りをその眼に宿し、復讐の誓いを叫ぶ。




「ばあさん、じいさんの敵討ちだよおおおッ!! 全部……ブッ壊しちまうだあああッ!!」





 何があったのかは知らないが、彼『無道』の悪魔は哀しみや切なさ。

 怒りを混ぜて、一切の『心』を吐き出した。



 もう、我慢しなくて、良いよ。



 激しく大地を穿つ振動と破壊が周囲を埋め尽くしてゆく。

 大気はその衝動に怯え、自然界は滅びを増してゆく。

 彼『無道』の悪魔が、一歩ずつ歩を進める度に、脅威的に地獄は拡がってゆく。



 だが、彼は知らない。

 全ては初めから、仕組まれていたという事を。




「せいぜい……立ち回れば良い。俺の為に、な」


これでも、シリアスなの。(笑)

次回は、週末…土曜日辺りの予定。

( ノ;_ _)ノ

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