覆す。そんな不条理、認めない!!その10。
うッ…屈ッ!?
場面は一転。ですが、異世界続行です(笑)
更新しないしない詐欺、再び。
謎の痛みに絶えつつも、1本いきます…
彼は言う。
たった一点。
そこに全てを撃ち込めば良いだけだと。
目標を微動だにさせずに、如何にして破壊させるか。
暴力と破壊の根源。
絶対なる自由を求めんとする。
『暴虐』の悪魔・グランヴィア。
今、彼の周りは立ち尽くしたまま意識を失っている『天使』達で埋め尽くされていた。
異世界大陸ファンタジスタに於いて、最も尊ばれき存在。
神の手先などと揶揄される事も多くないのだが。
光輝なる使徒。世界の裁判官。
華麗なる天使。
彼等は今、窮地に立たされていた。
「貴様…たかが一介の悪魔が! よくも同胞を……処刑執行ッ!!」
「ふむ。くだらぬ、な」
明らかに、自分より数倍の巨躯なる天使。
『大天使』のひとりが、いざ殲滅せんと、果敢に挑んでいった。
聖なる力を帯びた大剣が閃き、憎き悪魔を討たんとする。
だが、彼は退くを知らず。
極めて微少なる体捌きを以て前に出た。
添えられたのは、唯の軽い拳。
「ハッハーッ! なんだ? こんな軽い打撃が我ら神聖なる神の使いに通じるとでも?」
そう思えたのは致し方無い。
衝撃音も皆無に等しく。
打撃を受けた彼は微動だにしていない。
痒みすら感じる。
だが、彼はそれを受けてしまった事に後悔すべきだった。
くっきりと、胴に当てられた拳の痕は語る。
『此処に全てを置いてきた』と。
すれ違い様に、それは解放された。
たった一発の拳に込められた全身全霊の力を。
「か……ッは…………」
『大天使』の躯の内部で、激しく轟く、一切を許さぬ暴力。
全身を駆け巡り、脳天を揺さぶり、そして心をへし折った。
「真の拳は内で爆ぜる。ようく覚えておけ。生きていたら、な」
またひとり、立ち尽くしたまま、逝った。
彼と立ち会う度に、たとえ巨大な身体と神聖なる魔力に秀でた上級天使であろうが。
世界を粛清するのも厭わない程の大集団であろうが。
辺りは死屍累々。
夥しいまでの意識を失った天使達の像で埋め尽くされていた。
「おやおや。全く……。相変わらずの戦闘狂ですわね貴方は……」
眼下に拡がる雲海から、それは顕現した。
遥か目前にあった光輝く聖宮を目指していた悪魔・グランヴィアはその者によって足を止められる。
「……久しいな。カリゼラ。そこをどけ」
「はぁ。それは……いくら昔馴染みの戦友とはいえ、出来ません事で御座いますわよ……」
今まで対峙してきた天使達とは比較にならない圧倒的な存在感。
これこそが天界に於いて最強の使徒とされる『大天使』その者だった。
『大天使』にも様々な位が設けられているようであり、どうやら、先程逝った彼は、その中では下級生であったらしい。
「堕天した貴方が天界に舞い戻ってくれたのは。多少嬉しくもありますが……」
大気を震わせる声が鬱陶しくも懐かしさを醸しだす。
何せ、悪魔グランヴィアは元々、彼等と同じ天使なのだったのだから。
「たとえ貴方に如何様が有りましたと致しましても。このような事態を見逃せる訳にはいきませんのよ?」
軽く振り上げた掌から。
目映い光が降り注ぐ。
立ち聳えていた天使達の軍勢もその光に呑み込まれ、やがて消滅していった。
暫くして。
………………
だが、彼はまるで何事も無かったかのように。
両腕を組みながら、偉そうに嗤うでもなく、淡々と用を告げた。
「お前達の管理している竜の全てを解き放て。ただ、それだけを言いにきた」
邪悪なる存在を抹消し、清らかな存在を流転させるという。
『聖なる威光』をものともしなかった彼を見て、驚きを覚えた大天使・カリゼラ。
彼女は直ぐ様、心を鎮め、冷静さを取り戻す。
「……。ただ、それだけの為にあれだけ、お暴れなさったのですか。全く貴方は本当にお変わり無いようで……」
浅くため息を突き、辺りに蒸気を撒き散らした。
次いで、徐々にその蒸気は雲へと化し光を帯びては『聖なる槍』へと形を成した。
「貴方に、聖なる魔法の類いは無効であると見受けられましたので」
槍を構え、相手の出方を伺うカリゼラ。
「ほう。面白い。俺に1度も勝てなかった貴様が立ち向かうか?」
「今でも当時のままだと御思いでしょうか? 常に。日々精進しておりますわよ」
漂う闘気がふたりの間の空間を捻じ曲げてゆく。
同時にそれは周囲の天候をも荒ぶらせていった。
斯くして。
どちらからかともなく、闘いの火蓋は。
幕は切って落とされた。
大天使カリゼラが得物とする聖槍を寸前で見切り懐に潜り込むグランヴィア。
対し、彼女は彼の拳だけではなく、その見事な体捌きにも警戒しなければならない。
