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ドラゴンNO涙  作者: caem
第3章・くだらない。全ての世界に、終末を。
43/96

覆す。そんな不条理、認めない!!その9。

むう。我慢できませんでした(爆)

流れを一先ず片付けたくて。

ちょいちょい、マニアックな古いネタがあり。


「ごぽおっ……。教授に仇なすもの。許すまじ。死すべし。腐るべし。食むべし。ごぽおっ……」


…………


 べしべし煩いな。

 あとその『ごぽおっ』ての辞めてくれませんかねぇ。

 黒い粘菌の塊は辺りをゆっくりと腐蝕していく。


 あ! それは貴方の敬愛する教授の宝物ですよ。

 ……知らねぇぞ。後でナニされても。


 完全に人の形をとる事を辞めたロデムは、素早さを棄て、攻撃に特化した。

 手当たり次第に触れた物体を腐蝕させては取り込み吸収されていく。

 その身体は徐々に膨らんでいった。




「ち。こいつァ……ちぃとばかりヤベぇな……」


 数回、小剣で斬りつけてみたり、辺りにあった硬そうな得物で殴り付けてみても通じない。

 果てには、毒の塗られた針を投げ付けてみたのだが、どうやらそれも効果を成さなかったようだ。

 相手に気取られずに、僅かに、肩で息をしながら。

 パッカードは、彼女を本気にさせてしまった事を少し後悔していた。




「ごぽおっ……今の私にそのようなものは通用しませんし。ごぽごぽおぅっ。毒など。ごぽごぽごぽおぅっ。……滑稽過ぎますね……ごぽごぽおっ。ごぽごぽぽおうっ。」



 うむ。キモさが増している。

 描きたくない。


 何処が発声器官なのかは気になるところではあるのだが。

 に、しても武器や毒などによる攻撃が全く意味を成さないのだ。

 分が悪いのは否めない。


 彼女はぷるりぷるり、と身体を震わせた。

 数本の触手が伸び、パッカードに襲い掛かってきた。

 予測より、その動きは素早く。

 いやらしく。

 触手だけに。


 まるで、相手の体内に神経毒を注入し麻痺させて捕まえるイモガイの毒銛の如く。


 素早さを棄てたんじゃあなかったのかよ。と小さく悪態を突きながら。

 華麗なバックステップを披露し、それを回避すると同時に大きく距離を取ったパッカード。

 多分、進行方向とは逆にレバーを2回叩いたのだろう。




『もしかして~……。パッつぁん、今ピンチなの~?』


「誰がパッつぁんか! ……あー。そうですよー! ピンチにパンチですー! なので! 早く助けてあげてくださいませーッ!!」


 懐に仕舞い込んだヒナのスマホから聴こえたカナミの軽い声が何気に癇に障る。

 声が重なって聴こえたような気がしたのは彼の勘違いだろうか。


 ふたりの漫才を診るに、意外と余裕があるようにも見える。

 このまま放っておいても良さげなのだが、彼も貴重な駒なので。にやり。


 突然扉をド派手に蹴り開き、大きめの樽を担いだ女子高生トールが姿を見せた。

 何やら悪い顔をしておられる。


 すかさず彼女はその樽を宙高くに放り投げる。

 付き添うように自身も大地から大きく跳び離れた。



「はぁッ!!」


 一閃。


 樽は見事に粉砕され中身がロデムにぶちまけられた。

 独特な臭いが辺りに立ち込める。


 これぞトールが『灼熱』のジャニアースとの激しい情事……もとい。

 酷しい特訓で編み出した一撃必殺の剣技。

 その名も『宙空殺陣』。

 中2臭いネーミングだ。


 両脚に溜めた『焔』を燃料へと変換し、それを瞬時に爆発させ常人成らざる跳躍力を可能とするのだ。

 更に、通常、大地に強く踏み込まねば得られない程の膂力をも引き出している。

 それにより、如何なる足場の不安定な状態でも、本気の斬撃を生み出す事が出来るのだ。


 あのね。


 空中で樽を……物を斬るなんざぁ、到底普通の女子高生には出来ませんから。

 現代世界の剣の達人でも、そんな事は出来ませんよ。

 どんどん人間離れしてきたなぁ…


 同じくして駆け付けてきたカナミは鼻を摘まみながら、何かを投げ付けてロデムに宣告した。




「大体こういうのって火に弱いんだよね~♪」


