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ドラゴンNO涙  作者: caem
第3章・くだらない。全ての世界に、終末を。
46/96

覆す。そんな不条理、認めない!!その12。

異世回です。いや、異世界です。

ちょいグロ?ちょいエロかもです。

御了承くださいませ……

 静かな湖畔の森の影から。



 もう、来てはイケない。ダメよ。などと。

 カッコーは鳴かない。




 代わりに。


 生命の営みは、歓喜に満たされ、其れは欲望を伴い、常軌を逸す。

 滴り、迸るを構わずに。



………………



 数刻前。


 漆黒の外套に身を包んだ老齢のダークエルフが顕れた。

 片手には闇色に染まった水晶球。



「ふむ……この辺りか?」


 暫く様子を眺めていると、彼の目の前に突如、小さな『虚空』が産まれた。

 其れは、総てを否定かのするように、蠢きを澱ませていった。



「よし……計画は巧く続行しているようですね……」


 黒ずくめのダークエルフ。バルテズールは僅かに口許を緩ませる。


「ダカーハ。彼等を此方へ連れてきなさい」


「は。暫しお待ちを……」


 同じくして、闇から顕れたもう一人のダークエルフが応える。


 ダカーハはバルテズールの命令に従い、縄で捕縛されている人間を数名連れてきた。

 幼子や大人、老人にまで至る。

 多分、皆、家族であろうか。


 その何れも複数箇所に及び痛々しい傷痕が残っている。


「前に出ろ。……妙な真似はするなよ……」


 ダカーハと呼ばれたダークエルフはその奴隷を『虚空』の前へと突き出した。



「これは……まさか!?」「ひぃッ!! や、辞めてくれッ!!」



 『虚無』ないし『虚化』と呼ばれる異世界大陸ファンタジスタに於ける大災害。

 呑み込んだ存在を、まるで始めから無かった事にする不可思議な現象。


 今現在、『偉大なる魔術師バレンシア』が最優先して取り組んでいる事案。

 各村や街にも御触れを出していたので、大半の住人はどういうものなのか知っていたようだった。




「ふむ……。極僅かに変化はしましたが。まだまだ刺激が必要でしょうか、ね……」


 バルテズールは指をぱちんと鳴らし、それを促す。


「万物に腐れを与えん……『腐れ(ロッツ)』!」


 配下であろうダカーハがそれに応え、幼子に何かの魔法をかけた。

途端に踞る。

 苦痛に表情を浮かばせ、彼は右腕の付け根を圧迫している。



「う……あ……あ……あ……あ……ッ」



 まともに言葉にする事も出来ず。

 涙は勝手に頬を伝い、眉間によった皺が痛々しい。


「ジャリルッ!? おい! しっかりしろ! 気を保てッ!?」


 ジャリルと呼ばれた少年。

 その彼の右手は、かつて今迄見た事もない虫や、または触手達が蠢いていた。


 最早、それは『手』などとは言い表せない。

 そして、それ以上拡がらないように必死に抑えつけていたのだが、やがて徐々に侵食は許さず。


 爛れてゆく皮膚を身体を、次々と舐め、這いずりあがる。

 それらはただ嬉しさに身を委せ、蝕むを留まらない。



「か……あ……さ…………」


 頬は涙と泥で混じり合い、遠ざかってゆく視界を完全に奪っていった。


 やがて幼子は、ただの腐った肉の塊となった。

 何処からともなく、蝿は集ってくる。

 まだ、彼は生きているのだろうか。


 臭い。



「ああああッ!! ジャリル!! 何て事を……ッ!!」


「こんな……こんな事をしていてタダで済むと思うなよ……ッ!!」


「……ふむふむ。怒りの感情では効果がないようですね。では、次」


「は。次は……お前だ」


 捕らえられていた者達は次々と無惨にその命を絶たれてゆく。

 最後には老人ひとりだけが、ポツンと其処に立ち竦み、やがて膝から崩れ落ちた。



「皆……すまなんだ……ワシでは、たった一人の老い耄れだけでは……どうしようも出来んのじゃ……」



 彼が諦念に囚われた、その時。

 歓喜の声をあげた『虚化』は盛大に膨れ上がった。



「おお……素晴らしい……そうか。成る程……」


「バルテズール様? これはもしかして……」


「うむ。ダカーハよ。気付いたか」


 二人は互いに厭らしい笑みを交わしながら、その興奮を隠せないようでいた。わくわく。

 目前に転がっている肉の塊の成れの果てを更に炎の魔法で炙る。



「あぁぁ……すまない……本当に……すまない……」



 これ以上は堪えきれないと思った老人は舌を噛み千切ろうとした。

 だが、その様子を伺っていた彼等ダークエルフはすかさず行為を辞めさせる。



「ほうら。よく見ろ! 今、お前の家族がどうなった? そして今、お前はどうなって……どうして生きている!?」


「か……か……か……か……か……」



 ダカーハによって口を大きく開かれたまま両手両足を縛られた老人は嗚咽すら赦されず。

 ただひたすらに溢れ落ちる涙だけが無念を語り『虚化』は更に増幅した。



「ふふふ……。此れで漸く、あの忌々しくも憎らしい魔術師を越えましたな。バルテズール様!」


「うむ。ダカーハよ……。だが、まだまだだ。我々の計画には、終焉など、無い」


