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ドラゴンNO涙  作者: caem
第3章・くだらない。全ての世界に、終末を。
41/96

覆す。そんな不条理、認めない!!その7。

続いて異世界から。

前話の詳細をつらづらと。

今回は短めです。

 初めて出会った時から違和感を抱いていた。

 そして、それは遂に確信に至る。


 偉大なる魔術師・バレンシアの屋敷での、トールとヒナの大喧嘩。

 逆ギレしたトールが部屋を出ていった後の事である。




「んん~……。これってヤバいよね~……」


 カナミはどうにかしてふたりを仲直りさせようと部屋を出て扉に寄り掛かる。

 多分、その部屋の中ではヒナが後悔を伴い、みっともない姿をしているだろう。


 そんな彼女を見たくなかったのも理由のひとつだ。


 一人っ子のカナミにとっては常に優しく接してくれる彼女は実の姉妹に等しい存在なのだ。

 それは勿論、トールについても言えることであるが……

 どちらかと言えば、トールは兄貴に近い。


 幼少の頃、何度か「お兄ちゃん」と呼んでは「アタシは女だ!」とチョップを喰らった事があった。

 手加減を知らない彼女の一撃に、何度たんこぶを作ったことか。


 だが、それは彼…もとい、彼女の愛情なのだと割りきった。

 実際、トールにしてみれば手加減をしていたようなのだ。

 力加減って難しいね。


 さて、そんな昔の思い出を鑑みているカナミ。


 ふと、酒を片手に廊下を歩く彼を見付けた。




 ……ああ……やっぱりな。


 初めて出会った時から気になっていた。

 彼は身長も割りと高く、でっぷりと肥ってはいないものの其なりに存在感がある。


 なのに……


 歩く音が全くしないのだ。


 『昔とった杵柄』とはよくいったものだ。

 多分、彼自体は普段と変わらず日常的に振る舞っているのだろう。

 だが、昨今『狩人』としての名を知らしめているのには相応しくない。


 よし……思いきって打ち明けてみよう。




「ねぇねぇ~。パッさん、パッさ~ん」


「誰がパッさんか! ッてぇ……なんだ、カナミっちかよ……」


 普段、自身の名を一字略して「パッカー」と皆に呼ばせているクセに、そこまで端折られたのは気に食わないのか。

 『狼人』パッカード=ウルフルドは話し掛けてきた相手を見て浅く溜め息をついた。




「パッさんてさ~……。本当に『狩人』が本職なの~? 何か~他に、本業とかやってない~?」


 唐突に核心を突かれて思わず歩みを止めた『狼人』のパッカード。

 その言葉で微酔いも瞬時に醒めた。


 完全にモードが切り替わった彼の視線がカナミの心臓を掴む。

 ヤバい。突っ込み所を間違えてしまったか。

 彼との距離はかなり離れていたのだが、そんなものは既に皆無に近い。

 殺気が彼女を、周囲を包み込んでいく。




「……何で……そう思った……?」


 普段の軽い口調から暢気さが丸っきり消え失せていた。

 返答次第では、私はこの世からも消されるかもしれない。


 深呼吸をして、カナミは覚悟を決めた。




「だって~……。いつも足音が聞こえないんだもんね~。それって『狩人』っぽく無い気がするんだよね~…」


 少しだけ、上から目線で突っ掛かる。

 舐められてはいけない。女は度胸。愛嬌だ。

 賭け事に嵌まっているダメ男なんぞに引くコタぁ無い。




「……ッかぁ~……。気ぃ付けてはいたンだけどなァ。やっぱり昔の癖はそうそう簡単には消せねェか……」


 ポリポリと頭を掻きながら、彼は自分の不甲斐なさを素直に吐き出した。

 どうやら、自分の過去を見抜いたカナミをどうこうする気はないらしい。


「多分……アタシの予想だけど~。パッさんて『盗賊』だとか『暗殺者』だとか? そんな感じ。じゃあなあい~?」


 見事に的を射られた彼は眼を見開き驚愕を顕にする。


「……何で……そこまで分ッかンだよ……」


 つくづく、たかがゲーム。漫画や小説。

 インターネットなどに熱中していたのは無駄ではなかったようだ。


 カナミはそういう『パターン』をよく知っていたのだ。