 大量の油を浴びたロデムには、其れを回避することは不可能であった。




「熱いッ!! ごほっ。熱い熱い熱いぃぃぃッ!! ごほごほっ。た、たたたた助けてくださいッ!! ごほごほごほごほっ。教授ぅぅぅッ!! ゴッホ。」


 どんどん蒸発して縮んでいく。


 何とか人の手だけを其処から形成して教授に助けを求めるのだが、意識を失っている彼の耳には、心には何一つ届いていない。

 あぁ、無情。

 また……あの無の世界へと引き戻されるのだろうか。


 意識が消え逝く寸前。


 突如、大量の水はそれに掛けられた。じゅううう。

 全ては鎮火され、地獄の業火から逃れられた彼女は漸く、うっすらと目を開けた。




「……ぁ……は……ぁ……はぁ……い……生きて……る……?」


 ヒナが片手にしていた鍋の水を彼女にぶっかけたのだ。

 それだけで充分だった。

 何故ならば、今の彼女は、手のひらサイズだったから。




「……ッてかよ~……何時から扉越しに覗いてやがッたンだ……あ?」


「えっとね~……パッつぁんが厭らしい顔して縄縛りしてたくだり?」


「ほぼ、初めッからじゃあねェかよ、おいいい!」


「まあ、良いじゃあないの~。気にしない。気にしない~♪」


 望みは高く果てしなく。

 わからんちんともとっちめちん。


 ため息をつき、何故か苛立ちより諦めを態度に表すパッカードさん。

 ご愁傷さまです。ちーん。


「さてっとぉ……ロデムさん。貴女にお願いがあります」


「……何でしょうか……」


 完全敗北を味わい、見た目も態度も一際小さくなってしまったロデム。

 彼女はそれでも何とか人の形を形成させた。

 手のひらサイズの、まさしく『少女』である。


 おさげ髪には紙風船。

 それは名曲だが、今はさておく。


 衣服までは顕現出来ないのであろうか。

 全裸を見せびらしていたので、カナミは小さめの布切れで、そうっと彼女を包み込んであげた。


 そして、優しく拾い上げ、少女の髪を撫でる。



「教授がちゃんと最後まで仕事をこなせるように。余計な事をしないように。逃げないように。励ましてあげてください~」


「……何故……私を助けてくれたのですか。貴女達をも、殺そうとしていたのに……」


「だって~……ロデムさん。最初、優しく迎え入れてくれたじゃあないですか~」


 そう。聡明な彼女であればこそ。

 屋敷に招待した時点で油断していたヒナ達を殺そうと思えば実行に移せた筈なのだ。

 だが、彼女はそうしなかった。

 そもそも、彼女は教授に永遠に付き従うだけで良かったのだから。


 ん……?

 待てよ。という事は……。

 教授に手を出してさえいなければこんな結果にはならなかったのではなかろうか。


 いや、違う。

 彼は此方の仕事の依頼を承ったにも関わらずそれを反古しようとしたからだ。

 あまつさえ、魅惑の魔女シアンナと結託して完璧に処理しようとまで企んでいた。


 あの女などどうでも良いが、教授にまで手を出してしまったパッカードには確かに恨みがある。

 だが、よく見てみれば…

 その教授は、縛られていた柱から解放された今でも、凄く悦んでおられるご様子。


 なら、良い……のか?


 いや、トールに油を浴びさせられ、カナミに着火させられたのを許せる筈がない。


 とはいえ、ほぼ我を忘れてしまいつつあった。

 全てを、教授をも呑み込んでしまう可能性があった。

 誰かに止めて貰わなければ自分は今頃、唯のバケモノになっていたであろう。

 深呼吸をして、冷静さを己を取り戻そうとするロデム。


「……分かりました。必ず、仕事を完遂させるように見届けましょう…」


「はい! よろしくお願いしま~す!」


 カナミは素直に笑顔で応えた。




……………………




 いつの間にか其所から居なくなっていたパッカードと魅惑の魔女シアンナ。

 それがカナミとの契約だったのかもしれないと気づいたのは。


 また。

 別の話。

つ……次こそは木曜日か金曜日辺りで更新したいと。


……


多分(笑)


9月13日。ほんの少し加筆しました。

御容赦くださいませ。


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