覆す。そんな不条理、認めない!!その3。
ぬぅ…追い込まれなければならぬ体質なのか?
せっかくタメてたのに…1本イッときます!
ちょいグロですが…途中、途中で悪のりしてるのですんなり読めれば幸いです。
ちなみに、またもや現代世界に戻っていますのでご容赦くださいませ…
「……Stand by……enemy in sight…… just now…」
「……Don't make any noise……calmy……」
「……Now or never……」
「Ready…………fireッ!!」
※以下、訳します※
複数の兵士達は一斉に、各々に標準装備された銃を見定めた目標へ向け発砲した。
一瞬、視界が奪われる程の閃光弾も同時に放たれた。
残弾の心配などしていられない相手なのだろうか。
辺りを埋め尽くしていく薬莢は酷く焦げ臭さを増し、皆を鼓舞させる。
一頻り撃ち終わり、煙が周辺にたちこめてゆく。
指揮官は片手で軍団を制止させた。
彼等は一旦、攻撃の手を止めて、その様子を見やる……
普段は健康の為のランニングや散歩客、または家族団欒で賑わう
穏やかな緑や透き通る池などと一体化して癒しに満たされている広い公園。
だが、今は戦場と化していた。
「全員、待機! ……動きは……無い……か?」
指揮官は片手で軍団を制止させ、煙が晴れるのを待ち沈黙した。銃は構えたままで。
決して、目標へ不用意に近付くような事などはしない。くれぐれも冷静沈着に。
だが、考えるまでもない。あれだけの一斉射撃をその身に受けたのだ。
肉屋でパック詰めにされたミンチ状態にでもなっているだろうと、兵士達は口許を綻ばせている。
「クックックッ……これが貴方達の戦い方ですか……実に! 素晴らしい……クククククッ!!」
煙が晴れる。
それは姿を晒け出し、相手に分かる言語で悦びに浸り、共有して欲しいとばかりに掌を前に差し出した。
散々、銃弾を受けた身体の隅々から血を流しながら、彼は嗤っている。
まるで痛みなど感じていないように。
衝撃で粉々に飛び散ったサングラスなどどうでもいい。
寧ろ、恍惚な表情を浮かべているのは気のせいだろうか。変態さんか?
着衣も燦々たる様子で、流血も放っておき、生々しい剥き出しに成った躯が痛々しく感じる。
だが、それでも余裕を見せる彼は、到底人間成らざる行動を取った。
銃弾で傷付いた裂傷から。抜け落ちたので仕方なく生え替わる鮫の歯のような鋭い牙が御目見えした。
腕から、脚から、胸から、頭から。全身の傷口の至るところから、次々と。
あらゆる食事に適した口を造り出し、その総てが滑稽な笑みを浮かべ…何かを咀嚼している。
美味しいね、美味しいねとお互いに満足を口にして。
もぐもぐ、ドリモグ。むしゃむしゃ、オニムシャ。
次第に傷口から流れていた血や飛び散った肉達はその身体へと集い、やがて、再び元の健全なる個人へと形成されていった。
はー。ぽんぽんらー。
「ば……バケモノめッ!!」
本能が告げる。
こいつは紛うことなき『悪魔』そのものであると。
指揮官はすかさず先陣を切り、自然と指は引き金を弾いた。
続き、部下達もその覇気に促されたのか、尽きるまで銃弾を放った。
だが、それは淡くも切ない希望であり、儚く散るを描いて、逝く。
飛び交う銃弾を避ける事を覚えた悪魔は、ひとり、またひとりと確実に喰らう。
ただ、どうやら服や装備品などはお気に召さないようですね。
丸ごと美味しく頂いた後で綺麗に折り畳んで吐き出している。
妙な所で丁寧な悪魔。
ややもすると……
その戦場には、悪魔と、唯一人の指揮官だけが向かい合っていた。
悪魔は彼に囁く。
憎たらしげな笑みが半月を描く。その頭上には満月が。
相対する指揮官の額に指を柔らかく押し付ける。えへ。
あからさまに優越感に浸っているようである。
「良いですかぁ? 貴方だけは生かしてさしあげましょう。何故ならば、ワタクシ……此れから先を愉しみにしていますので、ネ!」
くねくねと、官能的に躯を揺らす。
恍惚なる表情がより一層深みを極める。眼の焦点が合っていない。
「はぁ、はぁ、はぁ……さぁ、貴方達の次なる手は?如何なさいますか? クククククッ!!」
指揮官はその狂気に充てられたせいなのか下半身をぐっしょりと湿らせていた。
もう、正気を保っていられないようだ。
いっそのこと……
「おっと。いけませんねぇ。というか……。何故に貴方達は『自害』など為さるのか? 全く理解出来ませんねぇ?」
意外にも、悪魔は。
自らの口に銃口を押し込み、その引き金を弾く事で全てを終わらせようとした彼の命を救ったのだ。
奪い取った銃を。
まるで一枚のティシューを薄い二枚に選別するかのように丁寧に分解した。
「大丈夫ですよ? 私が貴方を救いましょう。何度でも。何度でも……クククククッ!!」
膝をつき、涙を流しながら。
やがて、大地に拳を叩きつけ嗚咽を吐き出す。
そんな彼を愛しく見つめながら、悪魔は高らかに嗤っていた。
「……なんてこった……」
パンナコッタ。
現場から遠く離れた高い場所で、一際長い銃身を目標へ向けている。
スナイパーとして派遣された彼は、指揮官を失ったので一部始終を眺めるしか出来なかったのだ。
いや、指揮官、生きてますけど?