 所謂、このキャラクターなら大体こういう設定だろう、と。


 人は深い。だが、かといって。

 1度、2度。3度と。

 出会えば大体はその人物像は思い描ける。

 亡くなったお爺ちゃんもよく言っていた。


 初めて出会った相手でも認めなさい。

 受け入れなさい。

 相手の立場になってよく考えてみなさい。と。


 懇切丁寧な祖父の指導や自身の趣味も相まって。

 カナミは人より優れた洞察力…空気を読む能力を身に付ける事が出来たのだ。


 それが原因で虐められた事も多々あったのだが。

 そこをフォローしてくれたのがヒナであり、トールであり。


 今、その大切なふたりを。

 幼馴染みを。友達を。

 大事な家族を失おうとしている危機に、面しているのだ。


 決してあってはいけない事だと思う。

 他人から言わしてみれば、それは自己満足だと思われるだろう。


 でも、彼女達はかけがえの無い存在なのだ。

 やがて、何れは個々、各々の家庭を築き離れ離れになるであろう。


 でも忘れたくない。

 私達は何時までも繋がっているんだと。

 確固たる決意をその眼に宿し、カナミは彼にパッカードに計画を持ち掛ける。




「で、さ~……パッさん。ジャニアースさんて、最近どう思う~?」


 一際物騒な笑みを浮かべ、カナミは彼に洞察を促す。

 彼が『灼熱』のジャニアースと異常に仲が良いのは知っていたから。

 ましてや、基本的にパッカードが「面白ければそれで良い」という性格をしていたのも分かっていたから。


 前回の宴でもヒナとレインの絡みに笑い死にしていたパッカード。

 そして、今宵の晩食でも彼等の雰囲気を楽しみに酒の肴にしていたのを、カナミは見逃さないでいたのだ。


 ごくり。

 恐ろしいね、女って。




「で、さ~……そんなパッさんに朗報で~す♪」


 人差し指を立て、満面の笑みを差し向けるカナミ。


 改めて、女性の恐ろしさを垣間見たパッカードはたじろぎながら唾を呑む。

 年下であろうが、根本的に男性は女性に敵わないものなのだ。


 冷や汗が滝のように流れるを厭わずに。


「先ずわぁ~……。今、トールが恋に悩んで悩みまくってるのよね?だからぁ~……分かるよね?」


 これにはパッカードも気づいていた。

 マブダチの恋模様。

 昔からレインシェスカが好きだったジャニアースに、異世界から召喚された女子高生トールが惚れてしまっているのではないかという慕情。


 彼もカナミ程では無いものの、空気を読む事には秀でている。

 寧ろ、ダチには幸せになってもらいたいと心底願っている。

 いや…ただ旦に…面白そうな事になりそうなので。

 ずずいッと彼は身を乗り出した。

 だから、ギャンブルでも負けるんですよ?


「まぁ、な? でもよ。カナミっち……。どうする気だよ?」


 掛かった。

 もう彼はカナミという名の蜘蛛の糸に絡め取られているのだ。

 カンダタという逸話のような1本の糸ではない。

 びっしりと張り巡らされた美しくも儚い六角型の粘着質。




「あのね~……今は一旦ジャニアースさんを呼び出して、トールにぶつけて欲しいんだけど~」


 何かクネクネしながら、中々に核心を突かないカナミ。

 いや、はぁはぁしては身悶えている。

 落ちつきなさい。

 いや、気持ちは分かるのだが。


「パッさんてさ~……他にも何か案件を抱えてない?」


 がくがくぶるぶる。


 この小娘……いったい何処までしゃぶり尽くす気なのか。

 というか、そんな伏線は本編に張った覚えはない。

 多分に、彼の表情を読み取り、まだいけるな?とカマをかけたご様子。

 しかも、それがジャストフィット。


 彼、パッカードは定まらぬ目線で挙動不審まっしぐら。

 うわ。俺も漏らしそう。


 げに恐ろしげは女、也けり。


 そして、彼は……女子高生カナミの下僕と相成ったのである。



「何か……やな予感するんだよね~。その時は、ヨ・ロ・シ・クね~?」


ふい~…シリアスは疲れますな(笑)

次回はちょいアクションを混ぜる予定です(ホンマか?

更新予定は…火曜日辺りにしようかな?

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