意識を精神を集中させて虚実を見極めると同時に反撃の狼煙をあげた。
おかしい。
刺突した筈の感触がない。
流れるがままに身を委せ、流動する悪魔。
その表情には顕れていないが、実に愉しげだと、躯は魅せつけていた。
常に自然体を保ちながら、あらゆる角度から飛び込んでくる拳や蹴り。
たった一撃でも喰らえば消滅してしまうのは必然的に。
その速さは徐々に増し、次第にそれは黒煙と相成った。
大天使カリゼラはその荒れ狂う『暴虐』に呑み込まれてゆく。
だが、その闇の中。
悪魔の猛攻、総てに彼女は対応していたのだ。
類い稀れなる槍術の腕。
況してや、その身体能力は勿論のこと。
何せ、神のお墨付きなのだから。
暫くして。
暴風は静寂を取り戻す。
「ふむ。確かに腕をあげたようだな。だが。それは貴様だけでは……無いッ!!」
普段、気迫を露にするような事など有り得ない。
悪魔・グランヴィアは止めどなく、沸き出ずる昂りを解き放つ。
漆黒の焔を全身に纏い、両拳には黒炎が迸る。
「そんな……まさか……。それは……まるで……」
「うむ。地上で珍しい奴を見掛けてな。折角なので覚えてみた」
『灼熱』。
あの暑苦しい漢と対峙して以来、自分の中に組み込めないかと幾度も検討を重ねてきたのだ。
あの漢迄とはいかないにしても今、彼の体躯は『灼熱』を帯び、その脅威はつい先程までの数倍にも跳ね騰がっていた。
「さあ。続きだ」
敢えて悦びを表に出さず。
絶え間無く押し寄せる激情を、熱量を、その内に秘める。
暴れるをひたすらに押さえ付け、暗黒の焔はその身を焦がしている。
未だか、未だか、と薪を求め欲しては酒の肴にと僅かながらに辺りを喰らう。
堕天した悪魔。
グランヴィアはその熱情を抑える余裕すら無いようであった。
限界は近い。
対峙していた大天使カリゼラはその異様な雰囲気に、既に呑まれていた。
こめかみを伝う汗がそれを語っている。
察するに、敗北は、死は、消滅は免れないであろう。
突如。
天界全域に、盛大且つ、荘厳なる鐘の音が響き渡った。
「む。これは……」
有りとあらゆる光の欠片が集束されてゆく。
幾重にも重なった天使の輪。
神々しき羽衣。
数えるに、何十本もの腕を忙しなく振る舞う。
数多の大地、世界を統治し崇拝されし天使と囁き合っている。
「これは……大天使長……ジェマスェラ様。至極、顕現。有り難く存じ上げます……」
膝を付け、御旨のままに、御心のままに。
尊敬と敬愛の念をひたすら一身に捧げ恭しく頭を垂れる大天使カリゼラ。
「ほう。大天使長までもがお出迎えとは、な……して。何用か?」
漸く、大天使カリゼラとの鮮烈なる悦びに準じようとしていた悪魔グランヴィアは。
少からずとも不満を言葉の随意に籠めては吐き出す。
「随分と、御無沙汰しておりましたね。元、第一級大天使・グランヴィアよ」
閉ざされた両の眼。
痛々しく、縫われた瞼。
最早、瞳に宿る視力や暖かみを感じさせる陽の温度に頼らずに。
全てを見通す事など、赤子の手を捻るかの如く。
話に応じない訳ではない。
真摯たる態度で応対さえしておれば、このような所業に及ぶ彼ではない。
下級の天使達が彼を知らなかった事が問題なのだ。
だからこその、態々の御出仕舞しと相成ってしまったのは如何ともし難く。
「申し分を御伺い致しましょう。此方としても、これ以上の被害を出す訳にもいかないので」
「そんな……! 大天使長様!! 彼の暴虐を御認めに成られるのですか!!」
カリゼラは明らかに失意を憤懣へと訴える。
双方の、きつく握られた拳から流れ落ちる血液は悔しさを騙っている。
至って、冷静沈着に。
大天使長・ジェマスェラはカリゼラを諭す。
「尊大なる御心のままに。我々天使は従うのです。決して定めに抗うを為さず…何れ決めゆくに逆らう事は成りませぬ」
敬虔なるを必須に。
絶対なる使命に抗う事は、天使に於いては叶わずに。
ただ、忠ずるに至るべき矮小なる。
それは地上に、天空に、生きとし生ける者よりも哀しき方程式。
「ははッ……御意向に殉じあげます……」
真なる言葉の代行者。
大天使長・ジェマスェラの権限に逆らう事など有り得はしないのだ。
「全く……初めから賜れば良いものを……」
斯くして。
異世界大陸ファンタジスタに全ての『竜』は放たれた。
うわぁぁぁッ!!
。゜ヽ(゜`Д´゜)ノ゜。
シリアスなんて描きたくねぇんだよおッ!!
すんげぇ苦痛(爆)
しかし、此処で放り込んでおかねば後々の収拾がつかない……
次回の更新予定は…土日辺りで?
ε=(ノ゜д゜)ノ…ヒャッハー
9月14日。修正、加筆しました。