悪魔による反撃の最中、何度か狙撃しようとは試みたが、あまりにも早い動きに追いていけずにいたのだ。
ただ、これだけは言える。
精鋭部隊は自分達、僅か数名のスナイパーを残して全滅した、と。
「……今なら、殺れる……」
悪魔は丁度、指揮官を屈伏させた事で悦びに震えているのか動きを止めているのだ。
ごくり、と生唾を飲み自分を落ち着かせた彼は仲間に合図を送り狙撃の態勢を整えた。
そして各々が確実に標的を捉えた。
「おや?」
眼が合った。恐怖が引き金を止めた。
動悸が、鼓動が高まる。心臓がこれ以上は無理だと訴えている。
「いけませんねぇ。殺るなら、殺らねば?」
耳許で、聞こえる筈の無い囁きが脳を震わせた。
自分達と同じ言語なのだが、どことなく耳障りが酷い。
気持ち悪い。エグい。
「な……に……ッ!?」
ライフルから手を離し、咄嗟に翻り短刀を身構えた。汗が滝のように溢れ出す。
先程、スコープにて捉えられていた筈の目標が彼の目の前に居た。
「ワタクシ達にとって殺気を感じ取る事など児戯に等しい。それはたとえ此のように離れた場所でも……ネ?」
「貴様……いったい何なんだ!何が目的だ!」
「お話ししても宜しいのですが。多分……。貴方では御理解頂けないかと。……おや……?」
遥か上空を凝視する。
何かが複数、此方へ飛んできている。黒き塊は破壊の象徴。
ミサイルは全てを殲滅せんと降り注いだ。
「此方A1。A2、A3。作戦は完遂された。直ちに帰還せよ」「了解」
テンサウザンドフィストを聴きながら、心地好く飛行する。
エアロスミスでは物足りないのか。
眼下には、大爆発に呑み込まれて逝く、かつては自然豊かに恵まれた街。
上空を飛び交う複数の航空機が引き返していく。
多分、今では禁止されているのではないかとされるミサイルをその街に落としたのだ。
彼等はただ『上』に従っただけなので全く気にしていない。作戦は絶対、なのだ。
「全く……此方の世界は素晴らしい!! ディ・モールト・ベネ!!」
何処で覚えたのだろう。
彼は『A1』と呼ばれる機体の上に立ち両手を拡げ天を讃えている。
悪魔の癖に。
突然の事態に唖然とするも致し方ない。
というか本来彼等はミサイルを落としに来ただけで詳しく聞かされていない。
況してや相手がこのようなバケモノだという事を。
ハッと我に帰った操縦士は無線を通して他の機体にメッセージを送る。
「こ…此方A1ッ! 頭上……機体の上に何かが……立っている! 至急目視にて確認求む!」
「はぁ? 何を下らない冗談を言っているんだ。そんな物が何処に……いッ!?」
その航空機の上には、腕を組み、吹き荒ぶ強風にて興奮の温度を冷まそうとしている男がひとり、ふんぞり返っていた。
吹き荒ぶ風がよく似合う。
九人の戦鬼でもなければ、サイボーグ戦士でもない。
加速装置!に近い瞬間移動は出来るみたいだが。
「ど……どうすれば良いんだ!?」「構わん! 撃て!」「止せ! まだアレを積んでいるんだ!!」
揃って慌てる操縦士達。手の出しようがないのは明白だ。
先程、街をひとつ壊滅させた爆弾をまだ積んでいる。それ以外にも多彩な兵器を装備しているのも問題である。
そんな彼等を余所に、悪魔は楽しみで愉しみで仕方がないように呟いた。
「クックックックッ……さてさて……次は何処に行きましょうか、ねぇ……?」
こっち、くんな!!
と、誰かが切実に祈りを捧げたが彼の悪魔『悪食のデルメト』は全く気にしない事にした。
あ……アカン!ストックがゼロに近い(爆)
次回は公約通りに今週金曜あたりにします!
( ノ;_ _)ノ