「は。まこと恐悦至極……あの御方も嘸やお慶びに為られるでしょう……」



 まだ目の前にいる老人には、彼等二人の会話などどうでもよかった。

 無念だけが彼を失意のどん底に陥れた。


 そんな彼にもう用はないのか、ダカーハは老人の口から手を離した。

 掌に着いた唾液を彼の背中で拭き、残った歯形の痕を嬉しそうに眺めている。



「さて、次なるは如何なさいましょうか? 例の件に致しますか? それとも……!!」


 気の逸るを待ちきれず握り拳を掲げる。

 興奮冷めやらぬ、そんなダカーハを片手で制し、彼は告げる。


「焦るでない。急いては事を仕損じる。ゆくゆくはお前がこの世界を引き継ぐのだぞ。ダカーハよ」


「……少々取り乱してしまい失礼致しました。バルテズール様……」




『どうだ。状況は』




「……此は、グランヴィア様。ようこそおいでましに……」


 突如、空から堕ちてきた圧倒的な気配に恭しく頭を垂れる二人のダークエルフ。

 ダカーハなどは僅かに身体を震わせ自然と冷や汗は恐怖を示す。



「は。順調であります。して、謂わずもがなで有りましょうが……そちらの方は?」


「うむ。渋りおったものの認めたようだ。先程、全てを確認してきた。で……其奴は何者だ」


 訝しげに、バルテズールに付き添うダカーハを見やる悪魔。

 その圧倒的な存在感に怯え、更に挙動不審な態度をとるダカーハを睨み付ける。

 後ろにいる老人など、視界の隅にすら入れていない。



「左様で。流石はグランヴィア様。あぁ、此方は……」


「わ、わた、わたたた、私は! ダカーハ=シバルと申します!! バルテズール様に命を救われまして以降! 付き従う下僕で御座いましては!」


 立ち上がり、ビシッと敬礼をする。

 あくまでも、彼と眼を合わせない様にするダカーハ。

 失神してしまうのではなかろうか。

 緊張が全身を硬直させている。



「ふむ。まあ良い。善きに計らえ」


「ははーッ! 御目にかかれて光栄であります!! グランヴィア閣下!!」


「閣下などと呼ばれる筋合いは無い」


「こ、ここここッ、これは大変に! 申し訳ありませんでしたッ!!」


 最上級の敬礼の体勢から一転。

 大地に額を叩き付けての超土下座。

 いちいち、態度が喧しい。

 そんなダカーハを見て口許を緩ませるバルテズール。

 笑いを堪えているようにも見える。


「ふむ。バルテズールよ。後は任せたぞ。俺は『ヤツ』を叩き起こしてくる」


「は。御意」


 そう彼に告げるや否や、『暴虐』の悪魔グランヴィアは音もなく飛び去っていった。



「はぁ、はぁ……。あの御方が……まさか此方に、来られる……だなんて……」


「ふ、くくッ! ……だ、ダカーハよ。緊張し過ぎだ……」


「いや! 笑い事ではないですよ!」


 聞いてないよ!とばかりに両手を忙しなく振り回している愛嬌たっぷりなダークエルフ。



「はぁ……もう。全く……で、どうしましょうか? この老人は」


 唐突に思い出した。俺も。

 ダカーハは虚ろな表情で精神が崩壊寸前だった老人の首根っこを掴みあげた。


 何せ、ダークエルフのダカーハでさえ震え上がる悪魔が先程まで其処に居たのだ。

 一般人なら即、失神していてもおかしくない。


「そうですね……村に帰しましょう。五体無事に。安全に……」


 無詠唱で何かの魔法を行使する。

 かちん、と老人は固まった。

 釘が打てるかどうかは試してみないと分かりませんが。


「相変わらず……お見事な手前ですね……」


「いずれ、貴様にも出来るようになるであろう。我が血肉の欠片を注ぎ込んだのだから、な」



 愉し気に、愛しく。

 髪を撫でる。


 ダカーハの唇の端、隅々までも舐めて差し上げるバルテズール。

 対し、ダカーハ『彼女』はうっとりとその瞳を湿らせていた。

 だらり、と下がった両手は我を投げ棄て、その眼からは愛が溢れ落ちる。



「んふ……う……」


 まだ、陽も高い、日中ど真ん中。


 ふたりは。

 時の間に間に、己に喫す。


 他に何も要らない。

 誰に、他に見られようが構わない。厭わない。




 激しくも、絶え間無く押し寄せる欲情の波に身を委ね、幾度も幾度も肌を重なり併せて、イッた。


 曝し出した淫らな、蜂起した朱色の頭が舐めずられ、愛しい彼が。

彼女に射し込まれる。

 たまらず、発せられる甘い吐息が歓喜に乱れ盛大な声をあげた。


 人知れぬ湖畔にて。

 交尾にせっつく魚類や爬虫類達は、取り急ぎ。

 吐き出す桃色の吐息で褪せぐ。


 その光景を放っておきつつも、誘われたのであろうか。


 生命の営みは、命の、繁栄を。

 有らん限りを厭わないのだから、と。

 大自然に於いては、至極、当たり前の摂理なのである。


 先程、失われた数多の命など、どうでも良いと。

 囀ずるも気にせず、賜る事なく。


 放っておかれた老人を他所に、魂の樹海は慈しみ注がれてゆく。

 我よ我よと……


 核に辿り着くを欲して逝くのであった。

ギリギリセーフだと思う(笑)

次回は水曜日辺りに更新予定です。多分?

9月17日。ちょい訂正しました。

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