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ドラゴンNO涙  作者: caem
第3章・くだらない。全ての世界に、終末を。
36/96

覆す。そんな不条理、認めない!!その2。

ふい~……とりあえずポイッちょ。ちょいグロです。

 眩しい光に包まれて、再び異世界大陸ファンタジスタへと召喚された女子高生達。

 その後、訳もなく突如、バレンシアの屋敷から連れさられた一行。

 各々、今やるべき事を考え、それぞれ行動に移していた。


 今、彼女達の目の前には夥しいまでの死傷者が転がっていた。

 酷く惨たらしい光景である。所々、爆ぜた匂いが漂っている。

 その広場を埋め尽くしている各々の風貌から察するに、多分、殆どが魔術師や精霊術師であろう。

 3人はその現場で介護に努めていた。




「いったい……何があったんですか?」


 ヒナは痛々しい傷を負った魔術師のひとり、年配の女性を濡れた布などで介抱しながら問うた。


 ほぼ全身を包帯で包まれたその年配の女性はバレンシアの直弟子の内のひとりで、名はララジアという。

 少し気が安らいだのか彼女はゆっくりと目を覚まし、懸命に、当時起こった惨劇を説明し始める。



「……本当に……突然の事でした……。此の地で、私達は……バレンシア様の命により『虚化』の無効化に……務めておりました。まだまだ先は長い道程でしたが……甲斐あって……僅かながらに、収束して、いったので、すが……」


 時折苦しそうな表情を浮かべるララジア。

 傷の程度がかなり深い。

 只でさえ、年配の女性なので体力的にも余裕がないのは明白だ。



「師匠は……まだ、休んでいてください……。後は私が、説明いたします……」


 彼女の横で、痛々しい傷を見せる少女がゆっくりと起き上がり、ララジアを庇う。

 片腕が丸ごと失われていた。

 名はプラム。

 彼女はララジアの弟子である。


「あれは、突然顕れました……。山羊のような角を持った悪魔と……漆黒の外套に身を包んだ老齢のダークエルフでした……」


 ヒナ達は直ぐに思い出す。あの『暴虐』の傍に居た奴等だと。だがおかしい。

 現実世界でカナミのスマホを介して『山羊のような角を持った悪魔』の動画を観たのだから。



「私達が、休憩当番に入ろうとした時でした……。奴等が、突然襲い掛かってきたのです……」


 記憶を辿りながら。

 意識が朦朧としながらも、ゆっくりとプラムはヒナ達に説明をし始める。


ーーーーーーーーー


 ダークエルフが闇の魔法『底無し沼』を広範囲に渡り行使してきました。

 辺りは正しく暗闇の底無し沼と成り果て、私達は文字通りに脚を絡めとられ身動きが出来なくなりました。


 ですが、私達魔術師は『解除』の魔法を一番始めに覚えるので、そう難しくはないのです。

 『虚化』の無効化に携わっていた者も含めて全員で『解除』に取り掛かったのですが…

 ダークエルフはかなりの使い手で、いくら私達が『解除』しようとしても中々それが出来ずにいました。


 そんな時、山羊のような角を持った悪魔が襲い掛かってきたのです。


 何せ奴は…自在に飛べる翼を持っているので空中からの攻撃を可能とするのです。


 悪魔は嬉しそうに嗤いながら…私達の同胞を、片っ端から喰らい尽くしていきました。

 今ここに姿を残している犠牲者の倍の数、悪魔は我が同胞の悉くを『食事』したのです。血の一滴も残さずに。


 それでも何とか『身体強化』などの魔法で抜け出した私達や他の者達は必死に抵抗し続けました。

 そして、戦況を視てみると意外な事に気付きました。


 中途半端な防御魔法が祟ったのか、半身や身体の一部を残して絶命した者が多数見受けられました。

 その者達には申し訳ありませんが…

 防御魔法は有効ではないかと判断した私達は意識を繋ぎ合わせ『結界』を造り、奴からの攻撃を防ごうとしました。


 しかし、次の瞬間…黒い火炎弾が撃ち込まれてきました。

 余計なことをするな、とばかりにダークエルフが魔法を更に使ってきたのです。


 正直、驚きを隠せませんでした。

 通常、ここまで広範囲に渡る『底無し沼』の魔法は、精神を集中させ続けなければならないのに。


 彼は片手で『底無し沼』を持続させ、もう片方の手で『火炎弾』を行使してみせたのです。

 基本的にそのような『二つの魔法を同時に使う』などと器用な事の出来る魔術師など居りません。


 ともあれ、その爆発に巻き込まれて更に死傷者が増えました。

 私は片腕を失い、師匠も全身に酷い傷を受けて意識を失ってしまい……最早全滅を覚悟しました。


 ですが…ダークエルフの一言、二言で悪魔はその『食事』を中断したのです。


 確か…「計画に必要な糧は貯まっただろう」だとか。

 あとは…「生き残らせるのも重要なのだ。喰らい尽くすな」などとも言っていた気がします。


 それを聞いた悪魔は嬉々として『虚化』の中へと飛び込んでいったのです。

 一際目映い光と共に。


 私達の視力が回復した頃には、ダークエルフと悪魔と…『虚化』その物も姿形を消していました。


ーーーーーーーー


 一頻り、淡々と説明した少女プラムは力尽きたのか、その場でパタリと倒れ込む。

 止血した筈の腕から流血は再開されていた。


 他の被害者の治療に当たっていたカナミが慌てて、此方に走ってやってくる。



「……ん。大丈夫。気を失っただけ。でも~……また傷跡が開いてる~……」


 彼女は、あまり無茶はさせないようにとヒナに告げ、その後に。

 ドワーフの神官ガガザーザに教わった治療系の魔法をプラムに行使した。

 暖かなシャボン玉は少女の身体を優しく包み込んでいく。



「……手伝い、ましょう……」


 『偉大なる魔術師・バレンシア』がカナミの手の甲に己の掌を重ね治療系の呪文を詠唱する。

 彼女は周りの被害者の傷の治療を粗方済ましていたらしい。だが、日頃の業務が祟ったのかあまり芳しくないようだ。



「あ、ありがとうございます~。バレンシアさん。でも、無理しないでくださいね~?」


「今、私が、無理しないでどうするのですか…」


 ふたりの甲斐あってかプラムの傷は塞がり、次第にその表情にも落ち着きを見せた。



「ですが……」


「こんな事は、今まで1度も有りませんでした…………」


 普段、冷静沈着で無表情なバレンシアの声からは珍しく悔しさを感じ取れた。涙こそ流してはいないが。




「ん……? ……何か……変だ……」


 ふと、何か違和感を感じたのだろうか。

 亡くなった者達を丁重に弔う為に遺体を並べていたトールは立ち上がり周囲を伺う。


 数が少ない気がする。確か、もっと沢山の御遺体が横たわっていた筈…

 隅々まで目を凝らしていた彼女はその違和感の正体を見付けた。


 悪魔に身体の大部分を喰われたであろう男性の御遺体。その身体が徐々に消えていく。

 やがて其れは全て無くなった。


 そして更に……

 まだ御存命である被害者達が、その身に降りかかった災いに。

 その影響に怯えて、声を張り上げ恐怖を訴え始めた。




「き、き、消え……消えてしまうッ!! た、たたた、助けてくれぇぇぇッ!!」

「うわぁぁぁ! お、俺もだ! 消える! 消えてしまうぅぅぅッ!!」


「ア、タシ……も……う……だ……め……」

「……かゆ…………うま…………」


 ………最後のは、よく分からない。


 だが皆あの悪魔に手を出された…身体のどこかしらを悪魔に噛じられた者達だった。

 そして、その者達は、やがて、消えた。



「こ……これはいったい……!?」



 ヒナ達3人はその異様な光景を目の当たりにして大きく眼を見開いた。

 まばたきしないとドライアイになりますよ。

 他の者達も激しく動揺している。大きく見開かれた彼女達の瞳に、ではない。




「まさか……とは思いましたが。『悪食』の仕業ですね。これは……」


 何かまた出てきた。

 悪魔の新しい通称が。正直、もう勘弁してほしい。

 で、何ですか。その『悪食』って。


「あの悪魔は……僅かにでも喰らった者を逃がしません。つまり、今も『食事』の真最中なのです」


 ゾッとした話。何処かがキュッてなった。

 やばい。漏れそうだ。



「え……確かアイツ……今あっちの世界に居るんだよねぇ…」


 誰にも聞き取れない程度にぼそっと呟き、互いに眼で合図を送り合う。

 どうすればいいのか迷う女子高生達。俺も。


「あのぅ……多分、ですけど~。……あの悪魔。アタシ達の世界に来てます~……」


 一先ず怪我人の治療を済ませたカナミが勇気をもって切り出した。

 偉いぞ。後で飴玉でもあげやう。


「そうでしたか……まさか『虚化』にそのような効果があったとは…事象を消し去るだけだと思っていましたので」


 其れだけでも充分脅威なのだが。

 バレンシアは直弟子のララジアの治療を続けながらカナミにそう応えた。

 弟子達はあくまでも爆破による負傷なので回復魔法で殆ど治りかけていた。

 ただし、『悪食の悪魔』により負傷した者達は、もう、助からないのだ。




「これは1度……『教授』に会う必要がありそうですね」


 そう言うと彼女は少しだけだが眉を潜めた。気がする。

 また新キャラかよ…………。




あ、アカン……ストックが底をつく(笑)

(T∀T)


方向逆ボタンで、しばしタメます。

ぎゅいいいん。

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